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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第六章 盟主国 ”ケパレー”
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6-0-1 スケロス平定 1

4-2で触れた、スケロス平定時のお話です。

「うわ〜、囲まれちゃたね〜。壮観だ」


「相変わらず暢気だな。師匠といると"深刻"と言う言葉がこの世にあるのか疑わしくなる」


「またまたー。ポロス君だって、このくらいなんとも思ってないでしょ?」


「師匠と一緒にしないでくれ。このデタラメ魔術師め」


大賢者イッヒーの話し相手はケパレー国王、ポロス。


豪腕のポロスとして、近隣に名を轟かせていた。


ケパレーは魔法大国。


魔法使いが国の中枢を担う。


高位の魔道士には貴族としての特権が与えられている。


世襲ではあるが、幼少から身内以外の魔術師に師事し成人までに杖を与えられなければ家を継げない、と言う実力主義でもある。


魔法の使えない魔法使いなど何の役にも立たないのだから当然といえば当然だ。


尤も、魔法の才能は遺伝しやすい。


魔道士である貴族どうしが婚姻を結ぶのだからその子もだいたい平均より大きめな魔嚢を持ち、杖を授かり損ねる、などという事は滅多にない。


本人の実力により親の地位を引き継ぐので、家名というものに重きは置かれておらず、この国の貴族は苗字を持たない。


ポロスは代々王家を継いでいる家系だ。


勿論ポロスに力がなくては王位は他者に渡っていただろうが、彼は王とするに足る、いや、足りて余るほどの才を見せた。


彼を鍛えたのは大賢者イッヒー。


イッヒーはある日この魔法大国にふらりとやって来て、国内の名だたる魔道士を一人残らず破ってみせた。


全て相手の得意分野で、だ。


因みにこの国に精霊魔法を使うものはいない。


諸国を流す吟遊詩人(バード)や、自然の奥深くで原始的な生活をしている者等が使う精霊魔法は、伝統ある魔法大国の貴族が使うものではない、というのが彼らの考えだ。


実力者を全て捻じ伏せたからには、この国を乗っ取り王位を望むのか、と、全ての者は思った。


それを望んでも誰も拒めぬ程の力を、イッヒーは示した。


しかし彼の望みは、


「そこの、王家の王子様を僕に育てさせてよ」


意外な申し出。


より優秀な魔術師に子を任せるのが親の努めである、と考えられていこの国では、この申し出は願ったり叶ったりだった。


そして、ポロスは歴代の王の中でも、特に秀でた力を身に付けた。


戦闘力の。


「いやあ〜、君を見たときから思ってたんだよね〜。ちゃんと導かないと不味いってさ」


とはイッヒーの言。


この島を回っているうちに暗躍する帝国天使に気付き、なんとか抵抗勢力を作ろうと考えていたときに、この国に辿り着いた。


魔術師が絶対的な力を持つ国家体制。


自分が支援して反帝国勢力とするのにうってつけだった。


そう思ってケパレーの中を見ると、次期国王候補がまだ幼い。


育ててみようと接触してみると、かなり尖った(ピーキー)な才能を秘めている。


話を聞くと、彼が、と言うより、彼の家系の肉体強化系魔法の能力が突出しているのだという。


いざという時には声に魔力が乗り、それが精神魔法のように人の心に強く影響する能力も遺伝するらしい。


ポロスは、"力"突出型だった。


魔法で底上げされたその拳の一突きは、誇張ではなく城壁すら崩す。


その彼は今、総精霊銀(ミスリル)造りの大盾一枚のみを手にスケロス軍に対峙していた。


手に持つ馬鹿みたいに重い盾を一振りすると、小さな旋風がおこって彼に向かって射られた矢が散ってしまう。


イッヒーのはイッヒーで、魔法の風を常に纏っているようで、どのような角度から射掛けても彼の五メートルほど手前で矢が地面へと落ちてしまう。


矢が通じないなら、と歩兵が密集陣での総懸を仕掛けるが、ポロス一人の盾攻撃(シールドバッシュ)に押し返されたり、イッヒーの土魔法に捉えられたりしてしまった。


スケロス軍は結局、遠巻きに矢を射掛けるしか出来ることがなく、誰も二人に近づけない。


そして今の状況だ。


二人は無人の草原を進むがごとく、スケロスの首都に向かってゆっくり歩を進めていた。


「デタラメは酷いよ、、、。君のその重い盾を団扇代わりにしている事の方がでたらめだと思うよ」


「ふん。その気になればこのくらいの人数、今すぐ皆殺しに出来るくせに何を言う。まあ、出来る力があってもしないから我が師として認めているのだがな」


「お〜。落としておいて上げるなんて、どこでそんな話術覚えたの?」


「ぬかせ」


ハハハ、


ふふふ、


雑談をし笑いながら進む二人。


大量の矢が射掛けられるが全て無駄になり、終に尽きた。


「あれ? もう終わりかな?」


イッヒーがそう言ったときに、彼らを遠巻きに取り囲む輪の一箇所が開き、そこから見るからに身分のある者たちが進みでてきた。


その中心にいたのは、ペガサスに乗った五人だった。

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