1-4 森の守部
(、、、? ん?)
大田は何かの気配を感じて目を覚ました。
筏は歩く速さよりもゆっくりと川を進んでいる。
両岸は鬱蒼とした木々。
(ああ、寝てしまったんか。よく襲われなかったな、、、。なんだか分からんが複数の気配? 殺気、、、じゃなく、好奇心? とりあえず敵意はなさそうだから話しかけてみるか)
寝ている間に融合が完了したらしく、あの二日酔いの様な気持ち悪さはない。
この世界の言語も使いこなせるのが分かる。
「誰か居ますかー? 上流の鉱山で奴隷として働かされていましたが、逃げてきましたー。助けてくださーい」
なんだか間抜けな第一声だが、伝わったようだ。
気配から困惑が伝わってきた。
そして困惑が警戒に変わる。
(? 警戒させるようなこと言ったかな?)
大田も困惑する。
水に流され続けると気配の主と離れてしまうかもしれないので、足で水を蹴って着岸した。
もう一度接触を試みる。
「そこに居ますよねー? 見ての通り、弱りきっていまーす。何も出来ませんよー。言葉が通じているなら、出てきてくれませんかー」
気配がする辺から、何やら笛の様な音が響いた。
複雑な節回しがついているのでこれでコミュニケーションをとっているのかもしれない。
少しして枝が揺れ、何人かの男が森から出てきた。
軽装だが胸当てと手甲をはめ、弓を構えた臨戦態勢だ。
弓の狙いをこちらにつけたまま、その中の一人が尋ねてきた。
「何故我らの気配が分かる? 我らは隠者の森の守部。魔獣を狩る者だ。獣等にもこうもあっさりと悟られたことはない。 何かの魔法か?」
(そういえば何でだろう、、、? 分からん)
嘘をついても始まらないので大田はこう言ってみた。
「ええーと、、、魔法とかではなくて、本当になんとなく分かっただけです。昔っから勘だけはいいな、ってよく言われるんですけれど、、、」
えへっ、と愛想を振りまいてみるが、全く通用しない。
(やばい、いらん事して余計、気不味くなった、、、)
大田には昔から、真面目な場面で少し巫山戯てしまう変わった癖がある。
日本人らしからぬこの習癖の所為で今まで散々痛い目にあってきたのだが本人には全く治す気は無い。
自ら守部と名告る者たちは、不信感丸出しの顔でこちらを見ている。
その中から、弓ではなく杖を持った男が出てきて、何やらゴニョゴニョやった後、最初に話しかけてきたリーダーらしき男に、告げた。
「少なくともこの男に敵意や悪意はない。ただ、このような者は見たことがない、一人なのに一人ではない。人なのに人ではない。連れて帰って詳しく調べるがいいだろう」
それを聞いた、リーダー格の男は頷くと、大田に向かって言った。
「筏を降りて付いてこい。少しでも変な真似をすれば、射殺すからな」
(ええー、物騒、、、)
こうして大田は両手を上げたまま、森の守部に連れられ、樹海の奥へと分け入っていくことになった。
「あのぉ〜、裸足なんで足、痛いんですけど、、、」