6-10 プロクス人化
「疲れているところ済まんが、話を聞かせてくれ」
城の一室に通された一行はオルトロスに説明を求められた。
城下の補修や怪我人の手当は城兵を中心に続けている。
主立った貴族招集の為、それぞれの領地に早馬を出した。
彼らが揃い軍議を開けるのは、早くても明日の夜だろう。
その前に、オルトロスとメタメレイアはターロ達から情報を得る事にした。
だが先ずはプロクスに人化してもらわなくてはならない。
その時に大量の土と炎がでるというので、近衛騎士の修練場を人払いして使わせてもらう事になった。
炎を防ぐ水の魔法障壁を張れるキュアーノが服を持って付き添う。
メタメレイアは学術的興味から、オルトロスは単なる興味から見学したいと言ったが、女性陣にこっぴどく叱られて叶わなかった。
帰ってきたプロクスは、美しい真紅の翼と髪色、目をしていた。
「ドーラは髪も目も緑だけど、プロクスは赤いんだね」
「そうです。我々が人化すると、属性が髪や目、翼に反映されます」
「じゃあ、天使は?」
「あの子らは突然変異の結果大量に産まれたので精霊の祝福を受けられず、属性がありません」
「何も無い、という意味で白いのか、、、」
メトドが少し憐れむ様に言った。
皆が揃ったので、話を始める。
侵入者の確認に飛んだターロの話を聞き、
「結界が感知したのはゴーレムの軍団でしたか、、、」
とメタメレイア。
色々と合点がいく。
そのゴーレムはケパレー城攻略ではなく、古代竜捕獲の為のものだったという。
それはおそらく母竜、ホーフエーベネの墓所に封印されている闇竜を復活させるため。
「もし俺の推測が正しいなら闇の古代竜はまだ復活していないってことになるから、最悪の事態じゃないのかもしれませんね」
とターロは自分の話を締めくくった。
「そうか、ホーフエーべネ侵攻にはその様な理由があったのだな、、、」
オルトロスは腕組みをして考え込む。
「もしターロ様の推測通りなら、当面は、プロクスさんとドーラちゃんを奪われなければよい、ということになりましょうか?」
メタメレイアがターロに確認する。
「そうですね。しかし、他に古代竜級の竜がいないとも限らないし、、、」
と言ってプロクスを見ると、
「場所を特定できるわけではありませんが、いる、という事は感じます」
共感能力によって分かるらしい。
だよね、と頷いたターロは、
「他の方法を開発する可能性もあります。ドーラみたいに先祖返りさせる方法を考えるかもしれませんし、、、」
そう言って傍らを離れないドーラの頭に手をやる。
「それと、依代に出来る体が必ずしも古代竜である必要はないっすよね? 帝国には進んだゴーレムの技術があるようですし、、、」
「金属の古代竜、、、、」
メトドがターロの言わんとするところを想像して呟く。
「そうだね。古代竜のゴーレムなんて、ちょっと敵にしたくないね」
ターロがその呟きに応えた。
「ですから速やかに墓所を奪還して、闇の古代竜は完全に滅ぼしてしまわないと安心は出来ないでしょうね。それとも天使と交渉しますか? 母竜復活は諦めて、人族と仲良くしてくれないか、って」
オルトロスは馬鹿を言うな、という顔をして、
「無理だろう。そんな提案を聞くように思えるか?」
ターロも、勿論冗談ですよ、と薄く笑い、
「人族を下に見ています。まあ、聞き入れる事はないでしょうね」
と応えるので、
「そうなると、墓所を何とかするしかないということだな」
オルトロスはそう結論づけ、メタメレイアもそれに頷いた。