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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-21 銛

「ん、、、いい感じだな」


翌朝起きて体の調子を確かめるターロ。


昨日の戦闘では軽くない怪我を負ったが、自身のとメトドのヒール(治癒)の重ねがけをして酒も呑まずにぐっすり寝たので、動くのに支障のない程度には回復している。


朝食が済んだ頃に商会館から呼び出しがあった。


なんでも船の件で会わせたい人がいるとのこと。


すぐさま出向くと、待っていたユーキリスが、


「お待ちしておりました」


直々に出迎えた。


「もう大丈夫なのですか?」


とターロは訊くが見た所、顔色はよい。


表面上かもしれないが、一晩で立ち直ったようだ。


「はい、いつまでもウジウジしていたら妻子の無念は晴らせませんから。私自身に戦う力はありませんが、皆様に協力することでやつらに一矢報いたいのです」


それを聞いてターロは頷き、


「有難うございます。我々も、できるだけのことを致します」


ユーキリスと、固く握手する。


さり気なく、無詠唱でヒール(治癒)をかけるのを忘れない。


「それでですね、皆さんに会っていただきたい人がいまして。朝一番でこの町の漁師達と話た所、連れてこい、と言うんです。 、、、すみませんが、今からご足労願えませんか?」


「勿論、構いませんよ」


ということで、港へ移動。


その途中、ユーキリスに話を聞く。


今まで海賊討伐の為に何回か船を出したが、全て返り討ちにあっている。


船も命も、少なくない数を失った。


それに懲りているので、腕試しの合格が協力への必要条件なのだという。


「荒くれ者の集まりです。一種の治外法権地域でもあるので気を付けてください」


「ええ〜。先生、大丈夫なんでしょうか、、、?」


アウロは既に気怖じしている。


「大丈夫でしょ。魚、ご馳走してもらえるかな〜? 今日の朝は漁に出たのかしら?」


日本酒がありゃ最高なんだけれど、そりゃ〜無理ってもんだよね、等と、勝手なことを考えているターロ。


ドーラはターロに手を繋いでもらい、お散歩気分でニコニコしているし、メトドはいつも通りフードを目深に被って表情は伺いしれない。


それらの様子を見て、アウロはため息をついた。


港には漁師小屋と呼ぶには大きすぎる建物があった。


扉は開いているが逆光な事もあり、中は見えない。


「ターロ様」


「うん、分かってる」


メトドにの呼びかけに頷き、前に出るターロ。


ビュッ!


何かが、中から急に投げつけられた。


大きな銛だ。


ターロは体を躱しつつ右手で下からそれを掴み、勢いを殺さぬよう体を回しながら詠唱してその銛を飛んできた方向に投げ返す。



ピンポイントスロー(精密投擲)



飛んできた勢いにターロの力も加わりかなりの速度で飛んでゆく。


ガッツ!!


中に入ると、屈強な男の股座(またぐら)を通って、後ろの壁に銛が突き刺さっていた。


漁師達は、あまりの出来事に動けずにいる。


びよよよよ〜ん、と振動する銛の音だけが静かに響いていた。


「手荒い出迎えですね。漁師流、といったところですか?」


誰も何も言わないので、ターロはちょっと皮肉を込めて、言ってみた。


「す、済まん。試すような真似をして、、、」


「いいんですよ。今までのことはユーキリスさんから伺っています。で、我々は合格ですか?」


「お、おおう」


ここで漁師達が我に返って、どよめき出した。


「すげーな、兄ちゃん! 俺の船にのって、でっけー魚突かねーか?!」


「何、抜け駆けしてんだよ! 俺の船に乗れよ!」


銛の腕が認められたらしい。


「うるせー! テメーら! このお方たちは、海賊退治にいらしたんだ! 先ずは詫びを兼ねて歓迎の宴だろうが!」


「「「「「「 オオーゥッ!!! 」」」」」」


瀬踏はあっという間に終わり、宴会が始まってしまった。


「な、心配なぞ、するだけ損だろ?」


と、メトドはアウロにいう。


「、、あはは、分かっているつもりでしたが、、、そうですね、、、先生ですからね、、、」


引き攣った笑いを浮かべるしか無いアウロだった。

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