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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第七章 ホーフエーベネ奪還
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7-8 闇竜の封印

「、、、これは?」


テュシアーがターロに尋ねる。


彼女には、アウロの前にその笛の()に応えて何か光の粒子の様な物が集約してゆくのが見えていた。


「アウロは光の精霊と契約を結んだんだよ」


奏でる曲は、



グリーグ ペールギュント第1組曲 より "朝"





ターロ達が地上を行軍している間エーデルに乗って移動していたアウロには、ターロからある特命(ミッション)を言い渡されていた。


それは光の精霊と契約を結ぶ事だった。


闇竜のエーデルの上では、光の精霊との接触はし(にく)かろうと、プテリュクスに乗れるようターロはカルテリコスにも頼んでおいた。


カルテリコスはてっきり一旦地上に下りて乗り換えるのかと思っていたが、アウロはいざ実行という段になると、ニパスをクローロに預けるや、エーデルの背からそのままプテリュクスに向かって飛び出した。


勿論、風の精霊の補助を受けているからできる芸当だが、受け止めたカルテリコスとプテリュクスの焦りは相当なものだった。


そうして朝日を浴びてアウロは無事光の精霊との契約を結んだのだった。


その光の精霊がアウロの笛の音の魔力を得て顕現していく。


無詠唱はもちろん、詠唱するよりも笛での召喚の方が魔力の消費が少ない。


換言すると、同じ魔力量なら笛による召喚が、精霊に最も強い力を与える事ができる。


『さっそく呼んでくれましたね』


美しく輝く光の精霊が、アウロに微笑む。


「うん。お願い。あの封印を解きたいんだ」


とアウロは闇の封印を指す。


それを見た光の精霊は、


『あれは、闇の、、、ごめんなさい。私には、無理だと思うわ』


と、申し訳なさそうに言うが、それは想定していたので、


「大丈夫だよ。先生に考えがあるみたいだから、協力して」


と、ターロを見る。


頷いたターロは、


「この人族のテュシアーが、破邪の魂力を持っているんだ。それに力を貸して欲しい」


そう光の精霊に言った。


『、、、成る程。分かったわ。でもどうやって?』


と訊かれて、ターロは、


「じゃあ、早速やるか!」


気合を入れ、


「光の精霊よ。彼女の傍らに。今から彼女に乗り移って封印を破ってもらうから」


それだけ言って唱えた。



【スピリット ポゼ(憑依)ション】



これがターロの秘策、テュシアーを光の精霊の尸童(よりまし)にし、彼女の魂力"破邪の手"に光の力を上乗せする。


(ターロ先生、、、前もって説明しておいてください!)


と思いながらも話の流れで何をすればよいか把握したテュシアー。


考えすぎるテュシアーに、ターロは敢えて予め何も教えなかった。


自分で抱え込んでしまう悪い癖を直してほしいと思っているが、惚れた相手が口数の少ないメトドさんじゃちょっと難しいかな? とも思っている。


後でアウロに相談しよう。


? 子供に相談でいいのか?


というターロなりの気遣いがあったことは露知らず、テュシアーと光の精霊は重なり合い、一人になる。


その姿は当に地上に降り立った女神のようであった。


詳しい事を聞かされないままに憑依されたが、


出来る。


テュシアーには確信が湧き、


私達(・・)なら、出来るわ』


それを保証するかの様に光の精霊の声が内に響いた。


「解除します」


光の精霊にアウロがたっぷり込めた魔力もあるので、メトドの補助もいらない。


彼女らの魔力は足し算ではなく掛け算のような相乗効果を生み出しているらしい。


ゆっくりと手を翳す。


光の渦はその手を恐れるように、微弱に震え、流れを止め逃げるようにするが、その場から動くことが叶わないようだ。


テュシアーが一歩前に出る。


フウウウウウ


その場にいる者は、鼓膜が膨れるかのような奇妙な感覚を覚えた。


聞こえるのは小さな音なのに、下腹や脊髄にドスンと響いてくる。


可聴範囲を越えた音がその場に充満しているようだ。


その証拠に、ドーラ、エーデルとニパスは耳を抑えている。


彼女らには耐え難い爆音が聞こえているのだろう。


フォンォンォンォン、、、


テュシアーから溢れる光量が増すに伴い、空気の圧力がさらに増してゆく。


地面も振動し始め、小石などがカタカタ揺れて動き出した。


音の圧力にその場の皆が耐えられなくなろうかという、その時、


フホゥワッッッ!!!!


目を閉じていても何もかもが白くなるような閃光。


そして音の圧力が止まった。


目を開けると、今にも倒れようとしているテュシアーが見える。


メトドが慌てて駆け寄り抱き止めた。


彼女の中の光の精霊は魔力を使い果たし精霊界へ既に還ったようだ。


メトドの腕の中ではいつものテュシアーが、安らかな寝息を立てている。



マジカル(魔法)エアレ イド シ(防空壕)ェルター】



ガガガガガガッ!!!


ターロが結界防御魔法を展開した直後、豪雨のような攻撃が頭上から降り注いだ。


「む、、、これを防ぐか」


封印が解けた瞬間に転移をしてきて攻撃を仕掛けた天使達。


しかし、自分たちの弾幕が、人族に何の被害も与えられず、魔法防御壁すら破れなかったことに驚きの声をあげた。


カルテリコス達は動かない。


この攻撃は想定されていたもので、まだこの段階では動かないようにターロから言われていた。


そのターロが、


「馬鹿だなお前ら。来ると分かってるんだから魔力練り上げて用意しときゃ、このくらい何でもないだろうが。って言うか、見ろよ」


憐れむように、封印のあった所を指した。

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