表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第六章 盟主国 ”ケパレー”
144/678

6-2 ニパスも行く

「逃げていったな、、、そもそも、いくら天使でもあれだけの数で城攻めって、、、」


四枚羽が転移で消えもう他に残っていない事を確認。


消えたのはいいがやはり何をしたかったのかが分からないので、取り敢えずオルトロス達と合流する事にした。


城の中庭に降りるとすぐに城兵に囲まれるが、天使撃退を目撃しているので、武器を向けてきたりはしない。


ターロは手形を掲げて上官らしき兵に言った。


「陛下にお目通りを。ターロとその仲間が参りましたとお伝えください」


オルトロスが直接発行した手形だということを見て取った城兵はすぐに王宮のオルトロスへ連絡を入れる。


中へ通されるのかと思いきや、オルトロスが自ら中庭まで出てきた。


宮廷魔術師メタメレイア、リトスと彼女付の魔法剣士三人もいる。


皆の顔には焦りの色がある。


「おお、ライン、いやターロ。本当にいいところで来てくれた」


と言うオルトロスの横から、


「お兄様ぁ! ご無事で!」


と、突撃してくるが、ターロも慣れたもので、ちゃんと構えて衝撃に耐えた。


リトスは目に涙を溜めている。


「ど、どうしたの?」


スケロスで会ったばかりだ。


まさか再会が嬉しくて泣いているわけでもなかろう。


吊下装飾具(ペンダント)が砕けるような目にあっているなんて、心配で、、、」


「ああ、そう言うことか」


不思議な顔をしているメトド達にも分かるようにとターロが確認する。


「あの吊下装飾具(ペンダント)には破損をリトスに知らせるような仕掛けもあったんでしょ?」


「そ、そうなんです」


リトスがターロの胸にこすりつけていた顔をあげて応えた。


「やー、あれには本当に助かったよ。有難うね。あれがなきゃ死んでるところだった」


とターロがリトスを撫でると、


「ふえ〜〜、よかったですぅぅ〜」


リトスはまた顔を埋めて泣き出す。


「ライン王子、、、いや、ターロ様とお呼びするのでしたね、、、お久しぶり、それとも初めましてでしょうか?」


メタメレイアが困ったように話しかけてきた。


「メタメレイア先生。お久しぶりです。ライン王子の記憶はあるので、初めまして、ではありません」


メタメレイアはライン王子留学時の教師だった。


「そ、そうですか。 、、、本当に"異世界渡り"というものがあるのですね。 師匠に聞いて知ってはいましたが、、、。 いや、今はそんな話をしている場合ではなかった」


メタメレイアはオルトロスを見ると、続けろ、と頷く。


「実はお察しの通り、姫がターロ様にお渡しした吊下装飾具(ペンダント)は私の作った魔道具で、身代わりの機能とそれの発動時に、こちらに知らせる仕掛けが施してありました」


と言って、リトスの指環を指す。


その色が変わり、発動を知らせる仕組みだという。


「身代わりが発動するような事件に巻き込まれた事を知り、プース近くの転移陣を使って、すぐにお迎えに上がろうかと思ったのですが、その時、結界の異常を見つけまして、、、」


ケパレー国境には結界施設が要所要所に設けられており、そこに王家専用の転移陣も設置されている。


結界と転移陣は同じ場所で制御しているので、転移陣を使おうと思うと、結界の管理装置にも目が行くことになる。


「慌てて調べると、旧ホーフエーベネ近くの結界が無効になっていたのです」


それを有効に戻して非常線を張って警戒していたが、天使共はすでに侵入していたらしく、攻撃を仕掛けてきたという。


何体かは仕留めたが、こちらの損害も多く、一般市民にも被害が出ていた所にターロ達が来た、ということだ。


ターロが尋ねる。


「彼らは何のために侵入してきたのでしょう? 城を攻め落とそうとしているようにも見えなかった。一般市民にも無差別攻撃を加えていたようだし、、、」


それにはオルトロスが答える。


「そうなのだ。全く目的が分からない。強いて言うなら暴れる事そのものが目的のようだった」


「そうなんですね。 それと、結界が無効に、って、誰かが中からやった、って事ですよね?」


今度はメタメレイアが答えた。


「そうなりますね。内通者か潜入していた工作員の仕業でしょう」


その言葉をオルトロスが継ぐ。


「それを突き止める間もなく、補修した結界とほぼ同じ場所がが今朝は外から破られたのだ」


「外から?」


「そう。外からの侵入だから警報が鳴った。で、対処しようとした矢先に、天使が攻めてきたのだ」


応戦に手一杯で結界が誰に破られたのか調べる間がなかった。


ターロ達の侵入も同様に結界装置にかからなかったのではなく天使襲来の所為で対応する余裕がなかっただけらしい。


「もし結界を破った者がこちらへ向かっているならもう城のすぐそこまで迫っているはずです。それを調べさせるために、先程飛竜騎兵を飛ばしたのですが、撃ち落とされたり、負傷して帰ってきたりで、どうしようかと、、、、」


それで皆の顔に焦りがあったのだという。


「ああ、あの飛竜騎兵はその為だったのですね。そうか、、、じゃあ、天使たちの襲撃は、砦からの侵入を対処させないための陽動かな? だとすると軍隊での侵攻かも知れない。城壁でそれらを迎え撃つ手配をしておいてください。俺が飛竜騎兵の代わりに偵察してきます」


「大丈夫ですか? 私も行ったほうがよろしいのでは?」


と言うメトドに、ターロが応える。


「いや、メトドさんには未来視があるから残った方がいい。メタメレイア先生、彼を参謀として推挙します。皆も陛下とリトスをお守りして。俺は偵察しに行くだけだから大丈夫だよ。偵察は少人数のほうがいいからね。あ〜、でも精霊の力はあった方がいいからアウロには一緒に来てもらおうかな。ニパスも行く?」


『イク』


アウロに抱えられている仔犬の念話にオルトロス達は驚く。


「じゃあ、そういうことで。プロクス、頼めるでしょ?」


『もちろんよ』


ターロ達はプロクスに乗って飛び立っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ