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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第七章 ホーフエーベネ奪還
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7-16 喉越し

「うおっ! ターロ!!」


上空から、牽制していたカルテリコスも、驚く。


ゾンビドラゴンの正面にターロが現れたと思ったら、そのまま呑み込まれてしまった。


転移先を間違えたのか?


ターロがそんな失敗をするか?


、、、するかもしれん、、、。


あいつ、抜けているようで、しっかりしていて、でもやっぱり抜けていて、、、


等と考えているうちに、


ジュッ


ゾンビドラゴンの首の付け根から煙が上がった。


その煙の元から緋色の光がチロチロと見えている。


それが、


ジュシュアーーーーッ!!!


と首周りを一周。


そしてゆっくりと首が落ちていく。


その切り口には、いつもより長めな炎の剣を右手に、濡れ鼠のターロが立っていた。


バッと跳躍して、


《カルテリコス、後はお願い!》


と、だけ伝え、



テレポート(瞬間移動)



また消えた。


あの様な方法で首を落とすとは、、、流石ターロ、と、さっきまでのガッカリな感想はすっかり忘れ、カルテリコスは、


「任せろ! 行くぞ、相棒(プテリュクス)!」


矢を(つが)えて急降下。



【エンチャント(雷撃) ライト(魔法付与)ニング】



ターロに教わって、今や彼の特技になった付与魔法の矢。


よっぴいてひゃうと放つ。


狙い(たが)わずその矢は、額の宝玉付近に、ふつ、と命中。


その刹那、


バリバリッ!


と電撃が走り、宝玉は砕け、天使の顔は焼け焦げた。




固唾を呑んで、見守っていたケパレー軍。


ゾンビドラゴンの首が落ちたかと思ったら、目の前に、びしょ濡れのターロが現れる。


「おお! ターロ、心配させるな。 自爆攻撃を仕掛けたのかと思うたぞ」


「んな事ぁしませんよ! ゾンビドラゴンの首、太すぎて切り落とせないんで、困ってたんですけどね、陛下の言葉が手がかりになって、中からなら半径以下の長さでも切れるなぁって気付いて、やってみたら上手くいきました」


いやー、助かりましたよ、と、ターロ。


「ははは、、、流石は大賢者、と言ったところか、、、規格外だな」


と顔を引つらせて笑うオルトロス。


「何故、水の膜を前もって?」


メタメレイアが尋ねる。


「ああしたほうが喉越しいいでしょ? あと、ゾンビドラゴンの唾液とかで汚れたくないし」


「喉越し、、、」


用意周到なのか、何なのか、戦闘魔法のあり方が最早よく分からなくなるメタメレイア。


「ありゃ?」


話しながら、ゾンビドラゴンを見ていたターロ。


カルテリコスが上手く顔の宝玉を砕いたようだが、様子がおかしい。




一方、カルテリコスは、矢を放った後、勢い殺さずそのまま進んで地表付近で引き起こし、ゾンビドラゴンを追っていたメトド達と合流。


顛末を説明しながら、ゾンビドラゴンを見ているが、中々落ちてこない。


「ターロは、宝玉を破壊すれば制御の仕組みが壊れ、あれも形を保てなくなるかも知れない、と言っていたが、そうはならなそうだな」


カルテリコスが、眉根を寄せて、ゾンビドラゴンを見上げている。


メトドも、じっと見ていたが、


「む、、、宝玉が破壊されて、生前の記憶を元にとっていた形を保てなくなった様だ、、、」


と言う。


「死ぬわけではないのか?」


「ああ。ゾンビだからな。既に死んでいる物を殺すことは出来ない。あれを動かしている仕組みを破壊できないのなら、、、消滅させるしかない」


メトドの答えを聞いて、アプセウデースが不安そうに訊く。


「消滅、、、あんな物をどうやって消滅させるんだべ?」


「分からない。再生が追いつかないほど細かく切り刻むか、炎で焼き尽くすか、、、」


「でも、プロクスのブレス二回分のターロ先生の魔法陣でも焼き尽くせなかったのに、それ以上の炎なんて、、、」


テュシアーの最後まで続かぬつぶやきに、皆、絶望的な気分になる。


どんどん形が崩れてゆき、もうドラゴンの名残は翼にしかない腐肉の塊。


吸収する物が身の回りに無いことに怒り狂って、めちゃくちゃに管を振り回しては木々を薙ぎ倒している。


逃げ遅れてその虚などに隠れていた小動物を目敏く見つけて吸い取っていた。


「暴走を始めたぞ。最早あれは本能のみで生き物を取り込むためだけに存在する化け物だ、、、アウロ」


ゾンビドラゴンを魂力で覗いていたメトドが、その本質を皆に告げ、アウロに呼びかけた。


「はい、メトド様」


「上空のプロクスとキュアーノ殿に、風の精霊に頼んで、絶対に近寄るな、できるだけ距離を取れ、と伝えられるか?」


アウロは、それほど危険なのか、と思いながらも、


「できると思います」


鼻笛を取り出し、青い顔をしながら言われた通りにするのだった。

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