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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第六章 盟主国 ”ケパレー”
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6-3 兄弟弟子

「お主がカルテリコスか。 アソーティタ殿の事は残念だった」


ペガサスの横に立つ青年へ、オルトロスが声をかける。


スケロスの乱に於いてアソーティタに止めを刺したのは他ならぬオルトロスであり、カルテリコスにとっては父の仇。


ではあるがもちろんカルテリコスが彼に恨みや敵意を抱いているような事はなく、寧ろスケロスが自力で立ち直るように、と計らってくれた事に感謝している。


それを表すかのように、


「いえ、もったいないお言葉」


(ひざまず)き頭を垂れてカルテリコスが応えた。


「跪かずとも良い。立つのだ。リトスから聞いている。これからは協力していこう」


オルトロスはカルテリコスの腕をとって立ち上がらせると、


「あ、ありがとうございます!」


顔を紅潮させて応えるカルテリコス。


「ははは、元気がいいな」


プテリュクスを軽く撫でながら、オルトロスは上機嫌に笑った。


メトドやその他の者もメタメレイア等と挨拶を交わし、情報交換をする。


「メトド殿。では布陣をどうするか相談しましょう」


メタメレイアがメトドに話を持ちかける。


「いえ。ターロ様はああ仰いましたが、私などに参謀は務まりません。どうか何なりとご命令ください」


「いやいや、ロエーから聞いていますよ。里に優秀な者がいて読書家で博識だと」


恐縮して畏まるメトド。


そして、絞り出すように言った。


「ターロ様は私を買ってくださいまして、、、事あるごとに自信を持て、と言ってくださいますが、私にご期待に応えられるような力は無いのです」


頭を下げたままそう言うメトドを、じっと見てメタメレイアが訊く。


「なにかあったのですか?」


少しの間をおいて、


吊下装飾具(ペンダント)が発動するような目にターロ様を合わせてしまったのは、私なのです。大賢者イッヒー様が嫌な感じがする、と触れずにいた魔法陣。何かあるはずなのだからもっと警戒するべきでした、、、」


プロクスの魔法陣解除の顛末を説明する。


「私は大賢者様に、幼い頃お救いいただきました。その時、仰っていたのです。私の看破系の魂力は大賢者様のものより強力だと」


メトドは杖を強く握りしめた。


「しかし、、、どんなに強力な魂力でも使い(こな)せなければ意味がありません。あの場で魔法陣の危険性に気付けるのは私だけでした。それなのに、、、。 メタメレイア様の魔道具がなければ、、、ターロ様という大人物、大賢者様の後継者を、、、私は、、、死なせてしまうところだったのです、、、」


メタメレイアは、頭を下げたまま小刻みに震えているメトドの肩に手を置いて言った。


「気に病む必要はありません。次、同じ状況になった時、同じように振る舞わなければ良いだけです」


「し、しかし!」


顔を上げたメトドの次の言葉を手で止め、


「いいですか。彼は生きている。 生きているのですよ。それが事実です。死んでしまったかも知れない(・・・・・・)、ということは、同じ過ちをおかさないのであれば、最早どうでも良いことなのですよ」


言われたことを消化しきれずに硬直しているメトド。


それを見てにっこり笑い、メタメレイアは続ける。


「私の人生は恥の多いものでした。いつかお聞かせしますよ。しかし大賢者イッヒー様はおっしゃいました。人の価値は過ちを犯す、犯さない、で決まるのではなく、過ちを犯した後、どう振る舞うのか、で決まる、と。私はこのお言葉で救われたのですよ」


ハッとなり、再び頭を下げるメトド。


「貴重なお話、ありがとうございます。危うく時を(いたずら)に過ごすところでした」


意が伝わり満足そうに頷いてメタメレイアは言った。


「お分かり頂けてなにより。おそらく年齢からすると、貴方は大賢者イッヒー最後の弟子、と言ってよいでしょう。と言う事は我々は兄弟弟子だ。これからは協力してやっていきましょう」


こうしてメトドの胸の(つか)えは取り除かれ、今度こそ城壁防衛の相談を始めるのだった。

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