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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第六章 盟主国 ”ケパレー”
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6-16 未来視の価値

「凄いなんてものじゃないですよ。数秒先と言いましたね?」


前のめりのメタメレイアに困惑しながらも、


「は、はい」


メトドが応える。


「それより長く伸ばす事は?」


これには、


「難しいでしょうね」


ターロが応じた。


「やはり」


「ええ、未来の確定部分だけを見るのはそれが限界でしょう。それ以上先は分岐が多すぎて観ようとしても具体的な像を結ばないのではありませんか?」


「そうですね。予言と未来視は別物、という事でしょうね」


と二人で納得しているところへ、


「おいおい、勝手に魔法談義を始めるな。どういうことだ?」


とオルトロスが待ったをかける。


エウローはというと、理解を越えたことが起こりすぎて、顔色が悪い。


「いやいや、陛下達も魔法使いでしょうに、、、」


「おい、我々は肉体派だ。知っているだろう。お主らのような知性派魔術師の高等な話は鐚一(びたいち)分からん」


(そんな事を威張って言わなくても、、、)


ターロとメタメレイアは苦笑いをする。


仕方なしにメタメレイアが主に説明を始めた。


「陛下。彼の力は未来を観るものです。予言のように遠い未来の概要を示すのではなく、すぐ先の具体的な未来、確定した未来だけを観るものです。未来には幾通りもの可能性がありますが、条件次第ではその数が絞られます。例えば、私がこれを放すとどうなりますか?」


メタメレイアは先程ターロが投げてよこした硬貨を見せて尋ねる。


「下に落ちるであろうな」


「その通りです」


といって、右手を頭の少し上まであげ、硬貨を落とす。


そして落ちた硬貨を逆の手で受け取った。


「この様に物は下に落ちる、という事を我々は知っているので、未来を言い当てられます。不確定なことが殆ど無いからです。しかし、今のように空中で受け取らなかったらどうなりますか?」


「床まで落ちるな」


「その後は?」


「どこかに転がるか跳ねるかするだろう」


「どこへ?」


「そこまでは分からん」


「ですよね。確定要素が足りないから未来が見えないのです。しかし、、、メトド殿、お願いします」


といって、硬貨を落とす。


再び未来視が繋がった三人には、硬貨が落ちる前から、どこへ行くかが観えた。


掌を広げて待つエウロー。


チャリーン


落ちた硬貨は跳ねてその手の中に吸い寄せられるようにおさまった。


「「おお〜」」


何となく未来視の価値を理解した二人。


メタメレイアは更に続けた。


「陛下、例えば敵との交渉の席で、暗殺の危険がある、といった状況を想定してください」


「うむ、、、そうか。この力があれば事前に回避できるな」


メタメレイアに言われて気付いたオルトロスとエウロー。


「成る程、投げられた硬貨を受け取れたように、毒の塗られた吹き矢や、物陰に隠れた暗殺者の攻撃を、、、」


と言うエウローの言葉をメタメレイアが引き取って、


「そうです。避けられます」


むむむ、と唸る三人に、ターロが、


「まあ、今は五分位しか持たないという事なので、その様な使い方が出来るかには疑問が残りますがね。もしメトドさんが時間や可能性の概念をより明確に持てばもっと少ない魔力で長く未来視を維持できるかも知れません。今後の研究課題ですね」


とメトドを見てニッコリとした。


「研究、、、それはどこで?」


メタメレイアに問われて、


「当初の話では、俺に王立魔法学院で教鞭をとれ、との陛下の仰せでしたが、あの話はまだ有効でしょうか?」


「勿論だ」


「なら、そこで研究員としてメトドさんを雇ってもらえませんかね?」


「こちらからお願いしますよ! よろしいですよね、陛下!」


普段あまり大声を出さないメタメレイアが、滅多に見せない剣幕でオルトロスの承諾を求めた。


「あ、ああ。人事は学院長に一任してあるだろう」


「ありがとうございます! 是非、是非来てください」


とメタメレイアはメトドの手を取った。


どうやってメトドをケパレーに留めようかと思案していたメタメレイアは渡りに船だと喜んでいる。


困惑気味のメトドがターロに助けを求めるが、彼は笑いながら肩を竦めるだけだった。

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