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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第七章 ホーフエーベネ奪還
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7-7 蓋が邪魔

「戦う気はない、と言うたであろう」


メトドたちは身構えているが、


「お主は分かっているようだな」


一人棒立ちになっているターロを見てそう言葉をかけてきたのは、四枚羽の天使だった。


砦の火柱の罠の後に現れた天使のように見える。


それにターロが応えて、


「ああ。封印を解かせたいんだろ?」


「その通りだ。我々ではどうしても母上の封印は解けなかった。、、、そこに裏切り者がいるな」


とエーデルを指し訊く。


「お前なら、解けるのか?」


『いいえ。同じ物をかけることは出来ても解くことは出来ないわ。基本的に設置した術者にしか解けない精霊魔法だもの』


「やはりそうか。ならばお主らにも解けない、という事、、、であるなら態々ここには来ないか」


「ああ。解く方法はある。だがな、解いた後、俺たちを殺して母竜を奪う気なんだろ? 大人しく解くと思うか?」


「ふむ。どちらでも構わぬ。解かぬのならば我々で方法をみつけるまで」


「だよな。仕方ない。解いてやるから邪魔するな」


「む。 やけに素直だな。何を企んでおる?」


「言うわけねえだろ、ボケ。解いてみりゃあ分かるって言ってるんだよ」


天使は最早ターロの挑発には乗らなかった。


不快そうではあるが、


「、、、まあよい、ならばやってみい」


と言って、転移して消えた。


「けっ、いつ見ても薄気味(わり)いな。まあいいや、さっさとやろう」


ターロは墓所の扉を開けると精霊樹の木刀(地獄丸)を光らせ下りていく。


まだ木刀の銘を"地獄丸"とした事は、誰にも言っていない。


ターロの後にメトドとテュシアーが付き従い、残りは地上で待機、、、だったが、すぐにメトド、テュシアーが駆け上ってくる。


どうしたのかと見ると、テュシアーが、


「離れて! ターロ先生が、墓所の天井は邪魔だから吹き飛ばす、って理由(わけ)のわからないこと言って魔法陣を描いています!」


と叫んだ。


それは大変だ、と皆、慌てて距離をとると、墓所を覆っている辺りが、


ボフウッ!


少し持ち上がり、


グアフウウウウゥッ!!


吹き飛んだ。


カラカラカラ、、、


空から破片が落ちてくる。


プロクスが翼を広げて皆を覆った。


いつまでも落ちてくる破片が尽きない。


「ああ、、、」


やっと破片が落ちてこなくなり、土煙が収まったかと思うと、ぽっかりと大穴が空いていた。


覗き込むと、階段の先に、小さな祭壇のような物があり、その向こうに、暗黒の渦が蠢いている。


祭壇は、エーデルの寝台、渦が闇竜の封印だろう。


「おお〜、きれいになったな」


「うわっ! びっくりしたー。先生、脅かさないでよ!」


穴を覗き込んでいる皆の後ろから急に声がかかり、驚く。


アウロが抗議の声を上げる。


後ろにいたのは勿論ターロ。


天井を吹き飛ばす魔法陣発動の瞬間、テレポート(瞬間移動)したようだ。


「ターロ様、なんで態々、天井を吹き飛ばしたりしたんだべ?」


アプセウデースが尋ねると、


「闇の封印解くのには光が必要かな、って。あとさ、封印解いた後、密閉空間だと天使に簡単にやられちゃうかも知れないでしょ?」


その理由は理解できるが、この墓所の覆いはかなり頑丈だった様に思える。


「ターロ様、、、相当魔力量上がっていませんか?」


メトドが確認すると、


「そうなのよ。最近ニパスの体つくるのとかで魔力すっからかんにするの繰り返したりさ、ライン王子との融合が完了したりしたせいか、大分上がったっぽい。今の魔法陣は前世の知識使って効率よく組んだからあんま魔力使ってないし、まだまだ余裕だよ」


(だ、大賢者様、、、)


ターロが味方でよかった、と誰もが思った。


「じゃあ、やっちゃおう。テュシアーお願い」


そう言われて、我に返ったテュシアーが、メトドと共に下りていく。


闇の渦に手を翳して解除を試みるが、


バフッ!


「キャア!」


軽く弾き飛ばされてしまった。


「ありゃ、やっぱ相当強力なんだね。竜の魔力で組んだ封印だからな〜。プロクスにかけられていた天使の魔法陣の比じゃないねぇ」


とターロも階段を下りながら言った。


「でも、いいことも分かった。反応があったってことはテュシアーの魂力で破れる、ってことだ」


メトドも頷く。


「じゃあ、本格的に解除するから、皆配置について」


というターロの言葉で、皆かねてからの打ち合わせどおりに動く。


解除後の天使の襲撃に備えての布陣だ。


ドーラは定位置、ターロの背中を守る。


カルテリコスとプロクス・キュアーノは、上から奇襲をかけるために上空で待機。


エーデルは竜のままだと大きくていい的になってしまうので人化し、闇の力で地上組の補助をする。


アプセウデースはエーデルの護衛。


エーデルにのっていたアウロには大切な役目があり、やはり階段を下りる。


ニパスとクローロも、その護衛として付いてきた。


「いいかな?」


皆の準備が整ったことを確認して、ターロが、


「じゃあ、アウロ」


合図をすると、それに応えてアウロの鼻笛の()が響き出した。

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