2-12 風の精霊は見た
風の精霊視点です
建物の窓をくぐって遊んでいた風の精霊は、面白そうな物を見つけた。
人族の子が魔力を伸ばして、自分たちを呼んでいる。
応えてみよう。
そう思って近づいていくとその人族の子は、奥の部屋の様子を知らせてほしい、という。
おかしな事を頼む子だ。
近いのだから自分で行ってみればいいのに。
でも、この人族の魔力は善いものだから、シンクロするのも、面白そうだ。
風の精霊は頼みを聞き入れて、奥の部屋まで飛んでいく。
ドアの隙間から入ってみると、ムワッとしていて、臭い。
逃げ出しても良かったが、オイラはセキニンカンの強い精霊だから、と、人族の生活をのぞき見て最近覚えた言葉を使ってみたかったので少し我慢することにした。
部屋の中の音を、さっき魔力を少し分けてもらったあの子に届ける為に、シンクロを発動する。
あの子の魔力は本当に善いものだった。
また分けてほしいものだ。
と、考えながら、部屋の臭さを我慢する。
部屋の中には、むさ苦しい人族のオスばかりが二十人ほど。
一人を除いて嫌な感じがする。
この感じは、、、、”死”の臭いだ。
皆、首の後ろからその臭いが漂ってくる。
いや、一人全身にその悪臭が染み付いているオスがいる。
ただ一人の、嫌な臭いのしないオスが、全身臭い奴にすがって、叫んでいる。
「妻と、子を返してくれると言ったではないか!」
臭い奴が言う。
「まあ、待ってろ。話が先だ。今入ってきた二人で全員そろったな?」
と言って、他のオスたちを見回す。
「お前ら、ご苦労だったな。おかげで国内の状況がよく分かったぞ」
オスの中の一人が言う。
「首の後ろの物を早く取ってくれ。街を回って、治安を乱せば、これを取って報酬もくれるという約束だろう!」
他のオスも言う。
「そうだ! だいたいこれは何なんだ?!」
威張ったオスは、傲慢を張り付けたような笑みを浮べ、
「いいだろう、教えてやる。私はそれを通してお前らの知ったことを知る事が出来る。ここに、、、」
といって、額の宝玉のような物を指差し、
「お前らの見た事、聞いた事、が送られてくる」
「そ、そんな事が、、、」
オス共の動揺に、自慢げに、
「出来るのかって? 出来るのだよ! 私は選ばれたのだ! そして、この宝玉を賜った! 国内の情報を集めつつ、治安も乱す! 選ばれしこの私、スクピディ様だからこそ、お前らの様な使い道のないクズ共をこうして有効に使えるのだ!」
「テ、テメエ! 何、訳分かんねー事ほざいてんだよ! いいから金よこせ!」
「ふん、クズめ。口のきき方も知らんのか。まあ、もうすぐ口も、、、」
と言って、額に人差し指をあて、魔力を込めて、
「きけなくなるんだがな! ふひはははっ!」
すると、オスたち全員が、声も無くその場に崩れ落ちた。
臭くないオスは倒れたオスの一人に近寄り、脈を取る。
「し、死んでる、、、。 何をした!?」
「フヒャハハハハ。仕上げだよ。このクズ共を、私の駒に格上げしてやったのだ。小さな脳ミソで考えるより、私の命令で動いた方が何倍も有益だろう?」
「駒って、、死んでるじゃないか!」
「ああ、そうさ。死んでなきゃぁ困るんだよ」
「な、何を言っているんだ!? 私の妻と子も殺したのか!」
「煩い! そんなに会いたければ、会わせてやる。おい、入れ」
他の部屋から、人族のメスと、子が入ってきた。
だが、おかしい。
動いているのに命を感じられない。
「ああ! 無事だっ、、、、、、! どうしたんだ? 何をされた!」
「まあ、見ていろ」
と言って全身臭いオスが、
「立て!」
と、命じると、先ほど倒れたオスたちがノロノロと立ち上がる。
「! 、、、どうなっているんだ! 死んだはずでは?」
「知らんのか? 死人兵士さ。こいつ等で街を襲い、殺した奴等を更にゾンビにする。簡単に私の軍隊の出来上がりだ」
「き、貴様! 私の妻子もゾンビにしたのか!!」
「フャ〜ハッハ! 感謝しろ。栄えある我がスクピディゾンビ部隊の一員だ。お前も直ぐに仲間になるのだ!」
「ゆ、許さん!」
ここまで見ていた風の精霊は、ゾンビだらけの部屋で思った。
駄目だ。
臭い。
人族の子、ゴメンよ。
この位でいいだろ?
そうしてこんな声を聞きながら、部屋を出た。
「貴様! 許さん!」
「ふゃ〜ひゃひゃ! 先ずはコイツから殺ってしまえぇ!」




