2-20 ドーラ
「ユーキリスさん、今日はもう休んだほうがいい」
憔悴しきったユーキリスを立ち上がらせ、休ませるように職員に頼むターロ。
事を治めたのはターロ達だと分かっている職員も素直に応じた。
勿論、妻子を失ったばかりのユーキリスに働けと言う者などいない。
ターロ達は明日また来る、と言い残して商会館を出た。
町では商会館の出来事が噂になっていたが、被害が職員一人と警邏部員二名だけだったこともあり意外と落ち着いていた。
商会職員が宿をとってくれたのでそこに落ち着き、麻袋を着ているドーラの服をなんとかしようと服屋を物色。
ドーラによく似合う動きやすそうな服を店員に見繕ってもらった。
燐銅ウラン石のような緑の髪と目。
その目は少し釣り上がり気味で見る人によってはキツイという印象を受けるかもしれない。
しかし、それが気にならないくらい顔は整っている。
人として生まれていれば、誰もが「将来は美人さんね」と評価するだろう。
店員もドーラを着せ替え人形のようにして楽しんでいた。
やっと服や靴を揃えたあと、
「腹減ったな。ドーラ、何食べたい?」
「あまいの」
「甘いもの?」
「ちょっとかたいの。なめるとやわらかいの」
「ああ、ドライドフルーツか、、、ごめん。もう無いんだ」
ガーンという効果音が聞こえてきそうな顔をするドーラ。
「ははは、大丈夫だよ。きっと他にも甘いものあるから」
そういうわけで食堂で夕食にした。
その食堂には柑橘の砂糖漬がありドーラはそれで満足したらしい。
宿に戻るとそれぞれが椅子やベットの上に座る。
ドーラは当然のようにターロの膝の上によじ登ってきた。
ターロが顔を覗き込むと、何? という顔をしたので好きにさせておく。
「では皆さん。第一回、”ドーラ、人化の謎を探れ”を開催します」
といって拍手を促すターロ。
アウロとドーラが楽しそうにパチパチとやっているので、仕方無しにメトドも付き合う。
「色々質問してもドーラの人語がちょっとあれなんで、埒が明かないでしょ? ねえドーラ、このおじさんにドーラを見てもらってもいい?」
「みるの?」
「そう。なんでドーラが人化出来たか知りたいんだよ」
「いーよー」
満腹なせいか、ターロの膝の上で眠そうにしているドーラの頭を撫でながらターロはメトドに頼む。
「メトドさん。お願いできる?」
「やってみます」
メトドが、ごにょごにょと始めた。
ややあって、
「ターロ様。人間ではないからでしょうか、、、魂力に似た力を感じるのですが魂力とは違う何かを感じます」
「違う何か?」
「強いて言うなら、”加護”でしょうか」
(ああ、あのときの、、、)
別れ際のターロの祈りは、”ドラさん”に届いていた。
それが、不思議な力を発現させたのだろう。
ターロに凭凭れかかって目をつぶりながら、ドーラは言った。
「どーらねえ、ひとりになったの。ひとりはさみしいの。でも、もりをでると、みんなこわがるの。だからぬししゃまと、おんなじになるの」
「そ、っそっか、、、置いていってごめんな。人に変身できるなんて思わなかったんだよ」
人化の能力を得るほど自分と一緒にいたいと思ってくれたことへの嬉しさと、それほど寂しい思いをさせてしまったことへの罪悪感が綯い交ぜになって込み上げてくる。
ターロは膝の上のドーラをぎゅっと抱きしめた。
「ふうう〜ん」
満足そうにするドーラ。
「あと、あまいのほしかったの。もり、さがしてもなかったの」
「ふふふ」
みんなが優しい顔で失笑した。
「ドーラ、服はどうしたの?」
麻袋のワンピースの入手先を尋ねると、
「もり、でてすぐ、うまといっしょのひと、くれた」
「通りかかった親切な農民にでも、貰ったのでしょう。」
とメトドが推察した。
「そうかもね。メトドさん、ドーラの得た力は”人化”だけ?」
「いえ、強さもかなり上がっています。その反動というか、体を作り直すのに脱皮をしたのかもしれません」
「なるほど、どんだけ強くなっているんだろうね。あの頭突は凄かったもんな」
ドーラが天使にブチかました頭突を思い出す。
「島へ行くなら戦力強化が必要だし、ドーラの能力も把握しておかないとね」
膝の上のドーラは、満腹とターロの温もりに抗えず、もう寝息を立てていた。




