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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第五章 山岳の国 ”プース”
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5-10 吾輩は氷狼である。名前はもうある。

「ああ〜、よく寝たぁ〜」


二日後、やっと目を覚ましたターロが大きく伸びをした。


起きた事に気付いたドーラが顔を覗き込んでいる。


彼女なりに心配していたのだろう。


ニパスも寝台の側に来てパタパタ尻尾を振っている。


「ターロ様、、、。大丈夫だと思ってはいましたが、丸一日起きていらっしゃらなかったので心配いたしました」


メトドが言う。


「ああ、ごめんごめん。この子がごっそり魔力持って行っちゃったもんでさ」


ニパスの頭を撫で、


「でも上手くいってよかったよ。じゃあ、名前を決めよう!」


元気にそう言うターロから、皆、目を逸らす。


「? どうしたの? え? 、、、まさか、、、」


「、、、済みません。ターロ様がずっと(・・・)寝てらしたので、皆で決めてしまいました」


本当は寝た直後に決めた、とは言えないメトド。


「ええ〜っ!! 何でよ〜! 楽しみにしてたのにぃ〜、、、」


がっくりしているターロ。


「、、、先生。 、、、名前、考えてあったの?」


アウロがちょっとだけ申し訳なさそうに訊くと、


「、、、勿論だよ」


考えてあったと言うので、同情半分、興味半分でテュシアーが、


「因みに、どんな名でしょう?」


と尋ねると、


「ふぇんたろう」


胸を張るターロの応えに、


「、、アウロ。先に考えてしまって正解だったな」


アウロの肩に手を置いて、カルテリコスがぼそっと言った。


ニパスも、困った顔をしている。


『、、、"ふぇんたろう"、ハ、、、ヤダ、、、』


「そ、そんな事で、念話を飛ばしてくるんじゃないっ!」


ターロはいじけて、ドーラを撫でた。


ターロが付けた名を嫌がらず受け入れてくれたドーラが女神に見える。


自分たちの判断は正しかった、と、皆はもうこの話を終わりにした。


「ターロ様。氷狼(フェンリル)とは何でしょう?」


まだいじけて、ドーラにじゃんけんを教える、という謎の行動をしているターロにメトドが尋ねた。


「ん? ああ、魂力で覗いて知ったのね。 俺の世界の想像上の生き物だよ。元が犬の頭だったし、風と氷の精霊の力があるから、ちょうどいいと思ってさ。かっこいいでしょ? まあ、まだ仔犬だから、かっこよさが微塵も伝わらないけれど、、、、」


「、、、ターロ様、、、あまり"とんでも生物"を思いつきで作られては、世界の均衡が、、、」


「え? 大丈夫だよ。そこまでじゃ、、、ないっしょ?」


最後は疑問形になってしまったターロ。


変な空気になってこの場はお開きとなった。


ターロは寝床から起きて水浴びをし、着替えてから食事を取って体力の回復を確認するため素振りをする。


体は大丈夫なのだが、魔嚢にはまだ魔力がほとんど溜まっていないので少しでも魔力を使うような動きをすると悪酔いしたようにくらくらしてしまう。


更に一日静養した翌朝、


「大丈夫そうだな。どうする? 古代竜。今から行っちゃう?」


復活したターロが皆に訊くと、


「ターロ様、行くならオラが案内するぞ」


様子を見に来ていたアプセウデースが応えた。


では、という事になり、武装を整えて出立する。


そこは集落からさほど遠くはなく、三時頃には辿り着いた。


見回しながらカルテリコスが、


「特に何か変わった感じはしないけれどな、、、」


そんな感想をもらすと、


「きっと、前のニパスみたいな監視役がいたから結界だとかは張らなかったんじゃない? そもそも人なんて山岳の民ぐらいしか来ないだろうし」


とターロ。


「うんだ。オラ達もこったら所にゃ、めったに来やしねえだよ。山羊に食わせる草も生えてねえしな。珍しい石さ、探しに来るくれえだ」


とアプセウデースがターロの推測を肯定した。


「でも、この奥にいる古代竜を誰とも会わせたくない理由が何かあって、天使は村で私達を襲撃してきたのですよね?」


と、テュシアーが尋ねると、


「そうだね。それが何なのかは直接聞いてみよう」


ターロが顎をしゃくったその先には、大きな大きな紅蓮の竜が寝ていた。

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