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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第六章 盟主国 ”ケパレー”
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6-8 奪い返す

「プロクス、あっちだ!」


目を開いたターロが城よりももっと左手側、城の北を指す。


『城ではなく、あちらですか?』


プロクスの問に、


「なんか嫌な予感があったからさ、念の為ドーラにマーキング(認識印設置)した鞄を持たしといたんだ」


「鞄に? あ! あの時の、、、」


アウロはターロの用意周到さに驚いた。


この人は普段好き勝手に行動しているように見えるが、何故かこういう要点はきっちりおさえている。


「結構な速さで真っ直ぐに移動しているぞ。これはドーラの動きじゃないな。飛んでいる者の動きだね。きっともうドーラは捕まっているよ。高度を上げよう。不意を突けば取り返せるかも知れない」


上昇して高度をとると、遠くの方にカルテリコスが見えてきた。


下に漂うおかしな正二十面体を追っている様だ。


「あれかな?」


目を凝らしてよく見るとその正二十面体は結界魔法陣のようで、更に内側に束縛魔法陣がある。


その中心に、


『いましたね』


ドーラだ。


追いついて後ろから回り込みカルテリコスたちの更に上に出たところで、


「プロクス。君が捕まっちゃいけないからこの高度で待機していて。アウロもここで待っているんだ、何人もでやると却って失敗するからさ。じゃあね」


ターロは飛び降りた。


(カルテリコスが、追うだけで攻撃をしていないって事は、あの正二十面体は結構な強度の防御魔法障壁なんだろうな)


ターロは落下しながら対象を観察する。


(って事はこのまま突っ込むと阻まれるわけだ、、、。でも、マーキングを探知出来たってことは魔力の全てが遮断されるわけではないよな、、、。 テレポートで入れるのか? この位置エネルギーを無駄にしちまうのは勿体無いけれど、、、)



テレポート(瞬間移動)



と唱えると、進行方向先頭、束縛魔法陣の六角形の頂点に位置する四枚羽の真ん前に出た。


「うっし! 入れた」


天使に驚愕する間も与える事なく、頭を右手で掴むと、


バフッ!!


不死鳥(フェニックス)の炎を発し、更に、



サプライ(酸素) オキシジン(供給)



と唱え、炎の温度を上げた。


ブフォワッ!!


吹き飛ぶように天使の頭は焼き尽くされる。


ターロが、そのままグイと下に押しのけると引火した羽や服を燃やしながら即死した天使は落下していった。


何が起きたのかさえ分からぬまま死んだだろう。


頂点が一つ失われたので、魔法陣は消滅。


拘束が解けて、ドーラが落ちる。


ターロはその落ちていくドーラを受け止めると、



テレポート(瞬間移動)



城の方からメトド達が追って来ているのが見えていたので、それに合流した。


「ターロ様!」


正二十面体の中で何か光ったかと思ったら、目の前に現れたターロに驚く一同。


「やあ、メトドさん。ありゃ、陛下まで、、、」


ターロはターロで、オルトロスまで出張っている事に驚く。


「あの男」


やっと天使たちがドーラを奪い返されたと理解してこちらを振り返った。


「む、、、またか、(ことごと)く我等の邪魔をする」


天使たちはこれ以上、魔法陣形をとっていても意味なしと散開した。


オルトロスは皆に、


「見ろ! 防御壁を解いたぞ」


と言いながら前に出た。


「陛下、いけません!」


メトドが止めると同時に、殿を務めていた天使がオルトロスに向かって光輪を放った。



ザッシュ!



オルトロスが今まで立っていた地面を光輪が抉る。


「!」


テレポート(瞬間移動)を使った訳でもないのにオルトロスは天使の真下にいた。


剛弓を引き絞っている。


それを天使に向かって放った。


ザフッ!


死角からの矢は天使の腿を貫く。


「ぬうぅっ!!」


射抜かれた天使は、痛みに耐えながら慌てて高度を上げ仲間の近くへと退避した。


「な、、、何が起きたんだべ?」


アプセウデースが目を剥いて驚いている。


「あれが陛下のお力、速度重視型肉体強化魔法です」


キュアーノが説明した。


さすがは実力主義のケパレーで王位を継ぐだけのことはある、先ほど止めたのは余計なことだった、と反省するメトド。


臨戦態勢になっているターロ達を見て、


「こうなってはあの地竜を奪うのは難しいな」


「砦を出たゴーレムも全滅したようだ」


「炎の竜捕獲も果たせず、あれだけの数がやられたか、、、」


「それもあの男だ。こうなっては炎の竜の捕獲も難しかろう。場所すら分からぬのだ」


まさかプロクスが頭上にいるとは思いもしない天使たちはそんな事を言いあって、


「仕方ない、次の機会を狙おう」


と、転移して消えた。


それを見たターロは軽く舌打ちをして、


「クソ天使共め、逃げやがったか」


吐き捨てるように言うのだった。

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