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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-30 商船上で

この船の持ち主は、名をロンボスといった。


五十がらみの小太男。


風采は上がらないが、どこか人懐っこい印象がある。


初対面で嫌悪感を抱くものは先ずいないだろう。


しかし、その外見とは裏腹に彼の商売の手腕は確かなものだった。


一代で今の富を築き、この国の五人の評議員の一人となった実力者だ。


彼の商才の源には、徹底した現場主義があった。


自分で商品を見て、交渉、買い付けをする。


その目利きの確かさ、交渉のうまさが今日の地位を作り上げた。


が、今日に限ってはそれが裏目に出た。


海の国に住むというのに船酔いする体質で滅多な事では船に乗ることのない彼。


その”滅多な事”が起きた。


平原の国”スケロス”で一角獣(ユニコーン)の角が競売にかけられるとの情報を得たのだ。


いつもなら陸路を行くが、今回それを知ったのは陸路では間に合わないタイミングでだった。


ユニコーンの角は滅多に市場に出ることのない超の付く貴重品だ。


様々なマジックアイテムや薬の材料になる。


一般人が持っていてもどうにもならないが、売り捌く伝手(つて)を持っているロンボスなら買値の何十倍にも出来る。


尤も、手に入れたいのは金のためではないが、ともかく、ロンボスにとっては是が非でも競り落としたい品だった。


その為に競売に間に合うよう普段は乗らない船に乗った。


そして海賊に襲われた。


船に取り付かれてからはあっという間だった。


乗り込んできた海賊等に応戦しようと、護衛の戦闘員が前に出る。


すると宝石の嵌った手杖(ワンド)を持ち、魔術使が好む消し炭色のローブを着た男が何かを投げた。


それは飛び跳ねて護衛達に取り付く。


男が手杖をかざすと、護衛達はドサリッと倒れ、少ししてからゆっくりと立ち上がる。


そしてこちらに向かって構えた。


「ど、どうした? 何故こちらに剣を向ける?」


護衛達のおかしな様子にロンボスが問い掛けるも、返事はない。


ない、というより出来ない様だ。


皆一様に目に光がない。


何が起きたのかは分からないが、戦闘員全てが向こうの手に落ちてしまった今、もうどうにもならない事だけは確かだ。


(ツイていない)


海賊に海賊刀(カトラス)を突き付けられながら、ロンボスは心の中でそうボヤいた。


「おう、あんたが大商人ロンボスさまだって事も、この船に大金が積んであるって事も、調べはついてんだぜぇ!」


威勢よく脅しをかける海賊。


(何故私がこの船に乗る事、大金が積んである事が漏れた?)


分からないのは、そこだ。


今回の出航はかなり急なものだった。


こちらの動きを掴んでから襲撃の準備したのでは間に合うまい。


(ハメられた?)


ロンボスが疑念を抱いたところで、頭らしき海賊が喚く。


「出すもんとっとと出しゃがれ!」


それに合わせて、横に立つ魔術師風の男がワンドを掲げた。


すると、さっきまで味方だった者たちが一歩詰め寄ってくる。


「!」


後ろからロンボスの首元に短刀を押し当てる者。


首を少し回して見ると、そこにいたのは長年彼に使えた番頭だった。


今回の競売情報は彼を経由して入ってきたものだ。


「お前が手引きしたのか?」


信じたくはないがそういう事になる。


しかし、彼からはなんの応えもなかった。


質問を理解してさえいないような空虚な目に、ロンボスは寒気を覚えた。


「うははは、スクピディはいけ好かねえ野郎だったが役に立ったな」


頭らしき男が嘲笑うと、


「全くで」


と、ワンドを持った男が応える。


何が起きているのかは分からないが、奴らにハメられたことは間違いなさそうだ。


(仕方ない。皆の命には換えられん)


ロンボスが全てを差し出す覚悟を決めた時、空から何かが降ってきた。


男だ。


魔術師風のローブ、それも樹海の魔術師が好む生成(きな)りの麻のローブを着ている。


ロンボスが知っている樹海の魔術師と違いは、手に持つのが杖ではなく木刀だという事だった。


その男はワンドを持った男の真上から落ちてきて、そのまま踏みつけた。


「ぐえええぇッ!」


魔術師風の男は潰され気絶。


落としたワンドの宝玉を落ちてきた男が木刀で粉砕し、短く詠唱。



【ハイ・エレクトリック(高電流)・コーレント】



彼の手から、バリバリバリッと稲妻が走ったかと思うと、護衛達と番頭の頭に直撃し、肉の焼けた嫌な匂いを残しながら、彼らは倒れた。


「て、テメエ! どっから湧いて出た!」


海賊の頭が斬りかかるが、木刀で防がれ、鳩尾にいいのを貰う。


「がふっ」


「うわっ、くっさ」


(かしら)の体臭に顔を(しか)める男。


倒れる頭を受け止めたりせず、大げさに下がって避けた。


残りの海賊達が動揺する。


そこへ、他の樹海の魔術師と、銛や手鉤を手にした屈強な地元の漁師達が乗り込んできた。


よく見るとガレオスもいる。


一気に形勢逆転だ。


降ってきた男が、


「どうする? 投降するなら法に従って裁いてもらおう。抵抗するなら、、、」


と言い終わらぬうちに、


「ウルセー! どうせ捕まりゃ縛り首だ。殺っちまえ!」


海賊共は抵抗を始めた。


漁師たちは銛ではなく、投網で応戦。


海賊達は次々に絡め取られていく。


その動けなくなった者たちを船員が縛り上げる。


ロンボスは船乗りの綱を結ぶ手並みの鮮やかさをこんなにも心強く思ったことはなかった。


空から降ってきた男も、巧みな体捌きでどんどん海賊を昏倒させていく。


それを船員が縛り上げる。


「上手に縛るもんだね〜」


降ってきた男も、船員の綱の扱いに感心していた。


こんな状況で暢気(のんき)な男だ、とロンボスは、これまた暢気な感想を持つのだった。

早朝、目が覚めてしまい、思いつきで、「家庭学習について:緊急事態宣言延長に就き緊急投稿」を投稿してみました。


宜しければ併せて御一読下さい。

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