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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第五章 山岳の国 ”プース”
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5-12 対 古代竜

「不味い! 一旦下がろう!」


カルテリコスがそう促すと、


「先生とドーラを連れて行かなきゃ!」


アウロが叫ぶが、


「駄目だ! 二人に触れば攻撃対象と認識される! とにかく下がるのだ!」


メトドが怒鳴った。


「でも!」


アウロが食い下がったとき、


グゴゴゴゴゴゴゴゴッ、、、、、!!!!!


ドーラが落ちた辺りの地面が削れるように陥没し、その中が光出したかと思うとそこに向かって大量の土が集まっていき、光もさらに大きくなって、、、



ギャオーアーオーーンッッ!!



咆哮(ほうこう)があがる。


光のおさまった後には、古代竜に優るとも劣らない体躯を持った、見たこともない竜がいた。


『まさか、、、ムシュフシュ、、、起源竜、、、?』


古代竜が呟く。


「あ、あれは、、、ドーラなのか!?」


カルテリコスが驚きの声をあげた。


「、、、恐らく、そうだ。人化を解いた真の姿。 ターロ様の魂力であのような進化を、、、」


此方も驚きで、呆然とするメトド。


しかし次の瞬間には我に返る。


ドーラが人化を解いた。


その姿は以前見た地竜とは違う。


かなり特殊な進化を遂げたようだ。


今のドーラと我々が協力すれば古代竜と渡り合えるかも知れない。


そう瞬時に気持ちを"撤退"から"解呪"に切り替えたメトドは、ドーラに叫ぶ。


「ドーラ! 聞こえているか! 古代竜を押さえつけるんだ! 殺してはターロ様の意志に反する! なんとしても呪いを解くぞ!!」


古代竜を睨むドーラが一瞬メトドたちをみて、頷いたように見えた。


「よし! カルテリコス。アウロとニパスを抱えて空からドーラの援護は出来るか?」


「ああ、こんな時だ、いいだろ? プテリュクス!」


普段は主人以外を背に乗せないペガサスだが、そこら辺の融通は利くらしい。


プテリュクスは、乗れ、とばかりに(いなな)いた。


「アプセウデース。私とテュシアーで、竜の胸の魔法陣を解呪する。援護を頼めるか?」


「もちろんだべ!」


アプセウデースは精霊銀(ミスリル)の兜の面頬(ヴァイザー)を下げ、矛槍(ハルバード)を構えた。


最後にメトドは、テュシアーへ、


「さあ、行こう」


と頷いて古代竜へと歩を進めた。


ドーラが飛びかかる。


四肢が長く胴体も細身だ。


以前の地竜とは全く違う、馬や豹に近い形態。


古代竜のブレスも、尾による薙ぎ払いも右へ左へ、難なく躱して懐へ入る。


そして、立ち上がっている古代竜へ尻を向けると、後ろ足でその腹を蹴り上げた。


ズウウウウ〜ンッ!!!


古代竜が地響きを立てて仰向けに倒れる。


ターロが見ていれば、怪獣大戦争だ! と興奮したことだろう。


しかしそのターロは、向こうで潰れたままになっている。


仰向けの古代竜へ、ニパスが吠えかかる。


「キャン、キャン」


そのたびに、拳大の雹が古代竜目掛けて飛んでいき、その表皮を氷漬けにしていく。


大した攻撃ではないように見えるが、目や鼻の穴に(あた)ると馬鹿には出来ない効果をもたらす。


古代竜の炎の力でも直ぐには溶けないという事は、見た目より魔力が収束しているようだ。


数発重ねて(あた)った氷で右目が塞がり死角ができた。


そこへアウロが水の精霊を召喚して詠唱魔法を底上げしてもらい放つ。



水球弾(ウォーターボール)



顔面に水球があたると、


フシュ〜〜ッ


すぐに蒸発するが、かなり古代竜の炎の力を削ぎ取っているのが分かる。


目に見えて動きが鈍くなってきた。


起き上がった古代竜の目に入ったのは近づいてくるメトド等三人の人族。


古代竜は近づくものを最優先で排除するように魔法陣に動かされているのだろう。


メトド達を止めようとブレスを放つが、空からの水球や雹に邪魔され頭がぶれて、上手く中らない。


ならば天馬を先に片付けようと飛ぼうとしても、その度にドーラの体当たりや蹴りで地面へ叩きつけられる。


そうこうしている間に三人にはだいぶ近づかれてしまった。


仕方無しに、今度はメトド達に尻尾による薙ぎ払いを繰り出すが、何とアプセウデースが地面に付き刺し固定したハルバードでその一撃を受けとめてみせた。


尾を受け止められ動きが止まった一瞬を捉えたカルテリコスの矢が、古代竜へと飛ぶ。


アウロによって水と風の魔法が付与(エンチャント)された矢だ。


右の首の付け根に中ると同時に大きく弾けた。


堪らず左に倒れる古代竜。


そこをドーラが逃さず、首筋を後ろから咥えこみ翼を右前足で地面に押さえつけ、尻尾の中ほどは右後足でしっかり掴んで動けなくした。


「今だ!」


メトドが、テュシアーの腰とアプセウデース脇の下に手を回し唱える。



ビッグリーピング(大跳躍)



「きゃッ」


「のわぁ」


抱えられた二人が驚いて小さく叫ぶ。


この魔法を最初見たときはふざけているのかと思った。


きっと楽しいからやっているのだろう、と。


しかし今なら分かる。


テレポート(瞬間移動)は視界が途切れて危険な上に、この魔法はテレポート(瞬間移動)より消費魔力が極端に少ない。


にもかかわらず結果は大して変わらないのだ。


変な行動にも必ず意味があった。


得難い師だった。


その人はもういない。


今、その事は、考えまい。


目の前の成すべき事に集中する。


テュシアーを魔法陣の前に立たせ、解呪を成功させる。


それだけだ。


メトドは短い跳躍の間、そんな事を考えていた。

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