2-27 課題克服:メトド
「分かった?」
「ん。やってみる」
「そうだ、上手いぞ!」
天使対策に目処のついたターロは、ドーラにより効率のよい闘い方ができるようにと、正拳突きや足捌き等の型のようなものを教えてみた。
思ったより呑み込みが早く教えたそばから身につけていくドーラ。
基礎的な動きは一通りできるようになったので組手でもしようかと思ったが、ドーラの殴る・蹴るにあたるとターロが死んでしまうので、相手を転がせたら勝ち、というルールにする。
ドーラの腕力は凄まじいものがあるが、動きは荒削りなので、ターロにでもさばける。
何が面白いのか分からないが、ドーラは転がされてもキャッキャと喜んで何度も向かって来る。
やはり前世で飼っていた犬を思い出した。
陽も落ち始めたのでメトドとアウロを呼ぶ。
戻ってきた二人の顔を見るかぎり、うまくいかなかったようだ。
「メトドさん。どうだった?」
「はい。何度やっても、木に火が燃え移ってしまいます」
「アウロは?」
「僕も、、、駄目でした。空気が弾けるって、想像できません、、、」
ここで、ターロはヒントを出すことにした。
流木を拾い、
「じゃあ、先ずメトドさん。もう一回やるから見ていてね」
と言って実演。
やはり流木は燃えることなく、二つに焼き切れる。
「何が違うと思う?」
少し考えて、
「、、、火の色?」
「そう。それがカギなんだよ」
「色、、、温度か!」
「そうだね」
メトドは気付いたようだ。
「で、アウロ」
といって、持ってきた筒状の物を取り出す。
「こんなこともあろうかと、これを持ってきたんだ」
「水鉄砲?」
「そう」
漁師の子供から借りてきたものだ。
大きな注射器のような形の、最も簡単な形の水鉄砲。
「これを押してごらん」
といって、水をいれた状態で、噴射口を塞いで押させる。
「全然動きません」
「そうだね」
中の水を捨てて、今度は空気の入った状態の物を押させる。
ぐいっと付き棒が入っていき、手を離すと押し戻る。
「どう?」
「水は縮まらないけれど、空気は縮まる?」
「そう! 空気は縮まるんだ。ギューと魔法で縮めて縮めて、これ以上無理、ってくらい縮めて、標的に当たった瞬間その縮めている力がなくなると、、、」
といって、左右の掌をぎゅーっと真ん中で合わせてから、
「ぼん!」
ばっと両手を広げる。
「って、弾けるんだよ。どう? 想像できる?」
「は、ハイ! なんかわかった気がします!」
「でも、もう遅いからそろそろ戻ろう」
「いえ、後一回だけやらせてください」
「先生! 僕ももう少しだけ!」
という二人に、
「じゃあ、暗くなったらおわりにしようか?」
ということにした。
メトドは、指先に火を灯しても直ぐに木には当てずにじっとその火を見つめている。
するとだんだん火が細くなり、青く変化していく。
そうなってから流木に火をあてると、
「!」
見事焼ききれた。
「ターロ様! 出来ました!」
珍しくメトドが感情を表に出して喜んでいる。
「メトドさん、、、すげーな。俺、酸素の事とか説明しなかったのにできちゃったじゃん」
「サンソ?」
「そう。空気の中にある、火が燃えるのに不可欠なものなんだ。 それを沢山供給すれば、火の温度は上がるんだよ。でも、自力で温度を上げられたね。流石だ」
褒められてはにかむ四十男。
「じゃあ、その火で、火矢を飛ばしてごらんよ」
言われて、メトドは再びドーラの作った棘に向かって詠唱。
【ファイヤーダーツ】
バヒュン バヒュン バヒュン・・・
複数の火矢が、棘に向かって飛ぶ。
今度の火矢は青く、音も大きい。
そして、棘を、
貫いた。
「おおー!」
火矢のあたった棘は全て、穴が開くか、折れるかしている。
ターロは驚くが、もっと驚いているのは火矢を飛ばした本人のメトドだった。
「さっきは棘の表面を焦げ付かせた程度だったのに、、、貫いた」
「そうだね。これなら十分実戦に使えるんじゃない? 魔力の消費量もそんなに多くないでしょ?」
「はい、、、確かに。いえ、むしろより少ない魔力で放てるようになりました」
「ああ、練習たくさんしてコツ掴んだんだね。疲れて効率の良いやり方を体で覚えたんだよ、きっと」
ターロにそう言われ、そんなこともあるのか、と感心するメトド。
ターロが二人に課題を与え試行錯誤させたのは、何かに夢中になってぎりぎりまで魔力を消費させる為だ。
追い込む様な特訓は自分の限界も知れるし、魔力量も増える。
ライン王子だった時に何度もやった事だ。
ターロは思う。
(王子様なのに体育会系なのな)




