4-20 チョップ
「ごめん! 気付かなかった! これは負担が大きすぎるから使うのはやめよう」
転移してきたターロは直ぐにそう言ってメトドの杖を取り上げテュシアーに渡し、彼の首元を持ってヒールをかけながら横に寝かせた。
未来視は身体、特に脳に負荷がかかるようでメトドの顔は青褪め鼻血もでていて目の充血が酷い。
しかし、横にされる事に逆らう力はないながらも、
「ターロ様、 何故、追撃しないのですか!」
メトドが珍しく小さな声ではあるが語気鋭くターロに抗議した。
「いいから。魔法を解除して。緊張を解くんだ」
ターロはメトドが起き上がらないように制し、
「メトドさん、聞いて。メトドさんが死んじまったら、何の意味もない。無理をするのは止めてくれ。俺を友と思うなら、約束してくれ」
ターロもまた珍しく、静かではあるが有無を言わさぬ口調でメトドに言った。
「、、、す、済みませんでした。私が浅はかでした」
友、と言われハッとなり、自分の非に気付くメトド。
いつものメトドに戻ったのを確認したターロもいつものターロに戻り、
「そうだよ。テュシアー、メトドさんに手刀してやれ。私を残して死のうなんて三百年早いわよ、って」
そう戯けて、メトドの脳天に軽くチョップする。
「え?! メトドさんとテュシアーさんってそういう仲なんですか!?」
リトスが耳ざとく反応した。
テュシアーは顔を赤くして無言で俯いている。
無言であることが肯定であると受け取ったのだろう。
女性陣が姦しい。
しかしメトドは、
「、、、タ、ターロ様、、、できれば頭は、、、」
「ああ、ごめん!」
脳の過重使用で激しく頭が傷むメトドには軽いチョップでもきつかった。
ターロは慌ててヒールをかけ直す。
天使はやはり転移して逃げていった。
ペガサスライダー達が降りてくる。
「追い払えましたな」
と近づいてきたオケイオン達はまだテレパシーの効力があったので一部始終を聞いていて、
「メトド殿、大丈夫ですか?」
安否を確認すると、ターロのヒールが間に合い大事には至らなかったと知って安堵した。
「あなたのお陰で、誰も死ななかった。あの天使を相手にです。感謝する」
他のペガサスライダーも頷く。
皆、大した事のない怪我で済んでいた。
「いやー、確かに未来視がある戦闘はやりやすいねー。狡してるみたいだよね。って言うか完全に狡だよね」
「狡って、、、」
ターロの言い草に皆、失笑する。
「まあ、使うたびにこんなんなっちゃうんじゃ駄目だけれどさ。ちょっと考えて実用できるようにしてみようよ」
とターロがメトドに笑いかけると、
「、、、はい」
メトドも微笑み返し、ここで気を失った。