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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第七章 ホーフエーベネ奪還
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7-11 未完成な生態魔法

「ふん、ガブリエルめ、、、」


六枚羽の天使ガブリエルの消えた空を、苦々しげに睨む四枚羽は、


「見ていろ。今こそ、我が母と一体となり人族を、、、」


と言うや、額に宝玉を押し当てた。


「テメエ! 何するつもりだ!」


ターロがブースト(噴射)で斬りかかるが、間に他の天使達が割って入り、


「早く! 早く母上と! そして我等も!」


ターロを足止めした。


「無論だ!」


額の宝玉からバリバリと音をさせ、母竜の死骸まで飛んでいく。


「なんか不味い! あれを止めなきゃ!」


ターロは数体の天使にしつこくまとわりつかれ、転移する隙も見つけられず、そうメトド達に叫ぶのがやっとだった。


その叫びにメトド達が攻撃魔法を繰り出すが、


「もう遅い!」


攻撃魔法は全て、母竜へと辿り着いた天使がいつの間にか張った障壁に阻まれた。


その天使が急に、


「うがあああ!! こんなぁ、、、これが!?」


と、悲鳴をあげる。


ゴボゴボと体の至るところが瘤のように盛り上がったかと思うとそれを破って管のようなものが母竜の体に取り付き、天使と母竜は一体化していく。


「な、、、なんだ?」


ターロも彼を抑えていた天使たちも、しばし呆然となるが、


「不味い、不味いぞ、一体化が終わる前になんとかしなきゃ!! あれは蟲と同じもんだ、天使が母竜と一体化しちまう!」


動かなくなった周りの天使たちを押し退けターロは右手を炎に変えて闇竜だった物に突っ込んでいく。


「!!」


何かが飛んでくるのを察知して、(すんで)のところで横に避けると、ターロがいた所に管のようなものが伸びていた。


管は母竜の体から飛び出ている。


その先には鋭い牙を持つ口のような物が付いていた。


他にも数本それは伸びていて、先ほどまでターロを抑えていた天使たちに喰らいついていた。


その管はみるみるうちに体内へと入り込み、天使たちを喰らいながら縮んですべてを取り込んでしまった。


「うわ、そう言う仕組みかよ! 皆、近寄るな! 吸収されちゃうぞッ!」


そう知らせ、ターロは炎の剣で自分の横にだらしなくのびている管を切り捨てて、


「やっべー」


転移して皆の所まで戻った。


「あれ、どうするよ? 下手に近づくと喰われるぞ」


とターロがマジカルシールド(魔法の盾)を展開しながらいう。


宝玉の天使との同化が進み本体を動かせるようになったようで、闇竜がのそりと立ち上がった。


そして、地面でターロにやられて伸びていた天使たちも次々と管を伸ばして取り込んでゆくと、体の傷が治っていく。


闇の死竜(ダークゾンビドラゴン)、、、」


メトドが目の前の物を的確に表現する。


ケシャアアアアア!!!


気味の悪い咆哮を上げた。


「、、、竜の咆哮(ドラゴンブレス)じゃないのが救いだぜ、、、」


相変わらず体は黒いが、最早、精霊の加護はないらしい。


その咆哮に闇の精霊魔法はのっていなかった。


「しかし、魔力の衝撃波としては使えるはずです」


と冷静に分析するメトドを、頼もしいな、とターロは思う。


「カルテリコスたちに知らせなきゃ。障壁の前に出ちゃだめよ」


そう皆に言いおいて、自分は障壁から出たターロは、テレパシー(遠隔精神反応)をつないでカルテリコス達にも状況を知らせ、


《ともかくあの管の伸びる範囲を調べるからそれまで近づかないで》


伝え終わるとテレパシーを切って、更に近づく。


そのターロを取り込もうと管が伸びてきた。


かなりの速度だが、一度打ち出すと方向はほとんど変えられないようだ。


横に避けるとそのまま失速して地面に落ちた後ズルズルと本体に回収される。


噛みつかれる直前で、精霊樹の木刀で払っても同じ結果だ。


動いて絡みついたりはしてこない。


(なんだ? 打ち出すだけで動かせないんじゃ、そんなに怖くないかな?)


などと思ったそこに、光輪が飛んでくる。


「うわ、撃てんのかよ!」


間一髪で障壁を展開して直撃を避けた。


よく見ると取り込まれた天使たちの頭が、母竜の体表にある。


光輪が撃てるということは自我がまだ残っているということだろうか?


移動するターロをその目が追っている。


「うえ〜、気色わりい(グロテスク)〜」


と言いながらターロが皆の元へ戻ってきた。


ゾンビドラゴンはまだ同じ場所で唸っている。


同化が完了していないのか、取り込んだ量が足りずに損傷を治しきれていないのか、ともかく動けないでいる今のうちにケリをつけたい。


「管を伸ばすのは幾らでも伸ばせるけれど、打ち出すだけで、自由には動かせないみたいだよ。でも光輪が放てるのは厄介だなー」


カルテリコスたちにも伝える。


《だから最初の勢いよく飛び出すのさえ避ければ大丈夫なんだけれどね、そこで気を抜くと光輪が来るんだよ。面倒だよね。まあ、ともかく一回捕まると引き込まれて吸収されちゃうから、、、そうだ、ちょっと待ってて》


「ドーラとアウロ、土の精霊で足を固定できない?」


と訊くと、


「ん」


「やってみます」


という返事。


ドーラは一人で、アウロはクローロ、ニパスに守られながらと魔法障壁の後ろからの走り出てゾンビドラゴンに近づく。


頭の方にドーラが、アウロ達は尻尾側に回る。


管が早速のびてくるが、


「アン、アン!!」


ニパスはその先端に雹の礫を上手く()て落とす。


そのかなりの命中精度を見て、ターロはメトドに、


「メトドさん、ニパスの氷弾、メトドさんのファイヤーダーツ(火の矢)といい勝負じゃない?」


「いや、私はあの様に速く動く小さな的に当てる自信はありません」


「またまたー、謙遜しなくっていいから。 あ、こんな事している場合じゃなかった」


思い出してターロは"地獄丸"で目の前の空間に魔法陣を描き始める。


クローロも大剣で、上手く管や光輪を捌いてアウロを無事、目的の場所まで辿り着かせた。


ドーラは、と言うと、巧みな体捌きで管と光輪を避け、射程に入って、竜の咆哮(ドラゴンブレス)



「きゃ〜〜〜〜〜ぁ!!」



ドッ! ドッ! ドンッ! 、、、


土の棘がゾンビドラゴンの足元に生える。


ゾンビドラゴンは避けようと棹立ちなるが、後方に辿り着いていたアウロが精霊魔法を発動して、その棹立ちになった後ろ足を支える地面を泥濘に変えてしまった。


不安定になった後ろ足だけでは立っていられず、上げた前足を棘の上に下ろさざるを得ないゾンビドラゴン。


ザクザクザク!!


棘がおろした前足に突き刺さる。


藻掻いても、返しが付いた棘からは足を抜くことが出来ない。


当にその場に縫い付けられた形となったゾンビドラゴンは、ただ不気味なうめき声を上げることしか出来なかった。

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