表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第六章 盟主国 ”ケパレー”
146/678

6-4 違和感

「んん〜。何だろうな? 何か忘れている気がすんだよなぁ、、、」


プロクスの背でターロが腕組をしながら渋面をつくっていた。


そんなターロの珍しい様子をアウロが心配する。


「どうしたのですか?」


「んん〜。何だか分からない違和感っていうの?  、、、何か見落としている気がして気持ち悪くってさぁ〜。 何だろ?」


アウロも困り顔になる。


「僕に訊かれても、、、。 違和感ですか?」


「そう。違和感」


「いつから感じていたのですか?」


「んん〜、いつだろう? じわじわと強くなってきたっていうか、、、。 ()いて言うならプースに入る頃かな、、、?」


「プースに入る頃。 、、、それだけじゃ全然分かりませんよ」


「だよね〜。 違和感って言えば、何で俺達がケパレーに着く、丁度その時に攻めてきたんだろ? 偶然にしては出来すぎじゃね?」


「そうですね」


「、、、あッ! 魔法陣!」


急にターロが大きな声で言う。


「え?」


何のことだか分からずアウロが訊き返す。


「プロクスの魔法陣が解かれたからかも」


確かに魔法陣が解かれた時、設置者に知らせる仕組があってもおかしくはない。


「でも、それがどうして天使がケパレーを攻めてくる事になるんですか?」


「、、、だよね〜。あ、でも実際は攻め落とす気、無かったっぽいじゃん。他に目的があるのかな?」


「え? それは砦からの侵攻を止めさせない為じゃないんですか?」


「うん。それもあるんだろうけれどさ、、、」


やはり何かが引っかかっているターロは歯切れが悪い。


その時プロクスから声がかかった。


『なにか見えてきましたよ』


言われて前方に目をやると、何かが隊列を組んで向かってくる。


金属の偶人(メタルゴーレム)だ。


「うわ、スケロスの時のあれかぁ、、、。 厄介だな。魔法があんまり効かないからケパレーの魔法使いじゃ梃子摺(てこず)るぞ。 、、、けど、少ないな」


五十体ほどしかいない。


「本当に何なんだ? 他にもいるのかな? まあいいや、取り敢えずあいつ等を何とかしよう。 炎の竜の咆哮(ドラゴンブレス)も効かない?」


問われたプロクスが、


『どんな金属が使われているかにもよります。私の炎でも溶けない金属なら勿論駄目でしょうね。試してみましょう』


と応えて降下。


もうすぐで射程に入るという距離で、ゴーレム達がこちらに向き直り光り始めた。


「至急離脱だっ! プロクス、逃げろ!」


ターロの叫びに直ぐに反応したプロクスは引き上げて捻る。


「うわーっ」


アウロがニパスを抱えたままプロクスにしがみつき、それをターロが支える。


水平に戻ったときには、ゴーレム達は下に米粒のように小さく見えていた。


もうゴーレムは光っていない。


『急にどうしたのですか?』


プロクスが訊くと、


「いや、何か光ったでしょ? スケロスではちゃんと対峙しなかったから分からないけれど、光ったりはしてなかったと思うんだよ。何か嫌な感じがしたからさ」


『では、どうしますか?』


「そうだねさっきみたいに光る距離までは行かないように近づいてみて。アウロ。精霊に頼んで先頭の何列かでいいから足止めできる?」


「足止めですか? やってみます」


プロクスが再び降下したところで、アウロはまず水の精霊を召喚し、それを介して更に土の精霊も召喚。


それらに底なし沼を造るように頼むと、先頭の数列どころか全体を覆う範囲が泥濘(ぬかる)んで足をとられたゴーレム達は進行を止めた。


「おお〜ぅ、アウロ。魔力量上がったんじゃない? 全部止めちゃったじゃん。すげえな。こんなでっかい沼造るって、、、」


ターロが驚く。


「はい。張り切りすぎました、距離があるんで、ま、魔力が、、、ね、眠い、、、」


「おいおい、飛行中に寝るなよ!」


慌ててターロがアウロに魔力を流し込むと、


「あ、、、なんとか大丈夫です」


「勘弁してくれよ、、、。 まあいいや、ちょっと行って調べてくるから待ってて」


というと、ターロは唱える。



テレポート(瞬間移動)



「あ、先生!」


アウロが止める間もなく消えてしまった。


下を見ると、ひょこひょこゴーレムに近づいていくターロがいた。


「おおー。埋まってるねー」


ゴーレム達は底なし沼にはまって、なんとか抜け出そうと藻掻いている。


「藻掻くと余計沈むよ、って、理解する頭は無いか。 えぇ〜と、制御の魔法陣は確か左脇の下だったよな。これもそうか?」


試しに精霊樹の木刀を手近な一体の脇の下に差し入れて魔力を流す。


バッシュ!


短絡(ショート)したようだ。


動かなくなったのを引き上げる。


ただ引き上げると自分も沼に飲み込まれるので、



レビテーション(空中浮揚)



と唱えて腕を引っ張る。


「お、重いな、、、」


なんとかゴーレムの全身を泥から引き抜き、泥濘んでいないところまで引きずっていった。



【ウォッシング イン ウォ(水洗い)ーター】



先ずゴーレムの泥を落とす。


(魔法って、本当に便利だよな、、、)


改めてそんな事を思いながら泥をすべて洗い流し、ターロはゴーレムを調べ始めた。


制御の魔法陣以外にもう一つ魔法陣を発見する。


それは頭頂部にあった。


(洗わなくってもよかったじゃん、、、)


その魔法陣の解析を始める。


少ししてターロの顔が青褪めた。


「しまった! そういう事か!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ