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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第二章 海の国 ”ブラキーオーン”
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2-7 音楽魔法

「ここなら誰も来なそうだね?」


と確認するターロに、


「はい」


とメトドが応える。


メトドの目がそう言うのだから大丈夫だろう。


「魔法と笛だけどさ、同時にやるかい?」


「え?」


アウロは、ターロの意味不明な言葉にはいつまで経っても慣れない、と思った。


「だからさ、音楽も、魔法も同時にさ。音楽魔法!」


「な、なんですか、それ?」


メトドも聞いたことがないので、黙っている。


「そのまんまだよ。ドラゴンが咆哮に魔法を乗せるみたいに、演奏に魔力をのせるんだよ」


「あ、、、先生が精霊を見えるようにしたみたいに?」


「あれは、ただ魔力を込めただけだから、何の効果もなかったけれど、まあ、同じ事かな」


「ど、どんな事が出来るんですか?」


「何だって出来るよ。魔法を使うとき、古代語で詠唱するでしょ? あの詠唱の代わりに音楽を使うようなものさ。イメージ出来る事で、魔力が足りていれば何でも出来るよ」


「なんでも、、、」


「とはいえ、限度や向き不向きがあるかな。例えば、ドラゴンブレスみたいな、火炎だとかは、人間の魔力量じゃ無理だろうね。音楽魔法には、そういうのじゃなくて精神に働きかける物とかが向いていると思うよ」


「精神に?」


「そう。味方を鼓舞するとか、相手を怯ませるとか」


「なんか、、、地味ですね」


がっかりするアウロ。


そのがっかり顔にターロはニヤリとして、


「分かってないな〜アウロ君。今のは結構凶悪な魔法だよ」


「え、そうなんですか?」


「考えてみなよ。味方はイケイケの怖いものなしで、どんどん突っ込んでいく。敵はびびっちゃって、武器もまともに持てない。こんなの戦いになる?」


理解したメトドが顔を青くした。


「一方的な虐殺、、、」


「そう、メトドさんのいう通り。そんなの戦いって言えない。虐殺だよ。まあ、大規模な戦争で使えるほど大きな音を出せる楽器も、戦場の広範囲に届かせる事が出来る魔力量もないから、そこまで凶悪にはならないにしても、取り扱い注意! ていう魔法だよ」


いきなり、大変な話になったので、アウロもメトドも不安げにしている。


そんな事は気にせずターロは話を続けた。


「回復もいいかもね」


「回復ですか?」


「うん。魔法での回復は自然治癒を加速させるだけだから、瞬間的に傷が塞がったりはしないけれど、流れる血の量が減れば、生存率はぐっと上がるし、疲労が回復するだけでも、戦闘ではかなり有利でしょ? まあ、効果が目に見えて分かる位の回復魔法を音楽に乗せるのは、相当な魔力が量必用だから今は難しいかな?」


「そんなに魔力を使うんですか?」


「うん。直接手をかざしてやる従来の方法を、音の届く範囲、自分が中心の半球体でやるんだから凄い量になっちゃうよね、、、あんまり使えないか、、、」


と、渋い顔になって、考えるターロ。


「ああ! 召喚魔法なら、いいんじゃない? 笛を使って遠くまで音と魔力を届かせれば、応えてくれる精霊だって増えるだろうし。何より、詠唱(言葉)で頼むより、音楽で頼んだほうが、精霊は耳を傾けてくれるんじゃないかなー?」


それを聞いたアウロは顔を輝かせて、


「せ、先生! その魔法、絶対身につけたいです! お願いします!」


ターロはその勢いに、気圧されながらも、


「お、おう。じゃあ、一緒に考えよう」


「え?」


「え?」


固まるアウロとターロ。


「、、、ターロ様」


メトドが助け舟をだす。


「魔法とは、ターロ様のようにポンポン思いつけるものではないのです。偉大な先人が考えた物を血のにじむような努力で身につけるものなのです」


「え? そうなの?」


「はい。そうなのです」


メトドに断言されて、呆然とするターロ。


「、、、そうなんだ、、、誰でも出来るんだと思ってた。 だから、カサヴェテスさん変な顔していたのか、、、」


(これで、少しは自分の規格外具合を実感して頂けただろうか)


と、メトドは思った。


「でも、ないものは考えるしかないじゃん。やるよ、アウロ」


(だ、、、駄目だったか、、、)


あまりターロには響いていなかった。

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