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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-19 妻からの贈物

「ありがとうございました。皆さんがいらっしゃらなければ町に大きな被害が出ていました」


ユーキリス支部長は、ターロ達に深々と頭を下げた。


商会の職員達は、商会館の復旧と、町の人達への説明などで忙しく働きまわっている。


「、、、妻や息子も、、、感謝していると思います。本当なら頭を潰してしまわなくてはいけないところを、綺麗なままで、、、。ちゃんと弔ってやれます。本当にありがとうございました」


言葉では気丈に礼を述べるユーキリス。


ただ、憔悴しきっている事は、誰の目にも明らかだ。


「いえ、なんといったらいいか、、、もっと早く来ていれば、、、」


といって、ターロはユーキリスの二の腕に手を添えた。


気づかれぬよう、無詠唱でヒール(治癒)の魔法をかける。


少し顔色が良くなったユーキリスに、ターロが尋ねた。


「こんな時に申し訳ありませんが、逃げた天使のことも気になります。詳しい話をいいでしょうか?」


といって、カサヴェテスの書簡と王室発行手形を見せる。


「我々、内々に国内を視察して回っていまして」


「! 王室ゆかりの方だったのですね、、、道理でお強い」


カサヴェテスの書簡に目を通した後、今までの経緯を説明した。


「そうですか、急にやってきて、自宅を占拠されたんじゃ、どうにもなりませんね」


メトドがユーキリスを慰める。


今回の騒動の原因であるスクピディは、頭部の穴という穴全てから血を流して絶命していた。


あの宝玉から神経のようなものが脳や脊髄の至るところへ接続されていたらしく、それが無理やり引きちぎられた結果だ。


彼の遺体は墓地ではなくゴミ焼却所へと運ばれた。


「どこから来たとか、あの天使の行き先とか、なにか手がかりになるようなことは思い当たりませんか?」


ターロの質問に顔を歪めながらユーキリスは答える。


「すみません。ほぼ監禁状態だったので、、、」


「ですよね、、、あのスクピディという男は、二年前の内乱を裏から操っていたと仄めかしていましたが、、、どこかにそういった工作をする為の拠点があるんじゃないかと、、、」


「それなら、”島”だと思います」


ユーキリスの即答にターロとメトドはやっぱりそうか、と頷き合う。


ユーキリスは言葉を続けた。


「三年程前から、海賊が拠点を置いていることは分かっているのですが、尻尾が掴めない。討伐隊も返り討ちにされています。何故それほどの戦力があるのか皆不思議がっていましたが、天使が向こう側に居たのですね。実在するとは、、、。話の中だけの存在だと思っていました。未だに実感がわきません」


あの瞳孔まで白い異形を思い出して怖気(おぞけ)を震うユーキリス。


それに頷いてターロが、


「天使と帝国は何か関係があるらしのです。しかしここまで出てきて工作活動をしているとは、、、。島かぁ、、、船が必要だね」


そうメトドに言う。


「行くのですか?」


「うん。あれは放っておくと面倒になりそうでしょ? まあ、こっちも戦力強化してからだけれど」


「そうですね」


その二人のやり取りに、


「船なら心当たりがあります」


とユーキリス。


「ありがとうございます。では手配をお願いします。 ところでユーキリスさん。あなたはどうして蟲を植え付けられなかったのでしょう?」


ターロは話題を変えて気になっていたことを尋ねた。


ユーキリスは自分の首筋をなでながら、


「私にも分かりません。やつは、私の首に蟲を乗せましたが、直ぐに離れてしまって、、、奴も不思議がっていました」


「メトドさん。分かる?」


「、、、いえ」


ずっと黙っていたドーラが、ユーキリスに近づいて、くんかくんか、と臭いをかいでいる。


「ドーラ、どうかした?」


「せいれいじゅのにおい」


「え?」


ドーラには、ユーキリスから精霊樹の匂いが感じられるようだ。


「精霊樹!」


何かを思い出したようなユーキリス。


「思い当たることが?」


「ちょっとお待ちください」


といって奥へ引っ込み、小さな缶を持ってきた。


「このお茶ですが、、、激務で体調を崩したとき、妻が休憩時に飲むようにと買ってきてくれたもので、、、少し高価な物らしくて、私しか飲んでいなかったのです」


「拝見します」


缶を受け取って、皆で匂いを嗅ぐ。


「せいれいじゅ!」


ドーラが自信満々で断言した。


「なる程。精霊樹のお茶のおかげで、蟲が付かなかったのですね」


メトドが言う。


「ああ、、、ゾーイ、、、、妻の、、、妻に、、、救われていたのか、、、」


返された茶缶を抱きしめて(うずくま)りユーキリスは、 泣いた。

スクピディは、ギリシャ語でゴミという意味です。

人を”ゴミ”と、蔑んでいた彼は、ごみ焼却炉で焼かれました。


人を下げる事で自分が上がったと、勘違いする人は、決して自分の上を見ようとはしません。


上を見て、そうなれるように努力すれば、惨めな思いをすることはないのに、人を見下して、そうする事の愚かさを指摘されると、逆上する人。


人間は弱いので、気を抜くとそうなってしまいます。

自分がそんな行動をとっていないか、常に自省する事を忘れない様にと、彼を登場させました。


スクピディよ、安らかに眠れ。

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