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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第七章 ホーフエーベネ奪還
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7-10 ガブリエル

(六枚羽、、、気配を感じなかったぞ)


ターロは平静を装いつつも、警戒を高める。


二枚羽と四枚羽の力の違いもまあまああったが、それとは全く比べ物にならない圧倒的な物を感じる。


(本当にエーデルより劣化しているのか? 寧ろなんでこれだけ力があるのに精霊の加護がつかないんだ?)


次から次へと疑問が湧いてくるが、一人で考えていても答えはでないので訊いてみる。


「誰だお前? 、、、そう思う、ってどういうことよ?」


「僕はガブリエル。君はターロ大賢者ですよね? 元ホーフエーべネの王子様」


背には六枚の羽。


話に聞いていた名持ちの一人のようだ。


皆、同じ様な外見の四枚までの天使と違い、顔に個性がある。


白い、という事はかわらないが、短くて少し癖のある髪。


瞑っているのか開いているのかわからない細い目。


少し背は低いだろうか?


「言葉の通りです。四枚羽以下の子らはあまり"努力"しませんので、成長しないんですよ。でも僕らは違います。人族の間に入ってずっと一緒に色々やってきたからか、色々学びましてね。人族の"貪欲さ"は見習わなきゃ、っていつも思っています」


(そう言うことか、、、)


生まれた時の能力がエーデルより低く精霊の加護を受けられずに竜化出来なかったとしても、その後何百年と研鑽を積んだのだ。


化け物の様な存在になっている事は想像に(かた)くない。


「ガブリエル、、、何故来た。ここでの事は見えているだろう?」


最初にターロに殴られ、蹴り飛ばされた四枚羽の天使がよろよろと立ち上がって尋ねると、


「君たちを呼び戻しに来たんじゃありませんか。母上が死んでしまった今、君らの計画はもうどうにもなりませんよね?」


「まだだ! もう一つある!」


「君、、、あの技術が使い物に成ると本気で思っているのですか? おやめなさい。あれはどう考えたってまだ未完成ですよ」


「、、、う、、、煩い!」


何やら言い争いを始める天使たち。


「おい。何勝手に兄弟喧嘩始めてるんだよ」


ターロが精霊樹の木(地獄丸)刀を抜く。


「おおっと、待ってください。僕は君()とやり合うつもりはありませんよ。そうなればお互い唯では済みませんからね」


ニコッと笑うガブリエル。


(こいつ、、、一人でここにいる全員を相手にする自信があるってことか)


舐められたもんだ、とは思わない。


恐らくそれだけの強さはある。


今やり合うのは得策ではない、ならば、とターロは出来得る限りの情報を集めることにした。


「、、、その四枚羽は、なんでお前が来たことに驚いてたんだよ? お前ら共通感覚があるんだろ?」


「はい? ああ、彼らからは僕らに全て流れてきますが、僕らの事は、何を流すか流さないか、僕ら自身で調節できるのですよ。これも練習の成果です」


隠す気もないらしく、スラスラ応えるガブリエル。


「何故、、、何故、この国に攻め込んだ後、二年も動きがなかった?」


「フフ、知りたがりですねえ。でも、色々迷惑かけたお詫びに答えましょう。二年間何していたか、ですか? そりゃあ、母上の封印をどう解くか、色々やっていたのですよ。それと、解いた後のことも」


「解いた後?」


「そうです。解いた後、母上にまた卵を産んでもらわなきゃなりません。しかし、孵ってもすぐ死ぬんじゃ困ります。 何故すぐ死ぬのか、死なないようにはにはどうすればよいのか。卵の段階で解決できるのか、孵ってから死なないようにしたほうがよいのか、、、まだ答えは出ていないのです」


「なら、その答えが出てから攻め込んでもよかったんじゃねえのか?」


「そうなのですよ。普通そう思いますよね? なのに、この子らときたら人族にいいように焚き付けられて、、、。二年前の侵攻は、僕らにとっても事件だったのです」


「? どういうことだ?」


「なぜだか人族というのは徒党を組んで争うのが好きじゃないですか。帝国内の研究も、生態魔法と付与魔法の派閥に別れて争っているんですよ。これは人族の困ったところですね。で、この子らは、二年前、その生態魔法派の者に色々吹き込まれて勝手に攻め込んでしまったのですよ」


そこへ四枚羽の天使が割って入ってきた。


「吹き込まれたとはなんだ! 早世しない卵を産める生態魔法が開発されただろう!」


「それが出鱈目だというのです。僕達が解析した所、あの魔法陣は失敗作ですよ」


やれやれ、とガブリエルが応えるが、


「付与魔法派に騙されているのだ! そもそもせっかく母上の封印を奪還したのにいつまでも動こうとしないのがどうかしておる! 我は既にあの(・・)処置を受けていて、母上の亡骸もあるのだ、今こそ母上の意思を継いで人族を根絶やしにできる!」


「馬鹿な、、、。 母上の亡骸を穢すのですか?」


「穢す? 死なば、塵芥(ごみ)とかわらぬ。 お主は人族と(ちか)しくなりすぎて、人族のような考えをするようになったようだな。下らぬ感傷だ。そんな事で邪魔するな!」


その言葉に、細い目を少し開けジロっと四枚羽を睨むガブリエル。


「、、、ではお好きにどうぞ。確かに君の言う通り生き返ることはありませんからね。しかし、君は人族を侮りすぎです。さあ、死にたくない者は共に帰りますよ」


ガブリエルは他の天使に呼びかけ、


「ではターロ大賢者、もし生きていたら(・・・・・・)また会う日もあるでしょう。 いや、ないかな? 僕たちは当分帝国の外へ出る気はありませんので。 母上亡き今、研究目的を変えねばなりませんからね。では、御機嫌よう」


そう言って、呼びかけに応じた天使数体と共に転移して消えた。

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