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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第六章 盟主国 ”ケパレー”
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6-5 天使の狙い

「こんなところでしょうか」


胸壁の監視塔(バルティザン)でメトドと共に行っていた手配りを一段落させる事にしたメタメレイア。


城壁の外も中も見渡せるここを作戦本部としていた。


城下をいくつかの区画に分け、それぞれに治癒魔法の使い手とその助手を振り分ける。


それらを天使襲撃の被害者救済に走らせた。


中心の区画には指揮官を配置して、適宜、余裕のあるところから手の足りないところへ回せるようにする。


魔法学院の生徒や市民の中で攻撃魔法を使える者を編成して、周壁内の遊撃隊とし、転移で侵入してきた者に備える。


胸壁には弓兵や、投擲兵を配置。


軍属の魔法使いもそこに組み込む。


白兵戦、物理攻撃主体の兵はいつでも城外に打って出られるよう、城門の前に集めておいた。


ドーラとアプセウデース、そしてキュアーノ、クローロ、エリューの三人もここに配置。


その三人の代わりにリトスの護衛にはテュシアーが付いている。


キュアーノ達にひと目でシミターの腕を見抜かれたためである。


なぜ分かったのかとメトドが訊くと、足運びなどの動作で簡単に分かるという。


武術の才のないメトドには説明されても理解できなかったが、そう言うものかと納得した。


カルテリコスは、緊急の伝令と不測の相手に対する攻撃役として、バルティザンに詰めてもらう。


プテリュクスはすぐ外の胸壁上で待機している。


作業終了を告げたメタメレイアに、


「これ以上はターロ様の帰りを待ってですね」


と応えるメトド。


「そうですね。メトド殿のお陰で配置が短時間で完了しました」


メトドは、本で得た兵法の知識に加え魂力で人の才能を見抜くので、初対面の者も適材適所に振り分けられる。


樹海での狩りでも、大物を狙う際はメトドが指揮を執っていたので、実は命令を出すのには慣れていた。


メタメレイアは密かに、これは掘り出し物だ、この件の後もメトドをケパレーに留めるにはどうすればよいものか、と既に考えを廻らせ始めている。


「メタメレイア様、一つお伺いしますが、、、」


「何でしょう?」


「破られた結界のある場所は誰の管理地でしょうか」


「それは、、、メトド殿はその者が怪しいと?」


「内通者がいる可能性があるのなら、今回の防衛も見直す必要が出てきます」


ううむ、と唸って、メタメレイアが考え込む。


「、、、確か、あそこは、、、、」


話を聞いていたオルトロスが、


「ヴロミコスの管理地だな」


代わりに答えた。


「スケロスに付いてきたパヌルの父親です」


側に控えていたリトスがメトドに教える。


「あの男の、、、。 あれは!?」


話は城下上空に浮く魔法陣に中断された。


「来ましたね。砦からの侵攻より先にまた天使が来るとは、、、。 数は、、、」


みるみるうちに魔法陣の数が増え、順に転移して来る。


「展開してしまう前にできるだけ仕留めましょう。合図を」


メタメレイアが鼓兵に指示を出す。


メトドの提案によって、区画にそれぞれ数字を割り振り、行動にも数字を割り振った。


樹海での狩りで使う鼻笛でのやり取りの簡略版だ。


城下町上空;救護班、一般市民退避誘導・遊撃隊、対空攻撃。


これを太鼓の合図で知らせる。



早速城下のあちこちから攻撃魔法が放たれるが、天使に届かず霧散している。


最終的に四枚羽が六体、二枚羽は二十体ばかりになった。


「思ったより高度があるようですね。天使も先程の攻撃で我々の射程を見きったらしい。何か相談でもしているのでしょうか? 動きませんね」


顎をさすりながらメタメレイアが言う。


「カルテリコスなら攻撃が出来ますが、あれだけの数に一人で突っ込むと、逆に標的になってしまいます」


メトドはそう言うが、


「そんな事も言っていられない。私が中央突破して散らしてきましょう。地上に近づくものを皆で打ち取れば良い」


カルテリコスがバルティザンの扉を開け、プテリュクスに飛び乗った時、天使に動きがあった。



上空、天使たちの間ではこんなやり取りが行われていた。


転移してきたばかりの天使の一人が、


「おらんではないか?」


先刻の襲来に加わっていた四枚羽にそう尋ねる。


「先程はいたのだがな」


訊かれた四枚羽は、おかしいな、と腕を組む。


「あの男もいないようだ」


ターロのことらしい。


「無駄足だったな。戻るか?」


「あの男と炎の竜は砦を出た金属の偶人(メタルゴーレム)の方に向かったようだぞ」


ゴーレムからの情報がはいるようだ。


「なぜ?」


「大方、砦から軍隊が攻め込んだとでも思ったのではないか? 仕方ない、行って炎の竜を捕獲しよう」


「いや、待て。あそこを見ろ」


指を差した先にドーラがいた。


「あれは、、、人化した竜、という話だったな? 本当に翼がないではないか。地竜?」


「それが分からんのだ。だが、光輪を素手で捌く力。炎の竜ではなく、あれでもよいのではないのか?」


「しかし、属性が分からんでは、封印の魔法陣が描けぬぞ」


「とりあえず拘束してそのまま向こうに運んでもよい」


「うむ。あの男がここにおらぬのは好都合。そうしよう」


「そうだな。炎の竜捕獲となると、先ずあの男を排除せねばならん。そのほうが被害が多いだろう。ここであの地竜を捕まえてみよう」


そう四枚羽達は話をまとめ、


「周りの人族を遠ざけよ。我等が捕獲の結界魔法陣を張る場所を確保するのだ」


一体がそう指示を出すと、二枚羽達は城門前に待機した集団に向かって急降下を始めた。

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