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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-8 想像力と意志の力

「先ず魔法そのものについて一回整理しようか」


音楽魔法を創る前に魔法とは何かを考えることにしたターロ。


「いい? 筋力が肉体の力なら、魔力は精神の力と言っていいよね? じゃあ、人間の精神の力で一番強いものはなんだと思う?」


二人にそう問うと、メトドが、


「意志の力でしょうか?」


「そうね。それも強いね。でも、それより強いものがある」


「、、、なんですか?」


「想像力だよ」


「想像力?」


「そう。例えば、、、」


といって、ターロは地面に十センチ位の幅の線を二メートル程描く。


「これ、渡れる?」


ターロに訊かれて、


「渡れるに決まっています」


渡ってみせるアウロ。


メトドも当然だろう、という顔をしている。


「じゃあ、これは?」


といって、ターロは唱えた。


ヴィジョン(幻影)


気がつくと、アウロは、崖の上に立っていた。


足元は直径二メートルもない。


崖の下は、覗いても底が見えないくらい深い。


そこから、十センチ幅の板が突き出ていて、二メートル先に広い地面、そして、メトドが立っていた。


吹き付けて来る風が、恐怖心を増す。


〈メトドさんは魂力を使わないで、ただ見ていてくださいよ。さあ、アウロ。その板を渡ってメトドさんのところまで行けるかい?〉


ターロの声が響くが、姿は見えない。


「せ、先生、、、無理です。、、、足がすくんで動けません、、、」


今にも泣き出しそうなアウロ。


立っていられなくて屈み込む。


メトドもどうしたものか、困惑している。


〈何故だい? その板はさっき地面に俺が描いた物と、幅も長さも同じだよ。さっきは渡れただろ?〉


「でも、今は、崖の上です」


〈だから?〉


「落ちたら死にます!」


アウロが、叫ぶと、景色が元に戻った。


「「 、、、 」」


絶句する二人に、


「どうだった?」


と尋ねるターロ。


「何だったんですか? 今のは、、、」


アウロはまだ呆然としている。


「今のは、俺の魔法で作った幻覚。本当の景色じゃなかったんだ。でも、アウロ。君には現実のように感じられただろ?」


頷くアウロ。


「本物だと感じて、落ちたら死ぬ、っていう恐怖で、地面に描いてある時には渡れたものが、渡れなくなった」

アウロ、メトド、共に無言のまま頷く。


「なんでだと思う?」


少しの間の後に、アウロが言う。


「あ、、、想像力、、、」


「その通り。落ちたら死ぬ、って想像しただけで動けなくなった。渡ろう、っていう意志の力より、強い力だっただろ?」


「、、、はい」


「勿論、鍛えられた意志の力は想像力を越えることもあるよ。でも、一般的にはそんなに強い意志の力を持った人は滅多にいない」


二人が理解しているかを確認してから先を続ける。


「精神の力で、想像力が一番強い、ってことは、分かってもらえたかな?」


「「はい」」


「じゃ、それが、何で魔法に関係するかなんだけれど、しっかりとした(イメージ)を持ったほうが魔法の効果が高まる事は、もう二人共経験的に知っているでしょ?」


頷く二人。


「だから、何をやりたいかしっかり理解して、想像できれば、新しい魔法が作れるんだ。それだけだよ」


「それだけって、、、」


そんな簡単なわけないだろうと反論したいがターロに言われるとそう言うものなのかもしれない、という気になってきたメトド。


「そうだな〜。もう一つ例を見せようか。っていうか、アウロはもう出来てたな」


と言われて、え?という顔のアウロ。


「アウロ。最初にライトを使ったときのこと覚えている? フラッシュかよ、ってくらいの光量があったね」


「あれには驚きました」


立ち会ったメトドが言う。


「あのとき、何を想像して、ライトを唱えたの?」


「た、太陽?」


「メトドさんはライトを使うとき何を想像している?」


「、、、蝋燭ですかね、、、」


「でしょ? 普通、ライトっていう魔法は、暗い所で使う。そのイメージに引っ張られて、蝋燭だとか、ランタン、松明なんかを想像して使うのが一般的だ。でも、アウロは今まで成功したことがなかったから、そう言う”常識”に囚われることがなかったんだよ」


「なるほど、、、」


「だから、メトドさん。アウロみたいに、太陽を想像してライトを唱えてみてよ」


「はい」


メトドは杖を少し掲げて唱える。


ライト(明かり)


「うわ」


思わずアウロは目を覆う。


その光量は、あの時のアウロの様にフラッシュに匹敵する物だった。


「ね? 想像が影響するでしょ? 込める魔力量だけが光量を強くするわけじゃない」


「た、確かに、、、」


「まあ、これだけの光量が必用な時はフラッシュ使えばいいだけの話だし、暗闇で何か見たいとき、こんなに眩しかったら、眩しすぎて逆になにも見えなくなっちゃうから意味ないんだけれどさ」


「そっか、、、」


アウロも、ライトが眩しすぎる弊害に気付く。


「今みたいに、何を想像するか、って事は大切なんだけどさ、もう一つ大切なのは、さっきも言った”しっかりした(イメージ)”ってやつ。しっかりした、って、言い換えると”正確な”って事」


「正確さ、、、?」


「そう、意外とこれが難しい。人間って、見ているようで見ていないんだ」


「「 ? 」」


明らかに分からない、という顔の二人に、笑いながら、


「何言ってるか分かってないってことは、二人もその認識が無いってことでしょ? じゃあさ、牛って知ってる?」


「もちろんです」


馬鹿にするなとばかりに答えるアウロ。


メトドも同様であることを示すように頷く。


「じゃあ、絵を描いてごらんよ」


「絵ですか?」


「そう。細かい特徴までしっかり描ける?」


描き始めて気付く二人。


「あ、、、ここって、、、どうなってたっけ?」

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