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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-10 大賢者の手記2

その晩、ターロは酔って気持ちよく床についたものの、真夜中に催してきて目を覚ましてしまった。


トイレに行ったその後は妙に寝付けない。


仕方がないので、イッヒーの手記を出して開いてみた。



ライト(明かり)



液晶画面をイメージして、手帳の頁そのものを薄く光らせてみる。


これなら、他の二人も起きまい。


手繰(たぐ)っていくとちょうどよい内容を見つけた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


魔法について


この世界では、魔法を使う際に呪文を詠唱をする。

その詠唱で使う言語は古代語だというのだが、恐ろしいほど英語に似ている。

同じと言ってもいい。

それが幸いして僕には、難しい魔法書も読めるし新しい魔法も苦労なく創れる。


古代語が、英語に酷似している事は、この世界が、地球と平行世界の様な関係にある証拠の一つにはなるが、何故なのかの説明は今の所、出来ない。


何故古代語を詠唱に用いるのであろう?


試しに日常語で詠唱してみたが、やはり出来ない。

では、他の言語はどうであろう?

スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語等、知っている言語で手当たり次第試したが、どれでもすんなり使えた。

魔法陣には漢文も使える。


日常言語だけ発動しない。


思うに詠唱は、魔法発動の単なる誘因(トリガー)でしかないのではなかろうか?

例えば、口喧嘩だとかで「爆発しちゃえ」って言葉がいちいち本当になってたら世の中めちゃくちゃだ。

だから、魂に制限が掛かっていて、日常言語では魔力を操れず、非日常言語にその制限を解除するような役目があるのかもしれない。


その制限を解除する、という事を意識して、魔法を使ってみると、日常言語でも、非日常言語と同じ様に魔法の発動ができた。

ただ恐ろしく集中力が必要で実用的ではない。

やはり制限がかかっているみたいだ。


無詠唱はそれほどの集中はいらない。

慣れれば詠唱するのと同じ様に使える。

ただ、詠唱がある方がとっさにイメージを固めやすいし、発音した音にもトリガー解除の力があるようで、より少ない魔力で魔法が発動する。

だから普段は無詠唱である意味がない。

隠密活動だとか、使う魔法を相手に悟らせたくないだとか、音が出せない状況では役に立つ。


言語でなく、イメージその物でも、魔法は発動する。

僕に音楽の才能があれば、使えるのだろうが、残念ながら、歌も下手だし、楽器も弾けない。

誰か、魔力量の多い音楽家を捕まえて実験してみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その実験、成功しましたよ、イッヒーさん。


と、アウロの寝顔を見ながら、ターロは心の中でつぶやいた。

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