5-16 墓所の秘密
『親竜を葬った地を人族はホーフエーベネと呼んでいました』
「え! 、、、この体はその国の王子様の物なんですよ」
『まあ! 不思議な巡り合わせね。 、、、体? 、、、あら、あなたの魂、もともとその体のものじゃないようようですね?』
「そうなんです。見えるんですか?」
『見えませんよ。言われて、魔力を解析したから分かったのです』
「ああ。成る程」
やはりメトドのような魂力がないと真実を見抜けるわけではないようだ。
古代竜が語るには、
あの竜の契約精霊は、闇。
確かに私はあの竜を葬ったけれども、あの竜も死の間際に魔法を発動し自分を闇の底深くに隠蔽してしまった。
何時の日か子どもたちが自分を復活させてくれることを信じて。
『そこで私は共闘した人族の王にお願いしたのです。この地を封印して、闇の古代竜の復活を阻止するように、と』
「そうか、、、。それが墓所、だったんだ、、、」
『まだ、あなたは知らされていないのですか?』
「ええ、、、。 滅んだんですよ、その国」
『え! それは、、、』
ターロの故国が帝国に滅ぼされ、その帝国は天使の傀儡である事を話して聞かせた。
『、、、それは、、、いけませんね。 封印の地を取り戻して母竜を復活させる気なのでしょう。 それとも、もう、、、』
「侵略されてから二年以上経っています。あるいは復活してしまっているかもしれません、、、」
カルテリコスが、
「ということは、天使がまた増える、という事か?」
話に割って入ると、
『その可能性は大いにありえます』
と古代竜が応えた。
「こりゃ、一刻も早くケパレーに向かわなきゃならないな」
とんでもないことになった、とターロが珍しく深刻な顔をしている。
「アプセウデースは、集落に戻って皆にこの話をしてよ。で、今後の事を協議してほしいんだ」
ターロがそう言うと、彼は、
「ターロ様、これから首都に上がるだか? ならオラも連れて行ってくれねえべか?」
「ふえ?」
意外な申し出にターロはマヌケな声を出してしまった。
「オラ達は、ミスリルの加工技術に行き詰まって、、、。首都に行って偉い学者様の意見さ聞ければ、もっと色々出来るようになるんでねえかってずっと思ってただよ。おねげえだ。連れて行ってくだせえ。ターロ様もなんだか難しい話ししてて、頭良さそうだし、、、。戦になるならオラは役に立つぞ!」
「、、、確かに、役に立つでしょう。彼は古代竜の尾を受け止めていました」
メトドが援護する。
(ドワーフの味方をするエルフ、、、。違和感が半端ないなぁ、、、)
関係のないことを考えて戸惑うターロ。
『勿論、私もご一緒しますよ』
と古代竜。
『同道するのなら人化したほうがよいのかしら?』
という。
「え? ここで? 人化した後の服は?」
『服? ああ、人族にはそう言う面倒なことがあったわね』
この古代竜、少し抜けてるな、、、と、思うターロ。
「アプセウデース、一緒に行くにしても、誰かに知らせないと。竜のところへ向かって帰ってこなかったら皆心配するでしょ? それから、古代竜さん。人化するなら、服を手に入れてからにしないと。 、、、あと、名前ないんですか? 不便っすよ」
『私達は卵でこの地に残されました。私を呼ぶものもいなかったので名前はありません』
キラーンッ、とターロの目が輝く。
ニパスのときに仲間はずれにされた仇をここで取る気らしい。
それに対して皆は、やれやれ、という態度になる。
「な、何? みんな。そんな扱いはないんじゃない?!」
ターロの抗議に、
「ターロ様。いい加減気付いてください。人の才能には限界があるのです。私が武術に向いていないように、ターロ様には名付けの才がありません。ここは我々に任せてください」
「・・・・・」
メトドにはっきり言われて凍結。
固まったターロの太腿の辺りをドーラがペチペチと叩く。
反応がないので、拳で腹に一発。
「ぐふ」
蹲ったターロの目に目潰しを入れるドーラ。
際どいところで鼻の前に滑り込ませた手刀でドーラの目潰しを受け止め、事なきを得たターロ。
パーとグーとチョキ。
「、、、ドーラ。それは、じゃんけんではありません。ただの暴力です、、、。 二度と使わないように、、、」
どうやら前に教えたじゃんけんの使い方を勘違いしていたらしい。
ターロがドーラとそんな事をしている間に、皆はさっさと古代竜の名前を決めてしまった。
「"プロクス"はいかがでしょうか?」
代表してメトドが古代竜に問う。
『呼びやすくて良い名ですね。ありがとう。これからはそう呼んでください』
「では、プロクス様、服を手に入れてからまた戻ってきます」
『"様"は要らないわ。それから、そこの私の尾を受け止めた小さな豪力さんも集落に帰る必要がある様子。私の背に乗っていけば一瞬よ』
「え! いいの?」
ターロが復活した。
『ふふふ、勿論よ。ペガサスライダーさんは付いてこられますでしょ?』
「む、無論だ! なあ、プテリュクス!」
挑発された形となって受けて立つカルテリコスとプテリュクス。
『ではいきましょう。皆さん乗ってください』
そう言って古代竜"プロクス"は皆が乗りやすいように屈み、その大きな翼を広げるのだった。