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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-11 エスカトン商会館

「お、動き出したみたい」


三人でブランチをとっていると、ターロが急に顔を上げた。


「あのならず者達ですね?」


「うん。どうやら、東に進むようだよ」


「という事は、半島の先端の街を目指すのでしょう。その先の島に渡るのかもしれません」


先程商会で更に情報収集した所、半島の先の島々は凶暴な魔獣が多数住み着いている事もあり人は住んでいないはずなのだが、どうやら何年か前から海賊がねぐらにしているらしい、と噂だった。


海賊被害には頭を悩ませていて、この国でも討伐隊を結成したことがあるが、神出鬼没の彼らにしてやられるだけでアジトも見つからず、全く成果はあがらなかったそうだ。


「確かに島は怪しいけれど、島に直接渡るかな? 方法はあるんだろうか?」


「まあ、付いていけば分かります」


「それもそうか」


三人は食事を済ませ、宿を発ってならず者共の後を追った。


前の日よりは速くなったものの、依然進みは遅いので、尾行()けるのに苦労はない。


そして夕刻、門が閉まる前に街に着いた。


半島先端の街、”エスカトン”。


商船と漁船を多数抱えた、ブラキーオーン屈指の大都市だ。


ならず者共はそのまま宿をとるのかと思いきや、商会に入っていった。


暫く外で様子を見ていたが出てくる気配はない。


ターロのマーキング(認識印設置)は、彼らがまだ中にいると告げている。


「おかしいな? 路銀調達とかにしては、時間がかかりすぎでしょ」


「まさか、ターロ様の予想のように、商会に裏切り者が、、、」


「だとしたら、入っていったら危ない? でもいかなきゃ分からんしな〜」


ちらっとアウロを見たターロは、


「先ず宿とって、アウロはそこで待つ?」


「僕も行きます!」


鼻笛を握りしめ、主張するアウロ。


いざとなったら精霊を呼び出せる。


自分も役に立てる。


というつもりのようだ。


その顔を見てターロは決断する。


「メトドさん。いいかな?」


「え?、、、連れて行くんですか? 、、、危険すぎます。、、、まあ、ターロ様がいらっしゃれば、心配ないですかね?」


ここまでの旅で、ターロの規格外ぶりを見ているメトドは、結局承諾した。


「じゃあ、行きますか」


中に入ると、ターロが小声で唱えた。


テレパシー(遠隔精神反応)


《メトドさん。アウロ。聞こえる?》


「「 !?!? 」」


急に頭の中でターロの声が響いて驚く二人。


《顔に出さないで! 今、魔法で俺たちだけ会話できるようにしたよ。頭の中で考えるだけでいいから》


《、、、ターロ様、こういう魔法を使う時は、先に言ってください》


《そ~だよ先生。びっくりするじゃないですか!》


呆れるメトドに、怒るアウロ。


《ご、ごめん。だって今思いついたんだもん、、、それより、》


《《あ、流した》》


テレパシーで会話中なので心の声はだだ漏れであるが、そのツッコミもターロは無視して話を続けた。


《メトドさん。職員を見て、裏切り者が分かる?》


《いえ、、、分からない、というより、裏切っている者はいなそうです、魔法などで隠蔽されていなければ、ですが》


《そっか。あの三人も見当たらないしな、、、奥の部屋に反応があるんだけど》


張り紙を読むふりをしつつ、三人はテレパシーで会話を進める。


そこへ二人連れの男が入ってきた。


《ターロ様。あの二人にも、ならず者共に感じた違和感を感じます》


メトドが気づかれないように観察しながら言う。


その二人も、奥の部屋へと通されて入っていった。


《なんだか怪しいな。どうする?》


《先生》


アウロが答えた。


《何だい?》


《僕が風の精霊にお願いして、奥の部屋がどうなっているか聞いてみるのはどうですか?》


《おお! そりゃいい考えだ》


褒められて嬉しそうにするアウロ。


《じゃあ、やってみます》


魂力を得たアウロは、簡単なお願いなら笛や詠唱無しで出来る、と感じている。


その感覚は間違っていなかった。


窓から入ってくる風の中に精霊を探し魔力の見えざる手を伸ばしていくと、精霊が応えるように、その魔力に絡みついてくる。


言葉にならない言葉で、精霊に奥の部屋の様子を教えてくれるよう頼むと、(ちょっと、まってて)というような感覚が流れ込んできた。


少ししてからアウロは急に耳鳴りを感じ、それが治まると奥の部屋の音が聞こえてきた。


風の精霊と感覚を共にしている様だ。


《先生、、、メトド様、、奥での会話が聞こえてきました、、、商会主と沢山の男がいます、、、なんだか、一人すごく威張ったのがいる、、、》


急にアウロの顔が青くなる。


《大変だ、こいつ、男たちに街を襲わせるつもりだ!》


《どういう事?》


《今の二人で最後だって、、、え? 商会主さん、人質とられて、、、あっ!! 、、、風の精霊、行っちゃった、、、。奥の部屋、臭くてもう嫌だって、、、》


「いや、それだけわかれば十分だ。行くよ!」


テレパシーをきって、受付の中へ入っていくターロ。


「なんですか! あなた方は!」


「奥へ通してもらおう」


メトドが威圧するも、職員は自分の義務を果たそうとする。


「困ります。今日は奥へは支部長の許可証を持った者しか通せないことになっているんです!」


「ヤバイ! メトドさん! 奥で変な気配がする!」


魂力”野生の力”がターロに強い警告を発している。


「押し通る!」


ターロは、荷物の中から精霊樹の木刀を引き抜くと、職員の脇をスルッと抜けて、奥の部屋へと走った。

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