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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第七章 ホーフエーベネ奪還
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7-17 暴走

「あれ? 宝玉を砕いたのに、瓦解していかないな、、、そんなに甘くなかったか、って、うわ、暴走してんじゃーん!!」


ターロが慌てたのも無理はない。


ゾンビドラゴンはその形をブヨブヨと変え、羽の生えた真っ黒い腐肉の塊になっていく。


「、、、何だ、あの化け物は?」


オルトロスが絶句するほどの(おぞま)しい姿。


それはまるで憎悪が具現化したかのようだった。


太い管が何本もゆっくりと本体から伸び出て、取り込む相手を探すかのようにウネウネと動き出し始めた。


しばらくその管を振り回して暴れていたかと思うと、思い出したかのようにこちらに真っ直ぐ向かってくる。


(そりゃそうか、ここには()が大量にあるんだからな、、、)


ここが一番生命反応が多いのだから当然といえば当然だろう。


結構な速さだ。


逃げたとしても人は勿論、馬でも程なく追いつかれてしまう事は明らかだった。


プロクスがどんどん上昇してゆくのを見て、


(回避行動をとっている、って事はメトドさんから何らかの方法で連絡が入って、あれ(・・)の危険性を知ったんだろうな。なら今頃メトドさんたちも安全な場所へと退避しているはずだ)


そう判断したターロは、


(どうする? 隕石は(あた)らないだろうし、プロクスの炎の魔法陣は、間に合わない。 、、、この炎の剣なんかじゃ、どうにもならんしなぁ)


と、まだ炎化したままの右手を見る。


(?!)


「え! そんな事、出来るの?!」


じっと右手を見ていたと思ったら、急に驚きの声をあげたターロに、


「ど、どうした? あれがどんどん近づいてくるぞ。全軍で迎撃体制をとるか?」


オルトロスが声を掛けるが、


「いえ、皆さん緊急退避してください。あれは暴走状態にあります。この世の生き物、全てを取り込むまで止まらないでしょう」


「おい、何を言っているか分かっているのか? 生き物全てを取り込むまで止まらないのなら、どこへ逃げても無駄ではないか」


「大丈夫です。俺が止めます」


そう断言するターロをじっと見据えて、


「、、、できるのか?」


オルトロスが訊くと、


「恐らく。でも念の為、逃げてください」


「分かった」


頷いたオルトロスは撤退の指示を出すが、自分は動かない。


メタメレイアもエウローも、当然のように側に立っている。


「な、何やってるんっすか? 皆さんも早く逃げてくださいよ!」


ターロにそう言われても、ニヤリと笑って、


「お主が失敗すれば逃げたとしても追いつかれ、いずれ死ぬ。だからここにいても同じ事。成功すれば、あれは滅するのだから、ここにいても命の危険はない。そうであろう?」


と返すオルトロス。


後ろを見ると全軍、指示は受けたが、国王が動かないので、動く者がいない。


「ふふ、何が"自分は肉体派"ですか。めっちゃ論理的じゃないですか」


ターロも釣られて笑う。


「我々も残りますよ。何かできることはありませんか?」


と言うメタメレイアに、


「メタメレイア先生、魔力移譲は出来ましたよね?」


「勿論です」


「この魔法を使ったら、俺の魔力、死んじゃってもおかしくないくらい、すっからかんになっちゃうと思うんですよ。だから発動の後、死なない程度に魔力を注ぎ込んでくれませんか?」


「な、なんですか、その危険な大魔法は、、、」


「大丈夫。皆さんには被害は及びませんよ。、、、(きっと)」


「お、おい、最後に何をぼそっと言った?」


最後の呟きを聞き逃さなかったオルトロス。


「い、いえ、何でもありません。エウロー先生、俺を後ろから支えてください。たぶん結構な反動があるんで」


誤魔化すように言うと、ターロは右手を前に出した。


その右手の炎が誰が見ても分かるくらいの大量の魔力を内包して薄く広がっていく。


その一部はより強い光を放ち、一部は消失し、伸びて曲がって、古代文字と幾何学模様を複雑に描きだした。


ついにはターロの右手は、巨大な盾を掲げたような格好の炎の魔法陣となる。


そしてターロは、大声でケパレー軍にこう告げた。


「じゃあ皆さん! いっきますよおーーッ!!」

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