1-14 継承の儀3
(さて、どうしたもんか)
大田はゴーレムを観察した。
身長は二メートル程、鉛色で、よくゲームなんかで見る様なイメージ通りのゴーレム。
儀式というからには、絶対に倒せない相手、という訳はない筈だ。
どこかに弱点があるのだろう。
金属だけあって、重量はかなりありそうだ。
どのように動きを制御しているのだろう?
二足歩行って、難しいんだよな?
などと考える。
転倒防止の為だろうか、実際の人間より足が大きい。
その足の重量の所為か、動きは緩慢だ。
この動きが、嘘でないのなら、”蹴り”技等は使えないように思える。
試しに、左から回り込んで近づいてみる。
するとゴーレムは腰を落として、右手を大きく引いた。
(あ、これ、洒落にならないやつだ!)
そう感じた大田が咄嗟に後ろに飛び退退いた直後、今いた所にゴーレムの正拳が突き出された。
ぶぅおん!!
風圧が感じられる程の突。
中っていたら即死だっただろう。
(マジっすか! 殺しに来てますぞ!)
真面目にリタイアを考える大田。
急いで距離を取る。
が、ゴーレムは別段、距離を縮めようと走るなどする様子もない。
先ほど通り、じわじわ迫ってくる。
やはり安定性の関係で速くは動けない様だ。
(なら、、、)
と、大田は、また左のゴーレムの間合いに入り正拳突きを待つ。
案の定、同じ予備動作の後、ゴーレムは拳を繰り出した。
(一度見た動き!)
なので大田は、斜め右後ろに下がりぎりぎりの間合いで回避しつつゴーレムの突き出された右腕を掴んで思いっきり引き落とした。
ゴオオーンッ!
拳に体重を載せていたゴーレムは、あっさりと前に倒れる。
(やっぱりバランスが悪いな)
倒れたゴーレムを見ると首の後ろに小さな魔法陣が光っている。
(お、あれは!)
立ち上がろうと藻掻くゴーレムに、素早く近づき、魔力を込めた指先でその魔法陣に触れてみる。
バシュッ!!
機械がショートする様な音と同時に、魔法陣が消え、ゴーレムも動きを止めた。
「おおー! やりおった!!」
「素手でアイアンゴーレムを下すとは!」
相変わらず観客は楽しそうで何よりである。
『オミゴト!』
ゴーレムは消え、天の声が部屋に響き渡った。