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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-31 海賊逃脱

「ロンボス! 無事か?」


残りの海賊も粗方捕縛し終えた頃、ロンボスのところへガレオスがやってきた。


「ガレオスさん! 助かりました」


ロンボスはターロ達を紹介してもらい、今回の経緯とエスカトンでの出来事の情報交換をした。


「そんな事があったんですね、、、。では、番頭や護衛の兵士達がこうなったのは、、、?」


ロンボスが、まだ焦げ臭さを放つ遺体に悔しそうな目を向け、尋ねると、


「そうだ。帝国の工作員が作り出した”蟲”に取り憑かれるとこうなる」


苦々しげに答えるガレオス。


「蟲を使った死人兵造りの技術は、この通り確立されてしまいました。俺が天使を止められていればこの被害はありませんでした、、、申し訳ない」


謝罪するターロに、


「いいえ。話を聞く限り、止めるのは無理でしょう。相手は天使です。それに番頭が蟲をつけられたのはもっと前のはず。貴方に責任などありませんよ。それより対策を講じましょう。彼らの無念を晴らさねば」


と、キッとして顔を上げるロンボスを見て、


(さすがは一代で成り上がった大商人。切り替えがはやいな)


ターロは感心した。





海賊の頭は、見慣れた場所で目を覚ました。


縛られてはいるが、猿轡ををかまされたりはしていない。


見回すとやはり縛られた手下達が転がっている。


息はしているので、死んではおらず気を失っているだけのようだ。


「おい、起きろ、、、」


魔法使いが足元にいたので、足で揺すると、


「う、、か、頭、、ここは? 、、、船の中じゃねえですか、、、」


「おう、そうなんだ。俺らの船だ」


捕まれば、直ぐに縛り首が相場の海賊家業。


何故、生かされてしかも自分たちの船に放置されているのか分からない。


「とりあえず縄を(ほど)きやしょう」


皆を起こし、お互い背中合わせになったり柱に擦り付けたり歯で齧ってみたりしてなんとか拘束を解く。


「どうしやすか?」


手下の問いかけに、


「うむ。取り敢えず隠れ家へ戻るか。評議員に蟲つけそこねちまったからな」


と頭が答えた。


「天使のやつにはなんて言い訳しやすか?」


「仕方ねえだろ、あんなわけの分からねえ邪魔が入ったんだ。そもそも天使のアホが、動けなくなる程やられちまったんが悪いんだろうが。奴だってそんなに強くは言ってこねえよ」


「だといいんですがね、、、」


「ったくよー。弱っちい商人の首にあの気持ち悪い”蟲”、仕込むだけの簡単な事でよー、ついでにお宝も頂けるなんて美味しい仕事だと思ったんだけどなー」


「まったくで、、、」


魔術師が追従する。


他の手下も口を挟んだ。


「でも、評議員を操ってミュコスに乗り込んで略奪し放題、なんて話、うますぎると思ったんすよね」


「ケッ。やっぱしスクピディの野郎の考えたことじゃ、こんな程度なんだよ。 愚痴っててもしょうがねえ。外、見てみるか」


梯子を登り頭を少しだけ出して周りを伺う。


誰もいない。


外に出てみる。


やはり、見張りすらいない。


「どうなってやがんだ?」


「頭、向こう」


促されて見ると、大きな建物で、宴会を開いているらしい。


海に面したバルコニーでは、肉や魚を焼いていた。


笑い声がこちらまで届いて来る。


「けっ、俺らを捕まえたつもりになって、油断してやがるぜ。丁度いい、ずらかるぞ!」


「でも頭、奴隷共は連れてかれちまってますぜ」


ガレー船の漕ぎ手は一人も残っていなかった。


「仕方ねえ、全員が乗れる大きさの船探して、頂いちまおう」


丁度隣にお誂え向きの船がある。


帆だけではなく、櫂もそれなりに装備されていて、船足は速そうだ。


ガレー船の陰になっているので、宴会場からは見えない。


奴らが気付いた頃には追いつけない距離まで逃げおおせているだろう。


そう考えた海賊共は隣の小型船に乗り移り、海へと漕ぎ出すのだった。

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