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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第五章 山岳の国 ”プース”
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5-3 再び呼ばれて、、、

「ぬししゃま〜」


天使の襲撃以来、ドーラの甘え方が酷い。


天使たちに連れて行く、と言われた事への不安なのか、自分のためにあんなに怒ってくれたターロが嬉しかったのか、それとも其の両方か。


ともかく、今まで以上に甘えてくる。


ターロも、一時的なものだろう、と好きにさせていた。


(目の前で感情的になっちゃったのは不味かったかな、、、)


ちょっと反省するターロ。


しかし、抑えられなかったものは仕方がない。


(俺もまだまだ精神修養が足りん、な)


自分の未熟を反省してみる。


夜更けまで続いた宴会の翌日は、昼まで寝てみんなでダラダラした。


午後は村の人々に薬草について教えたり、それらを使った肉の匂いを消す料理法を一緒に考えたりして過ごす。


そのときに調理したもので夜はまた宴会。


そして翌朝、村人達に別れを告げ出立した。


「さって、プースに入るまで後四日くらいなんでしょ? もうアイツ等、来なきゃいいね」


天使の襲来がない事を願うターロ。


「来たとしてもまた返り討ちにしてやろう」


とカルテリコス。


皆、その言葉に頷く。


前回の戦闘で自信を得たらしい。


「いやいや、あいつら皆、名無しだったんだよ。もっと強いのがいるんだから油断しちゃ駄目だよ」


珍しくターロが皆を戒めるという構図になっている。


陽が南中してからもまだ歩き続け、二時頃、草原には珍しい大樹を見つけた。


その木陰で遅い昼飯をとる事にする。


調理時間が短くても出汁がよく出るようにと細かく刻んだ干し肉と香草(ハーブ)(スープ)を作った。


焼き締めて日持ちするようにしてある薄い麦餅(パン)も炙り直す。


そのパンに燻塩漬肉(ベーコン)を薄切りにし、焚き火でよく炙った物を挟んでそのまま齧り付いたり、スープに浸したりして食べる。


簡単なものだが、草原でのこういった料理は、美味い。


アウロとドーラはおかわりのベーコンとパンが焼き上がるのを、涎をすすりながら待っている。


いつもは二人だが、涎を垂らしておかわりを待つのにカルテリコスも加わった。


(食料、足りるかな?)


これからの旅路が不安になるターロ。


食後はいつもどおり、成長期の二人とターロはお昼寝だ。


アウロとターロは並んで木陰で涼しい微風に吹かれ、もう寝息を立てている。


ドーラの定位置はターロの腹の上になってしまったようだ。


その間、メトドは本を読もうと取り出すが、テュシアーとカルテリコスが魔法を習いたい、というので三人で魔法の特訓が始まった。


少しして、アウロの様子がおかしい事にメトドが気づいた。


(うな)されている、というわけでもなく、何だかモゴモゴしている。


「なにか美味しいものを食べている夢でも見ているのでは?」


カルテリコスのそんな推測に、そうかも知れない、と様子を見ることにした。


いつもどおり、十五分くらいでターロがおきる。


「ターロ様」


メトドは、まだおかしな様子のアウロの事をターロに告げた。


腹の上で熟睡中のドーラをどかしてアウロの様子を()るターロ。


「んん〜。危険な感じはしないけどな〜。こういうのは起こさないほうがいいって聞いた事あるんだけれど、本当かな? なんかさぁ、精霊界へ行っていた時に似てる?」


一度大樹の葉が散るほどの突風が吹いたが、それ以外は特に何もおきない。


魔法でスキャン(精細探査)してみたりするが、悪い所もない。


そうこうしているうちに、アウロが目を覚ました。


「アウロ! 大丈夫?」


「え? ああ、大丈夫です。 、、、精霊に呼ばれていました」


寝起きでぼーっとしているが、大丈夫そうだ。


「精霊に呼ばれていたの?」


「はい」


アウロは精霊界でのことを皆に話しはじめた。




『アウロ』


(あれ? 夢? 、、、違うな、、、)


眠りに入ってから、夢を見ているような、そうではないような感覚になる。


どこかで経験したことがある感覚。


(ああ、精霊界か)


『そうよ、アウロ。また来てもらったの』


「この前は守ってくれてありがとう。助かったよ。お礼がいいたかったんだ」


『いいのよ。契約したんだし、あれくらいなら何時でもやるから、呼んでね』


「うん。で、、、どうして僕が呼ばれたの?」


『そうそう。あのね、、、』


水の精霊が説明しようとする横から、


『アウロ〜! なんで、あたしとは契約してくれないの! いっくら待ってても来ないなんて酷いじゃない!! 小さな子とばっかり接触して!』


急に現れた別の精霊。


水の精霊と同じく透き通っていて美しいが、人族で言うと十代後半のような外見であるところが水の精霊とは違う。


「あ、、、風の精霊、、、」


小さな子、というのは、この前の戦いで助けてもらった風の精霊の事を言っているようだ。


彼らを小さな子、と呼ぶのだからこの精霊は外見上の印象に反して上位の精霊なのだろう。


『そうよ! なんで私達の世界には来てくれないの!』


「え? 、、、どうやって?」


その剣幕にアウロは困惑するばかりだった。

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