表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第七章 ホーフエーベネ奪還
188/678

7-12 どっから来るんだ、あの執念?

「上手いぞ! 戻って!」


ターロは完成させた魔法陣を精霊樹の木(地獄丸)刀で上空へと押し出してから、足止めに成功したドーラ達を呼び戻す。


魔法陣は直ぐにプロクスの近くまで辿り着いて止まった。


《プロクス。今飛んでいった魔法陣に、思いっきり炎を竜の咆哮(ドラゴンブレス)を!》


《魔法陣にですか?》


目の前まで来た魔法陣に理由も分からず言われた通りにブレスを吐く。



グララァゴァガアアアアーーーッッッッ!!!!!



いつぞやドーラに浴びせたのとは違う渾身のブレス。


《もう一発!》


言われて大きく息を吸い込み、


グララァゴァガアアアアーーーッッッッ!!!!!


二発のブレスを全て吸収した魔法陣は回転を始め、


「おおお!!」


近くで見ていたカルテリコスとキュアーノが驚きの声を上げる。


魔法陣は、まるで小さな太陽のようになった。


その火球が、ゾンビドラゴンへと落ちていき、


ドオオオオーーンッ!!


命中の衝撃がターロ達まで伝わってくる。


プロクスの竜の咆哮(ドラゴンブレス)を収束して無駄無く対象にぶち当てる魔法陣。


本来ならありえない古代竜のブレス二発分。


それが更に凝縮されている。


その火球の直撃を受け、ゾンビドラゴンは炎に包まれた。


「うわー、先生ぇ、、、やりすぎ、、、」


アウロが呆れ顔で言うが、


「そうでもないみたいだよ。 マジかよ」


炎の中でまだ蠢いているゾンビドラゴンが、咆哮とともに勢いよく翼を広げ炎を払いのけた。


焼けた体表の再生がゆっくりではあるが始まっている。


体表の顔は光輪魔法陣障壁を厚くはり自分を守っていた。


羽は折り畳み、更に飛ぶ時の要領で魔力を噴出させそれを保護膜代わりにしたようで、さして損傷を受けている様子はない。


逆に足は何の守りもしていなかったようで焼けて炭になっている。


ゾンビドラゴンが大きく羽ばたくと、その足がボロボロと崩れた。


そのまま空へと飛び立つ。


「うわ、火球を利用して足を焼いて、、、拘束を解きやがった。 どっから来るんだ、あの執念?」


呆然と見送ってしまいそうになるが、


「やっべ、逃げられるぞ!」


慌てて追いかける。


森の方へと飛んでいくゾンビドラゴン。


下方へと管を伸ばしては何かを引き込む。


「野生動物を取り込んでるぞ! 再生されちゃうよ!」


二年の間、人族のいなかったホーフエーべネの土地は、野生動物と魔獣の天国となっていた。


今や森の中は、ゾンビドラゴンの体を再生させる材料で一杯だった。


鳥や猿等が逃げ惑うが、それらの一直線に逃げる背に管を当てることは容易(たやす)い。


もう精霊の加護はないので、竜化の時のように地中や空気中の成分を肉体へと変えることは出来ないが、蟲が人に取り付くのと同じ仕組みで、動物なら生きていようが死んでいようが何でも取り込めるようだ。


胴体はもうほぼ完治している。


足も生えつつあった。


「クソ!」


ターロは飛び出した。


飛んでくる管を片っ端から炎の右手で掴んで焼ききっていく。


光輪は地獄丸で往なす。


《カルテリコス! 一撃離脱で、管に捕まらないように体の表面に残ってる顔、潰せる? メトドさんたちも、近寄らないように下から、表面の天使の顔を狙ってみて。ドーラとか遠距離攻撃のない人は、管と光輪から皆を守って! アウロ! 精霊に頼んで森の生き物を逃して》


それぞれに指示を出すと、早速プテリュクスに跨るカルテリコスが急降下してきて、(いかずち)の矢を射た。


流石、息はピッタリで、カルテリコスが矢を射た瞬間にプテリュクスが反転、離脱する。


バリバリリリ!!


放たれた矢は狙い違わず、体表の天使の顔の一つを潰した。


メトドとニパスもそれぞれファイヤーダーツ(火の矢)ヘイルストーン()を打ち出す。


顔が減るに連れ飛んでくる光輪の数が減っていく。


「やっぱり顔が無けりゃ光輪は出せないんだ」


鱗や羽の膜は直ぐに再生されてしまうが、顔の再生は中々始まらない。


複雑な構造のものは再生しにくいのだろう。


ターロは自ら囮になって管の攻撃を集めるが、炎で焼かれるだけだと気付かれたのか管の射出が止む。


そうなると、そのまま近寄って本体へ炎の剣や地獄丸で攻撃。


《この調子でちまちま削っていけば、そのうち再生できなくなるんじゃない? ちょっと時間かかるかも知れないけれど、気を抜かないで頑張ろう!!》


皆を鼓舞して、攻撃を続ける。


アウロのお陰で森の生き物はもうゾンビドラゴンの届くところにはほとんどいなくなったので再生もできなくなってきた。


ケシャアアアアア!!!


ゾンビドラゴンが業を煮やして、雄叫びを上げる。


羽を大きく一振りすると離脱を試みるように上昇していく。



ケシャアアアアア!!!



ターロ達に向かって再度咆哮。


今度は魔力がのっている。


「うわ!」


もう来ないかと思っていたブレスが来て、慌てて回避。


その隙にゾンビドラゴンはどんどん距離を開ける。


「なんだ? 慌ててどこへ行くつもり、、、ああッ! しまった!」


ターロが慌てて唱えた。



照明弾(フレア)】【照明弾(フレア)



二回で退避の合図。


《ケパレー軍に向かっているぞ! 皆を取り込むつもりだ!》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ