7-19 全て終わったのですね、、、
「まさかスザクさんを呼ぶなんて、、、」
オステオンへ向かって帰っていくスザクを見ながらアウロが呟く。
同じように放心して飛び去るスザクを見ていた者たちも、同意してうなずいた。
ここにいる面々の誰一人、ターロがこのように解決するなどとは予想もしていなかった。
「なんだか、最初のスザク様、砂漠で見たときより大きかったような、、、」
テュシアーがメトドにそう尋ねると、
「恐らくターロ様がスザクさんを召喚する際、魔力を分け与えゾンビドラゴンを滅するに足る大きさにしたのだろう。だから全てを燃やし尽くした後は元の大きさに戻ったのだと思う」
「そんな事ができるのですね、、、」
「あれはターロ様が作り出した霊獣だからな、、、」
とのメトドの推察を聞いて皆、ニパスを見る。
『、、、ナニ?』
皆の注目となにか言いたげな無言に困惑するニパス。
(この仔犬も、どんな風になるのか知れたものではない、、、)
それが皆の心の声だった。
上空から全てを見ていたプロクスとキュアーノも降りてきた。
スザクの姿が見えなくなって、
「全て終わったのですね、、、」
エーデルのその言葉で皆は夢から覚めたような心地になった。
そう、終わったのだ。
やっと湧いてきた実感が先の事を考えさせた。
「これで闇竜が卵を産んで天使を更に増やす心配はなくなりましたが、既に生まれた天使はまだ相当残っています。人族にとっての脅威は去っていません。、、、エーデル。貴方はこれからどうするのですか?」
メトドの問に、
「私は、、、二年間住んだ隠れ家に戻ろうかと思います」
『なら私も一緒に行ってもいいかしら?』
というプロクス。
「え? ケパレーに来ないのですか?」
ずっと背に乗って仲良くなったキュアーノが驚いたように言った。
当然、これからも一緒に過ごすつもりでいたようだ。
『ありがとう。でも人化したとしても翼があっては目立ちすぎます。何かあったら、いつでも呼んでくだされば必ず協力いたしますわ。ドーラは、、、いかないわよね?』
「ん、ぬししゃまと、いっしょ」
分かりきった事を訊いたわ、と微笑むプロクス。
「甘いもの持って遊びに行くよ」
というアウロに、楽しみにしているわ、とニッコリ笑って、
『では皆さん。また逢う日まで。ターロにもよろしく』
と言い残して、プロクスとエーデルは飛んでいってしまった。
「古代竜には人族の社会は何かと窮屈だろう、、、特にエーデルは、ターロを見るのが辛いだろうしな、、、」
飛び去っていく二人をカルテリコスはそうつぶやきながら見送った。
「さあ、我々も帰ろう」
皆を見回して言うメトド。
今頃ターロ様は、魔力切れを起こして熟睡中だろう。
早く合流して御世話をせねばならん。
ケパレーに戻ったら、教えていただく事が山とある。
と、メトドは、ターロという心の師匠を得たことで、四十路に入って尚、学ぶ喜びに溢れている己の幸せさを噛み締めながら歩き出すのだった。
その後ケパレー軍は前の街に残してきた部隊と合流し、ホーフエーベネ復興の計画が立つまで仮に駐留する者を選出。
早急に本国から資材を送り、帝国への守りを固め直すこととした。
捕虜は、帝国に送り返す。
その際、不可侵条約を結ぶ事を提案。
隣接する帝国領の領主が全権委任されていると言うので、魔法による調印式を行った。
条約を違えれば調印したものの命は絶たれる、と言う、強制魔法付きだ。
お互いが持つこの調印書を二枚とも破棄するまで強制力は有効。
ただし、この領主の命を捨駒として条約を破棄し、攻め込んでくる可能性もあるし、そもそも天使が人族の条約など気にするとも思えないので、油断はならない。
尤も、当分帝国内から出るつもりはない、と言うガブリエルの言葉を信じるのなら、この先何年かは大丈夫だろう。
その間に、来る日に備え、連邦の力を底上げしておこう、とオルトロスとメタメレイアは考える。
とぼけた顔で熟睡しながらメトドたちに付き添われ、馬車で先にケパレーへと帰っていったターロ。
その馬車を見送るオルトロスの顔には、彼がこれからどんな奇跡を見せてくれるのか楽しみだ、と自然と笑みが溢れるのだった。
ここで第一部、目出度く完結いたしました。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
次回から第二部が始まります。
第二部の前半は学園編、後半は意外な場所でのお話を予定しております。
学園編が思ったよりノリノリになってしまった場合は、学園編だけで第二部、とするか知れませんが、予定は未定です。
当初第一部だけで完結とし、第二部からは新しい作品として、再出発しようかとも思いましたが、よくよく考えたら、第二部から読み始めては意味がわからないので、続けることとしました。
”完結”のチェックを入れられるのはまだまだ先になりそうです。