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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第六章 盟主国 ”ケパレー”
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6-1 撃退戦

「カルテリコス! 前方、城の方で火の手が上がっているから、急ぐよ。後から来て!」


ターロは、横を飛ぶカルテリコスにそう言い残すと、


「プロクス、頼むよ!」


全速力で城へと急いだ。


「高度を上げよう。敵がいるなら向こうからの発見を遅らせられるかも知れない」


そうプロクスに言ってから、ターロはドーラに、


「ドーラ、これを持ってなよ」


と鞄を渡す。


前にクレーネーで縄を入れて持たせた物だ。


「着替えが入っているよ。人化を解いちゃったら必要でしょ? あ、竜になったらその鞄の紐も切れちゃうか。でも竜になった所に戻って人化すれば直ぐにその服を着られるでしょ?」


「ん」


鞄を受け取りしっかり斜め掛けにするドーラ。


「見えてきました」


メトドが下を覗き込みながら知らせる。


ターロも身を乗り出して、


「、、、天使じゃん。一、二、三、、、八体かな? 何やってるんだ?」


城や城下を無差別に攻撃している様に見える。


四枚羽根が一体に残りは皆二枚だ。


人族側も天使にやられっぱなしではなく、迎撃の魔法が見える。


魔法大国だけあって、魔道士貴族は有事に一部の例外を除いて戦闘に参加する義務がある。


領地を持つ有力な貴族はここにいないはずだが、その子弟は修行や就学の為ここ首都にいる事が多い。


その中の杖を授かった者にも参戦義務が課されている。


王宮の近衛兵も簡単な攻撃魔法なら使えるし、魔道具も支給されている。


他国に比べると攻撃魔法の使い手は桁違いに多い。


天使の攻撃は組織だったものではなく、何をしたいのかが分からない。


城から飛竜騎兵(ワイバーンライダー)が数騎飛び立った。


気づいた天使がすぐさま近寄り、羽を使った巧妙な動きで矢の攻撃を避けながら飛竜騎兵を撃ち落としていく。


「助けなきゃ!」


アウロが叫んだ。


「よし、急降下しながらの攻撃だ!」


ターロの掛け声に応じて、プロクスが急降下を始める。


飛竜騎兵を襲っている天使二体はまだ上から迫るターロたちに気が付いていない。


奇襲をかける形で天使の脳天をメトドの魔法、青いファイヤーダート(炎の投矢)が撃ち抜いた。


以前はターロもあれだけ手こずっていた天使を一撃で沈める。


炎の収束が極まって、遠くでも霧散することなく届くようになった成果だ。


「メトドさん、腕を上げたね」


ターロが感嘆の声をあげる。


もう一体の天使に向けてはプロクスが炎の咆哮(ドラゴンブレス)を浴びせ黒焦げにした。


下の方で逃げる一般人に衝撃波を乱射していた天使が頭上で仲間がやられていることに気付き顔をあげる。


が、そのとき既にテュシアーの放ったファイヤーボール(火炎玉)が眼前にあった。


避けられず直撃を受け炎に包まれる。


翼や服を燃やす炎に気を取られているところを、アプセウデースが魔力付与した手斧を投げつけ頭をかち割った。


「え、エグいな、、、」


脳漿をぶちまけながら落下していく天使を見てターロが思わずつぶやいた。


建物の屋根にぶつからないようプロクスが引き上げにかかる。


ターロたちに気付いた遠くの天使たちが一箇所に集まったところへ、


(我が名”アウロ”において、呼びかける、風の精霊、”・・・・・”よ、一緒に戦って!)


『やっと呼んでくれたわね!』


アウロが呼び出した風の精霊が突風をぶつけて飛行を乱していく。


アウロに抱えられているニパスも遠吠えをする。


「アオ〜〜〜ン!」


その咆哮は霰を含んだ旋風と成って天使達を襲った。


「先生! 僕らが足止めしてる間にバシッといっちゃってください!」


「アウロ君、、、俺は万能じゃぁないんだよ」


何の打ち合わせもなく無茶を言うアウロに困りながらも、ターロはイッヒーのライブラリ(温故知新)から広範囲攻撃魔法を探し出して詠唱した。



【ディセント(雷公) オブ ト(降臨)ール】



筋骨隆々な巨人の上半身が出現。


それを見て驚いたのか、城下から悲鳴が上がる。


巨人とターロは連動しているらしく、ターロが右手を突き出すと、巨人も鉄槌(ミョルニル)を持った右手を突き出し、そこから、


グオロロロロドゴーーーーン!!!


大気を引き裂く稲妻が(ほとばし)って、近くで風の精霊に動きを封じられている天使三体に落ちた。


ターロは、


「む、、、消費魔力量が、思ったより多いな、、、」


試してみたイッヒーの魔法が、思いの外効率が悪い事を訝しんでいるが、皆は唖然として言葉がない。


プロクスまで羽ばたくのを忘れていたくらいだ。


「な、、、な、な、何で無駄にあんなでっかいもん出してるんですかぁ! そりゃ沢山魔力使っちゃいますよ!」


アウロに叱られた。


「だ、だって、かっこいいじゃん!」


大人としてあるまじき言い訳をするターロ。


巨人は薄れて消えていった。


一般市民を無差別に攻撃していた天使をあっという間に消し炭に変えた大魔法に城下から歓声がおこる。


その歓声を聞いて、


「は〜。そうですよね、、、。先生ですもんね、、、」


アウロが何かを諦めた。


そんな中、一人冷静にメトドが、


「陛下達がいました。城の塔です」


と、知らせる。


勿論、向こうはこちらに気がついていた。


大きな動作で手を振っているのはリトスだろう。


城の方に気を取られているターロ達に、一人残っていた二枚羽根が死角であるプロクスの下、後方から迫ってきていた。


気配に気付いたターロが振り向くと同時に天使は浮上して光輪を放つ。


それをドーラが平手で潰した。


攻撃しようターロが身構えたその時、天使の顳顬(こめかみ)を矢が貫き、


バリバリッ!


電撃が走る。


天使は顔の穴という穴から血を吹き出して絶命し、落下していった。


カルテリコスが追いついたようだ。


一人残された四枚羽根はその様子を確認すると、転移魔法陣で逃げていった。

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