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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-29 海賊船

「流石に疲れたな〜」


その日の夜は漁師小屋に戻ると砂を流す為に水シャワーを浴びた。


シャワーで冷えた体を鍋料理をつついて温めすぐに床につく。


漁師たちも明朝早く漁に出るので、もう就寝している。


疲れ切っていたターロ達は泥のように眠った。


翌朝起きると、もう少しで皆が漁から帰ってくるという。


それを一緒に待つ間、漁にはまだ連れて行って貰えない子供や怪我等で漁を休んでいる者を集め読み書きや九九を教えた。


この漁師小屋は、小屋と呼ばれてはいるが百人規模の宴会ができるほど広い。


十人位なら、バルコニーでも授業ができる。


寺子屋を開くには丁度よい。


メトドは勿論、アウロも教える側に回す。


二人とも自分では、疑問にすら思わなかった事を質問され、うろたえている。


勉強ができるようになる早道は人に教えることだ。


理解してもらう為に多角的に対象について考えることになる。


自分が学ぶ側にいる時のように簡単に投げ出すわけにもゆかない。


特にアウロには良い経験になるだろう。


そろそろ皆、帰ってきてもよい頃なのにどうしたのだろう? などと話していると足の速い小舟が一艘だけ帰港してきたのをバルコニーで教えていたターロが見つけた。


酷く慌てている。


「おーい! 海賊だ! 海賊が出たぞ!」


ターロ達はおっとり刀で駆けつけ、まだ桟橋へとつけていないその小舟に向かって叫んだ。


「その舟に乗せてくれるか?!」


「おおー旦那! 乗ってくれ! 今、付ける!」


「いや、いい。 俺たちがそっちに行く!」


ターロはドーラに、


「アウロを任せるよ」


というと、メトドの腰に手を回し、詠唱。



ビッグリーピング(大跳躍)



「おおわぁーあ!」


急な事にメトドが驚きの声を上げ、同じ様に、ドーラに担がれたアウロも、


「うわーあぁッ!」


と叫びながら跳んでくる。


七m程の大跳躍(ジャンプ)


四人とも無事、舟に乗り込んだ。


「ああ、、、びっくりした、、、」


呆然としているアウロ。


「ターロ様、、、」


「ん?」


「瞬間移動でよかったのでは?」


「あ」


ターロはメトドの問いかけに目を逸し、


「か、海賊はどこですか? 急ぎましょう!」


何が起きたのか、と困惑気味の漁師たちを()かした。


「む、向こうだ。湾を出て少しの所で、商船が襲われている」


「あの旗はロンボス様のもんでしたぜ」


「今、網元達が海賊船を牽制しちゃあいますが、取り付かれるのは時間の問題でさ!」


漁師達が口々にいう。


「じゃあ、急ごう! あっちでいいんだね? この舟に名前はある?」


「な、名前ですかい? 赤鯱号です」


何故今、舟の名などを? という漁師達の顔には応えずターロは唱えた。



アイ オーダー (赤鯱号よ、)ユー”レッド(ターロの) オルカ” イン (名に於いて)ザ ネイム (命ずる)オブ ターロ、フライ(かしこへ) イミーディエイ(急ぎ)トリー ゼアー(飛びゆけ)



「文章詠唱!」


メトドが驚きの声をあげるのと同時に舟は浮き上がり、


「皆! 何かに捕まって!」


ターロの声でそれぞれが手近なものに捕まった瞬間、


ビィヒュゥゥゥゥーーーーッ!!!


舟は猛スピードで水面を滑る様に飛び始めた。


「おおおーーーッ!! はええェーーッ!!」


漁師達は子供のようにはしゃぐ。


勿論、本当に子供のアウロとドーラも喜んでいる。


「ターロ様、、、文章詠唱、、、」


一人冷静なメトドがターロに問う。


「うん、温故知新(ライブラリ)にやり方があったから、前から試してみたかったんだよね」


文章詠唱。


言葉通り、文章で魔法を発動させる方法。


単語の詠唱よりも具体的な内容を表せるので、より少ない魔力で高い効果を発揮する。


しかし古代語の文を組み立てられるものがほとんどいないので、めったに使われることはない。


「こ、古代語を、いつの間に学ばれたのですか?」


「え? ああ、古代語ってさ、前世での外国語の一つとほとんどと同じなんだよ。広く学ばれている言語でね、俺も日常会話くらいなら出来るんだ」


「ターロ様のいらした世界は、教育水準が高いのですね」


「まあ、ここより時代が進んでいるだけだよ。水準が高いかどうかは、別の話だね」


前世の教育に色々思う所があるターロは含みのあるいい方をするが、勿論メトドには伝わらない。


そんな事を話している間に、海賊船が見えてきた。


「旦那方、あれでさあ!」


「もう、乗り込まれているっぽいな」


商船より一回り小さなガレー船から、鈎のついた鎖や梯子が幾本も渡されている。


ガレー船には銛が数本突き刺さっているが、漁師達の船では小さすぎて、どうすることも出来なかったようだ。


ターロは、


「うっし、ちょっくら行ってくらあ。皆はここから援護して」


というと、皆が止める間もなく詠唱。



レビテーション(空中浮揚)



ふわふわと浮き始め、かなりの高さになってから、商船の上空に移動。


下を伺っていたと思うと、魔法を切ったのか、急降下した。

教え合うことは、学習方法として有効ですが、身内に限っては逆効果です。

それは過度な期待と、身内ならではの遠慮のなさに起因します。

だから、昔の名のある学者は自分の子供の教育は知り合いの中で最も信のおける人に頼みました。

家庭学習の難しさは、そういう事にもあるようです。

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