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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-36 蟲の魂

「なんかごめんね。一人でやるなんて見得(みえ)切っといて結局手伝ってもらっちゃって、、、」


木刀片手に佇むターロが言った。


「いえ、天使は腕を失い逃げてきた様子。流石はターロ様です」


メトドが応じる。


「どく、ぜんぶつかった」


ドーラもスッキリとした顔でそんな事を言った。


「やっぱりドーラは、土の精霊から毒を引き取ってるのかな?」


と言いながらターロはドーラの頭を撫でて、


「助かったよ。ドーラは強いね」


「うん。どーら、つおい!」


アウロは魔力の使いすぎで、気絶という名のお昼寝中。


討伐隊の面々は、ターロ達の凄まじい波状攻撃に言葉がない。


もっとも、動けないのはアウロの音楽魔法で底力を引き出され全力以上を出したせいで、筋繊維が千切れて全身筋肉痛になっているためでもある。


状況の説明を受けターロは、


「ね、精神魔法、凄いっしょ?」


と、起きてきたアウロに言う。


「はい。”凶悪”の意味が分かりました」


「でしょ。でもまあ、洞窟内っていう好条件もあったわけで、外じゃ今回ほど効果は出せないから気を付けてね」


「?」


「ここは残響がすごいでしょ? 音楽魔法の魔力が何度も跳ね返って無駄なく皆に届いたんだよ。外じゃもっと散っちゃうから」


そのターロの解説を聞いてアウロは、


「ああ、なるほど。 、、、ちょっとほっとしました」


「ん? どうして?」


「この魔法、怖いから、、、」


「あはは。そうだね。その恐怖心はずっと持っておこう。自分の力に溺れないためにね。でも、」


ターロはアウロの頭に手をやり、


「よくやったね」


と労った。


疲れて青っちょろい顔に、アウロは満面の笑みを浮かべた。



その後ターロは、筋肉痛で動けない討伐隊にヒール(治癒)をかけて回った。


動けるようになった者は、まだ生きている海賊を縛っていく。


殆どの者は生きてはいたが、肋が折れるか顔の何処かの骨が陥没するかして、動けずに呻いていた。


捕縛しようと寄っていくと、


「ひっ、く、来るな!」


と、必死の抵抗をする者もいた。


余程怖かったのだろう。


縛り上げる為の縄は、持ってきた物と海賊の隠れ家にあった物をあわせても到底足りず船に取りにかえると、他の通路をこっそり通って逃げてきた海賊が二十名程いたという。


船に残っていたのは非戦闘員だったので隠れてやり過ごしたが、奴らは小舟何艘かに分かれて逃げたらしい。


それらは、間違いなく外で待ち構えている船団に捕まっただろう。


こうして海賊団は壊滅した。



「後は、あの”蟲”の技術ですね」


ガレオスとオノス、それと討伐後に合流してきたユーキリスはターロの言葉に頷く。


アウロやドーラにはおそらく見せるべきではないものがでてくるだろうから、魔力切れでフラフラなアウロは休憩、ドーラはそれの付き添い、ということにして大型船の医務室で待機させることにした。


幾つもある奥の部屋を探ると、一室、研究室らしい部屋を見つけた。


この世界では、貴重なガラスの容器等がたくさんある。


これまた貴重な紙や羊皮紙の書類も散乱している。


「これは、、、」


目を通していたメトドが唸った。


「思っていたより胸糞悪いな」


ターロが応じる。


蟲の外殻は、ゴーレムの技術の応用。


玉石を通して指示された標的の脊髄へと辿り着くよう、演算処理が組み込まれていた。


中身からの魔力で、短時間ではあるが精密な素早い動きが出来、その技術自体はなかなかの物だ。


が、問題は、”中身”だ。


胎児から抽出した魂を定着させた人工生命体。


自分の躰が欲しい、という渇望が脊髄に取り付いた後、体内に入って神経や脳に浸食するように作られていた。


「赤子の生命への憧れを利用するとは、、、、」


書類を握りつぶすメトド。


珍しく怒りを顕にしている。


「こちらには、内乱の顛末や、未遂の計画が記されています」


ユーキリスが見つけてきた。


「そうか、これは今後のために取ってくとして、残りは処分しよう。こんな技術、少しも残しちゃいけない。ガレオスさん」


ターロがガレオスを促した。


「承知した」


ガレオスは紙束に向けて唱える。



【|ライト ア スモール フレイム《小炎 点火》】



小さな火が紙束に付いた。


「え! ガレオス様、魔法を?」


驚くオノス。


「うむ。増援を待っている二日の間に、ターロ殿達に習ってな、、、」


何故か少し恥ずかしそうに言うガレオス。


「何でですか?! 私が、教えて差し上げましょうといっても、漁に魔法は不要、って仰っていたではありませんか!」


「そ、そうなのだが、、、」


色々あるようだ。


「なんか、向こう楽しそうだな、、、」


ターロは、娘の幼馴染にたじろいでいるガレオスを放っておいて、蟲の入ったガラス容器の前に立った。


蟲たちはまだ起動していないので、足を折りたたんでピクリともしない。


しかし、魂力によって魂の気配を察知できるターロには、はっきりと分かった。


(この中に、何十という赤子の魂が無理やり貼り付けられている。 、、、それを今から、、、俺は、、、、殺す)


どうにも出来ない。


こうするしか無いことを、頭では理解している。


が、感情では納得できない。


(でも、、、これを”仇討ち”だといって、あの三人にやらせるのは、、、卑怯だ)


歯を食いしばって心を決める。


(ごめんよ皆。恨んでくれ。今度生まれ変わる時は幸せになれますように、、、)


せめて苦しまずにと、鋭く、一瞬で終わるようイメージして唱える。



【ハイ・エレクトリック(高電流)・コーレント】



バッシュ!



容器の中の魂達は、




消えた。

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