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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第七章 ホーフエーベネ奪還
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7-6 墓所へ

「だ、大賢者様!」


「だ〜から〜、ターロでいい、って言ってんじゃん」


「お、、、畏れ多い」


「畏れなんか、な〜い! もー、そんなんなら話ししないよ!」


「ひいい〜〜っ!」


さっきからずっとこんな調子で、疲れ気味のターロ。


ケパレーは魔術師の国なので、オルトロスの宣言の後、一般兵の魔術師が列を為してターロを質問攻めにした。


その一つ一つに丁寧に答えるターロ。


質問の答えを聞いた者はそれを仲間内で共有する。


さっきまで下を向いて黙って歩いていたのが嘘のように、どこもかしこも魔法談義で盛り上がっている。


行軍中、暗くなられるよりよっぽどよい。


ただ、必要以上に畏まられる事に辟易していた。


「皆、盛り上がるのはよいが、周りへの警戒も怠るなよ」


やんわりとエウローが注意するが効き目は、ない。


「まあ、よろしいではありませんか。私も見てますし、空からのカルテリコス達の目もあります。大丈夫ですよ」


とニコニコしながら言うメトドに、エウローが不思議そうに尋ねる。


「メトド殿、嬉しそうですな」


「はい。ターロ様が認められたのですから」


心の師が大賢者の後継であるとようやく公にされた事を喜ぶメトドは、ブーブー言いながらも皆の質問にちゃんと答えるターロをみて笑っていた。


夕方、夜営を張る。


ここが最後の野営地。


墓所まではもう何時間かの距離だ。


「ああ〜疲れた〜。こんなんで明日大丈夫かな?」


げっそりしてそう言うターロに、


「ハハハ、大変だったな」


とオルトロスがからかい半分で労う。


「いや、こんなんなったのも陛下のせいじゃないっすか」


「すまんすまん、ハハハハハ」


ターロの恨みの視線を高笑い受け流したオルトロスは、今日はよく寝られそうだ、と自分の天幕に入ってしまう。


「先生」


アウロ達がやって来た。


「おお、アウロ。上手くいった?」


「はい!」


元気に応えるアウロ。


「アウロは、すごかったぞ」


そう言うカルテリコスにクローロも微笑んで頷く。


クローロはすっかりアウロを手懐けたようだ。


「あれにはどういう考えがあるのだ?」


カルテリコスがターロに尋ねる。


「うん。多分必要になるし、ならなくてもいつか役に立つと思ってさ」


「そうか、ターロがそういうのなら、そうなのだろう。しかし、空の上で、エーデルから、プテリュクスに飛び移ったのには流石に驚いた。アウロは豪胆だな。いいペガサスライダーに成れる」


カルテリコス以外は背に乗せないプテリュクスだが、カルテリコスと同乗という形ならアウロを乗せてくれる様になった。


「はは、本人はペガサスライダーになる気はないと思うけれど、精霊使いのペガサスライダーってのも面白いかな? きっと史上初だよね?」


などと話しながら、焚き火を囲んで配給された食事をとる。


ドーラもターロの横で、美しい舞の褒美だ、とオルトロスに特別にもらった果物を食べてた。


ドーラはおじさんに人気があるらしい。


「いよいよ明日だな」


食事の後、ターロの淹れたお茶を飲みながら、皆で星を眺めた。


翌朝早く、ターロたちだけが墓所へと向かう。


「本当にお主等だけでよいのか?」


オルトロスが念を押すが、


「はい。打ち合わせどおり、照明弾(フレア)一つで進軍、二つで撤退。合図が丸一日なかったら斥候を放って臨機応変にお願いします。」


「うむ。分かった。気をつけてな」


「はい」


ターロ、ドーラ、メトド、テュシアー、アプセウデースの地上組。


プテリュクスに乗るカルテリコスと、アウロ、ニパス、キュアーノ、クローロが竜化したプロクス、エーデルに乗る飛行組。


二手に分かれて、野営地を発った。


軍隊を引き連れて行くと、砦にあったような大規模な罠があった場合、避けることが難しいのでこうすることにしたのだった。


ターロの考え通り、天使たちの狙いが、ターロ達に母竜の封印を解かせることなら、それまでは攻撃はないはずだが、オルトロスたちを人質にされても面倒だ。


ともかく封印を解かないことには始まらない。


帝国の人族の軍隊がいるのが確認できた時、進軍の合図を出せばよい。


そこから先はなるように成れ、だが、


「ねえ、メトドさん。闇の封印ってさ、どんなものだろう?」


歩きながら色々考える。


本当は昨日までにもっと話を詰めておきたかったのだが、質問攻めにあっていたのでその機会がなかった。


「闇の不活性化の力によって、対象を封印するものですよね?」


「うん。エーデルも、自分に施して百年ごとの眠りについていたって言っていたよね?」


ドーラは始めから聞いていない。


テュシアーは言っていることは理解できるが自分から意見を言えるほどの知識はない。


アプセウデースは、先ず理解しようと努力していた。


「不活性化って、やっぱ時間かな?」


「きっとそうだと思います。エーデルの話を総合するとそう判断するのが妥当かと」


エーデルからは予め闇魔法の知識を得ていた。


「だとするとさ、、、」


そんな話をしているとすぐに着いてしまった。


「あそこだ。城址と山との間」


城は完全に破壊されて、基礎しか残っていない。


そこには二年の間に茂った草木が生えるのみだが、切り立った断崖の手前には、古代の遺跡のような不思議な滑らかさを持った石造りの建物があった。


エーデルの(もたら)した古代人の建築技術によって、闇竜の封印にかぶせるように建てられたものだ。


その封印の地、"墓所"を、崖と挟むようにしてにホーフエーべ城は築かれ、長い間全く人の目に触れることはなく秘密を守ってきた。


扉を開けると地下に繋がっていて、エーデルが三百年過ごし、ラインの父、ラウシュと出会った場所があるはずだった。


カルテリコスたちも降りてくる。


『二年ぶりです、、、』


エーデルが悲しそうに言う。


思い出の場所だが、そこで共に過ごした人はもういない。


「お出ましのようだ」


とターロが顎で上空を指す。


「やっと来たな」


転移してきた天使たちに包囲されていた。

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