2·1-1 それぞれの今後
「あー、疲れたな〜。流石に連日はキツイ」
ドサッ
寝台に倒れ込むターロ。
ピョ〜ン
そのお腹にドーラが飛び乗る。
「ふんッ!」
ターロはもう慣れたもので、腹筋に力を入れて衝撃に耐えた。
そのまま二人とも熟睡。
ケパレー帰還後の復興中の街に、
帝国に占領された同盟国を奪還、
増えた広大な領土、
新たな大賢者の誕生、
これらのことが一度に報される。
城下では街をあげてのお祝いが始まった。
奪還戦での戦死者がいなかったのは彼らの活躍のおかげだ、と、その内容が参戦者から広まると、人離れした恐ろしい戦闘力に最初は畏怖されていたターロ達。
しかしターロの人柄が知れると、あっという間に打ち解ける。
ターロは呼ばれればどこへでもホイホイと行ってしまうので、当初行動を共にしていた者たちはドーラ以外、逸れてしまった。
ターロの呑みっぷりと鼻笛、それに合わせたドーラの踊りはどこへ行っても大好評。
評判が評判を呼び、二人は最終的には街の人に完全に旅芸人扱いをされて、お捻りだけで一財産出来てしまったところで、城からメトド達が探しに来て強制連行されていった。
いやー、今度の大賢者様は芸達者だなー。
酒の神様に愛されているなー。
いろいろな所で呑めや歌えの大騒ぎをして回った結果、市井のターロへの評判はそんな所で落ち着いた。
民衆の好評は得たが、リトスは置いていかれたので剥れている。
しかし、昼寝から起きたターロが、お土産だと、街の人から貰ったお菓子だのなんだのを献上することであっという間に機嫌がなおり、エリュー達の、それでよいのか、という顔には気付かずにターロの淹れてくれたお茶で幸せそうにお菓子を頬張っていた。
オルトロスは騒ぎの中、何度か王妃と街に顔を出し大いに雰囲気を盛り上げるのに一役買ったが、それ以外では旧ホーフエーべネ領とヴロミコス領を誰がどの様に統治するのかの処理で大忙しだった。
色々と横槍を入れてくる貴族院を適当にあしらいながら、ターロが嘗て言った通り領地を持たない優秀な若い貴族がオルトロスとメタメレイア・メトドの面接を経て、二十人ばかりが選出され、拝領して、その地へと向かっていった。
ターロは人選に関わらない。
政治的権力とは無縁でいると決めたからだ。
メトドはその魂力故にメタメレイアの補佐と言う形で参加させられ、新領主の人選に大いに役立った。
今後学院で自由に研究活動をするために、王国に恩を売っておくのはよいかもね、と言うターロの言葉にメトドは従った。
そんな事を言って自分を働かせておきながら、五日も帰ってこないターロを、メトドは一瞬で見つけ連れ帰って来たというわけだ。
他の面々は、
アウロは学院に編入することになったが、まだ手続きが終わっていないし、月始めからの編入なので暇。
ニパスはアウロのペットということにして登録も済ませた。
ドーラはターロの養女で、侍女という扱いになりどこへ行くにも付いていけるようになった。
テュシアーは王妃にお目通りした際、色々と質問され、連れて行かれてしまった。
「とって食われたりはしないでしょ」
とターロは言うがメトドは不安そうにしていた。
オルトロスは、カルテリコスを気に入ったらしく、エウローと何やら相談していた。
軍に編入されるらしいが、カルテリコスも、陛下の許で研鑽を積みたい、と、どの様な配属先でも了承すると言っている。
そしてアプセウデースだ。
今、休憩中のメタメレイアが部屋に来ている。
お茶を淹れながら、
「落ち着いたら一番最初にやろうと思っていたんですけれど、鍛冶場の見学って出来ますか?」
とターロはメタメレイアに訊く。
「鍛冶?」
「はい。アプセウデースの研修先を探していまして」
自分のことをちゃんと覚えていて最初に考えてくれていることに感激するアプセウデース。
「タ、ターロ様、、、呑んだくれて忘れちまったんでねえかと不安に思っていただよ」
「ははは、酷いな。そんなわけ無いっしょ」
自分もこの数日間、城下の居酒屋という居酒屋の酒樽を空にして回ったくせにそんな事を言うアプセウデース。
当然、彼は酒臭くはあってもピンピンしている。
因みに、カルテリコスは二日目で既に寝床から起き上がれなくなっていた。
「鍛冶場なら、王立の鍛造研究所があります。連邦国内では随一の水準を誇ります。そちらでよろしければいつでもご案内いたしますよ」
とメタメレイア。
新領地の件も一段落付いていたのでメタメレイアは直ぐに鍛造研究所に見学を申し込み、ターロ達と行くことになった。
「こういう事でのけものにすると後で何を言われるか分かりませんから」
とメタメレイアはオルトロスにも声をかけた。
カルテリコスはエウローと軍を見学。
アウロはクローロに連れられ甘味処ヘ。
ドーラはターロに付いて行く気だったが甘味の誘惑に負けてアウロ達と行動を共にしている。
テュシアーは帰ってこない。
鍛造研究所は魔法学院のすぐ近くにあった。
王立の研究所関係は近くに集めれれていて、学園都市のようになっているらしい。
研究というが、そこはやはり鍛冶場。
鉄の匂いと火の熱気で溢れかえっていた。
「ようこそ。儂がここの責任者、パンテレスじゃ」
出迎えたのはアプセウデースの親戚? と思えるほど同じ体型に立派な髭の男。
やはりターロの第一印象は、
(ド、ドワーフ?)