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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-16 天使襲来

「おおーっ、天使様!」


壁を破壊し侵入してきた者には、翼が生えていた。


天使。


白い肌に、白い衣をまとっている。


髪もそして、気味の悪いことに瞳孔までもが白い。


その天使が、スクピディに、


「それ以上喋るな」


その目には蔑みが見て取れる。


(何だこいつ? このゲス野郎の仲間じゃないのか?)


ターロは訝しがるが、味方だとしてもまあそういう目で見るよな、と、思い直した。


「天使様、お助けください!」


と縋るスクピディに天使は、


「この役不立(やくたたず)め」


そう言うや、スクピディの額の宝玉に手を伸ばし、



もぎ取った。


ブチブチブチブチブチ!


何かが引き千切れるような嫌な音がする。


「ぎゃああああああっ!!」


絶叫の後、白目を剥いて倒れるスクピディ。


「おまえ、、、そいつの仲間じゃないのか?」


ターロが訊くと、


「仲間? この様な下郎、仲間なわけがなかろう」


鷹揚に答える天使。


「人族は下劣ではあるが、その下劣さ故に我々には思いつかぬことを考える。この男もそうだ。此奴(こやつ)の研究成果は、全てこの”石”に記録されている。此奴は、選ばれた証だと思いこんでいたようだがな」


「そんな事、教えていいのかよ?」


「良いも悪いも、己等はこれから死ぬのだ。何の問題もあるまい?」


と言って、広げた掌から、衝撃波を放った。


マジカルシールド(魔法の盾)


ターロはとっさに唱え、ユーキリスも守る。


まさか防がれるとは思っていなかった天使が、


「ほー。ただの人族ではないな?」


意外そうにターロを繁繁(しげいげ)と眺めた。


「だったら見逃してくれるのかい?」


ターロは軽口を叩くが、背には冷や汗が流れている。


魂力”野生の力”の声を聞くまでもない。


こいつはヤバイ(・・・)奴だ。


ターロの言葉に、


巫山戯(ふざけ)たことを」


と応え、更に強い衝撃波を放つ天使。


マジカルシールド(魔法の盾)


ターロは咄嗟に内側に二重がけをする。


先程かけた物は破られたが、二つ目が耐えた。


「面白いことをするな」


「お前らの目的はなんだ?」


「答えるとでも?」


「殺すんだから構わないんじゃなかったのか?」


「ふははは。本当に面白いな」


そこへメトドとアウロが入ってきた。


「ターロ様、ご無事で、、、天使!」


「支部長さんを連れて逃げるんだ!」


といって、ターロは天使に斬りかかる。


三人を巻き込まないよう距離を取りたい。


幸い天使は後ろへと避けた。


そこは天使が侵入時に壁を吹き飛ばした穴だ。


そのまま外へと出る。


天使がターロへと問い掛ける。


「よいのか?」


「何が?」


「我が姿、見し者、全て殺すぞ」


「させるかよ!」


(頼むぜ、精霊樹の木(”地獄丸”)刀)


自分のネーミングセンスの酷さに未だ気付いていないターロ。


木刀へ魔力を乗せ、打ち出した。


今は空き地での試し切りの様に、時間を掛けて魔力をのせられない。


なので威力はあの時ほどではない。


それでも生き物(・・・)を切ること位は簡単な筈だ。


、、、筈だった。


バ厶ッ


天使は飛んできた魔力波を右手で握り潰した。


「面白い技だ。だが威力が足りぬ」


「チッ、これならどうだ!」


重くした木刀で斬りかかる。


袈裟斬り・掬い上げ・横払い、どの角度で斬りつけても捉えられない。


(何だよ、、、この動き)


翼を器用に使った天使の動きは、ターロが見たことのない立体的なもので、全く予測がつかなかった。


「その程度か? 終わりならこちらからゆくぞ?」


と言う天使の頭上に、光輪が現れた。


(まさかあれが、、、)


その光輪がターロめがけて飛んでくる。


まさに光速。


躱せなかった。


腕が切り落とされ、、、る、筈だった。


「危ねえじゃねーか、、、」


光輪を見た瞬間、嫌な予感に襲われたターロは、全身に膜のような防御壁を張り巡らせていた。


温故知新(ライブラリ)で覚えた、大賢者の独自魔法(オリジナル)



チェーンメイル(鎖帷子)



瞠目する天使。


「これを凌ぐか、、、実に面白い。共に来ぬか?」


「そして、使い潰すのか?」


「ふん、さっきの下郎の事を言っておるのか? あれとは違うぞ。お主は側に置くと面白そうだ」


愛玩動物(ペット)扱いかよ」


「可笑しいか? お主らも犬や猫を飼うではないか」


「、、、てめえ、本気で言ってるのかよ? 美女のお誘いなら喜んで付いていったがな」


「何を言っている。我らに性別などない」


「、、、な、なんか、、、、、可哀想だな」


変な空気になってしまった。

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