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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-26 大賢者の手記3

「後は、俺だな」


ターロは独りごちた。


浜に座って、天使との闘いを顧みる。


何がいけなかったのか。


あの翼を使った体捌(たいさばき)に翻弄されたことが、先ずいけなかった。


しかし、一度見た(・・)


次は通じない。


魂力”聞一(一を聞いて)(以って)知十(十を知る)”が疼いている。


精霊樹の木刀からの斬撃飛ばしも握りつぶされた。


素手でそんな事が出来るのだろうか?


答えは”否”だ。


何かしらの肉体強化が施されているはず。


その謎を解けば、致命傷を与えられるかもしれない。


そこでターロは、持ってきた”大賢者の手記”を開き天使に関する記述を探す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


天使、というが、本物の”天の使い”ではない。


あれら(性別がないようなので、彼・彼女と呼ぶのは適切ではない)は神話の中で、太古の昔天孫降臨した際に神に付き従った種族の末裔ということになっていて、神が帰還したあとの地上の管理を任されたとあれらは帝国の人族に信じ込ませている。


だが実態は人族より古くから存在する種族なだけだ。


やつらにはどういうわけか性別がない。


もしかすると両性具有だったり繁殖期に何かしらの肉体的変化があるのかもしれないけれど、解剖した死体から性別を特定できるような特徴は見つからなかった。


そのせいなのか、子孫を残す力に乏しい、もしくは環境の変化に適応しきれず、数が激減したのだろう。


神の加護があればこのようなことは起きまい。


帝国領からほとんど出て来ないので詳しいことは謎だが、こちらに来た時はろくな事をしていない。


奴らは精霊の力を削ぎ人との絆を断ち、精霊を支配下に置く実験を行ったようだ。


それがおおよそ、三百年前。


実験場は、今のオステオン。


実験は失敗し、火の精霊の暴走、そして砂漠化。


現地に赴むくも、精霊魔法が得意ではない僕では、どうにもできんかった。


誰か精霊魔法使いを育てて何とかするしかない。


天使共が精霊魔法を使えないのは、この実験のせいなのだろうか。


あれらが使うのは、魔力を物理的な物に変換するものばかり。


ただ、魔力量が多く操作速度も人間とは比べ物にならないくらい速い。


羽によるトリッキーな動きも厄介。


羽も何かしらの魔力制御器官なのだろう。


さもなくば、あの大きさの羽であの大きさの本体を支えて飛べるはずがない。


魔力の使い方は大きく分けて2つ。


・頭上に光輪状に収束させての攻撃。


・腕に魔力を纏わせての、射出・硬化等の臨機応変な攻防。


接触機会が少ないので、推測も含め分かったことはこんなもんだが、なにか企んでいる気がする。


今のうちに人族の結束を固めて対抗手段を持たなくてはいけない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


大賢者の手記は、”温故知新(ライブラリ)”に収められている資料のようにまとまってはいないし、根拠に乏しく推察の域を出ないものも多いが、やはり参考になる。


(光輪と腕、、、書かれている通りだったな)


あの鉈のような形状の禍々しい腕を思い出し寒気を催す。


あんなふうに一瞥(いちべつ)して分かるほどの変化ではないが、魔力を込めて防御力を底上げした状態の手で斬撃波を握りつぶしたのだろう。


要はターロが精霊樹の木刀でやっていることを自分の腕で出来るということらしい。


(やっぱり魔力での強化か。そりゃそうだ。ドラゴンみたいに硬い外皮があるわけでもないのに素手であんな事出来たら、生き物じゃない。でも厄介だな、、、)


両腕であれができるということは、精霊樹の木刀の二刀流と変わらないということだ。


それに加えて翼のを使った人には真似できない立体的な動きに、光輪による攻撃。


あれが、もし二人以上いたとしたら、もう打つ手なしだ。


(むう〜、どうすっか?)


色々考えて、あれこれ試すがうまくいかない。


少しして、一人で遊ぶのに飽きたドーラがやってきた。


「ぬししゃま。あそぼう」


「ん? 遊んでる暇無いんだけどな〜」


しかし、いつまでも放っておくのも可哀想だし、どのみち行き詰まっているので一緒に遊ぶことにした。


「何する?」


「いし、なげて」


「石?」


言われて、大きめの石を拾うと、ビュッと投げる。


するとドーラは、そこから助走なしで跳んで石に追いつき、拳で破砕。


「まじかよ、、、でたらめな身体能力だな、、、」


(ん?)


ターロは気付いた。


「ドーラ! ちょっとこっち来て」


「はーい」


戻ってきたドーラの手を見る。


かすり傷一つ無い。


しかし触った感じ、ぷにぷにしていて、どう考えても、石より硬いとは思えない。


ドーラは、どうしたの? という顔で小首をかしげている。


(これって、天使と同じ事をやってるんだよな?)


「ドーラ。石を拳骨で粉々にしたでしょ? どうやったの?」


「え? ぐーってして、えい! ってやった」


「いや、そうじゃなくって、、、。グーのまんまで殴ったら、痛いでしょ? 痛くないようになにかした?」


「うん。まりょくあつめた」


ターロも同じ様に拳に魔力を集中させるが、ただ、魔力が溜まるだけで、固くなったりはしない。


(何かコツがあるんかな? それとも種族的な特性とか?)


その後も、ドーラに石を投げてやりながら、考えた。


ドーラは、キャッキャと石を粉砕して楽しんでいる。


(手記にあったな。魔力を物理的なものに換えるって。でもさっきのメトドさんの火の矢も、ドーラの針地獄も、物理的なものへの変換だよな。手を固くする、、、固くしたら動かなくなるし、、、握りつぶすなんて動作してたんだから、違うよな〜? 細胞? 細胞レヴェルで、硬化させるんかな?)


結局、自分に天使やドーラのようなことは今は出来ない、という結論に達する。


それでも構わない。


同じ事をするのが目的ではなく、硬化した腕にどう攻撃を通すのかが問題なのだ。


「ドーラ。今から飛ばすものを、手を固くしながら握りつぶして。その後も手が硬いか確認して」

「はーい」


ターロが斬撃波を飛ばす。


ドーラは天使のようにそれを右手で握りつぶすが、


「あれ? おてて、やわらかくなった」


と言って、右手を左手でペチペチ叩いている


「あ、また、かたくできた」


(十秒ってとこか、、、天使なら五秒かな?)


ドーラが再び手を硬化出来るようになる時間を計る。


(ぎりぎり、実戦で使えるかな、、、)


いまのなに〜? とじゃれ付いてくるドーラに高い高いをしてやりながらホッと息を吐くターロ。


なんとか、打開策を見つけたようだった。

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