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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第四章 草原の国 ”スケロス”
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4-19 天使 対 ペガサスライダー×ターロ×メトド

「なんと、、、制御陣の場所が知れたとはいえ、こうも早く偶人を停めたか、、、むっ、拘束の魔法陣を、、、どのように抜け出た?」


自分が溺れていた間に何が起きたのかを俯瞰(ふかん)して確認した天使。


天幕は殆ど破れ落ちてしまったので、平原の民も下から上空の天使を確認出来た。


空ならば自分達も戦える、とペガサスライダー達はパオを出て愛馬へと駆ける。


「カルテリコス、あれは?」


「プテリュクスが来たら使う!」


「そうしてくれ」


ターロとカルテリコスは何かを短く確認しあい、カルテリコスは外へ走った。


「お主らは危険すぎる。この場で消えてもらおう」


天使がそう言い、光輪をターロに向け放つ。


ターロは障壁を張ろうとするが、その前にドーラが跳んだ。


「!」


皆が瞠目する。


ドーラは光輪を素手で掴んで引き千切ったのだ。


「娘、、、人族ではないな? 人化した竜なのか?」


天使の問にドーラが竜である事を知らない者は、何を言っているんだ、という顔になるが、次のターロの言葉に驚くことになる。


「なんで人化した竜だって、すぐ分かったんだ?」


「え? ドーラちゃん、竜なの?」


驚くリトスだが、キュアーノは、


「確かにそうであれば先程の打撃の説明が付きます」


いつも通り冷静だ。


ターロの質問返しに、


「、、、喋りすぎたか」


天使が、おしゃべりは終わりだ、とばかりに(まと)っている魔力を高め始めた。


本気の戦闘態勢に入ったのは一目瞭然。


見上げるターロ達も身構えたところで、


「ターロ様、試したいことがあります」


寄って来たメトドが言った。


「何?」


「皆と私をテレパシー(遠隔精神反応)で繋いでください。私の魂力を魔法で底上げして、未来視で見える光景を皆に送ってみます」


「え? 何それ、凄いじゃん! そんな事できるの?」


「ずっと魔力量不足で使えなかった魔法です。上手くいくかはやってみなければ何とも、、、」


「よし、やってみよう!」


視界の隅でペガサスライダーが飛び立つ。


空で戦える彼らとの魔法場を構築すべく唱える。



テレパシー(遠隔精神反応)



《オステオンさん、皆さん。ターロです。聞こえますか?》


「タ、、、ターロ殿? なぜ声が聞こえる?」


急に頭の中で響く地上にいるはずのターロの声に戸惑うペガサスライダーの面々。


《魔法で考えが伝わるようになっています。声に出さずとも聞こえます》


《こうか、、、?》


流石はペガサスに選ばれた戦士、順応が早い。


《今からメトドさんが未来視の像を皆さんに伝えるのでそれをもとに上手く立ち回ってください》


《そんなことが出来るのか? それはありがたい!》


ペガサスライダー達は天使を狩る配置に就く。


メトドは魂力を底上げして、普段出来ない未来視を可能にすべく唱えた。



【オムニポーテント(全能の目) アイズ】



ターロは皆に、


「リトス、アウロが魔力切れで寝ちゃってるから安全な場所へお願い! メトドさんがペガサスライダー達に未来視の像を送るのに集中しているから、ドーラ達は彼を守って」


と指示を出し、自分は、



ブースト(噴射)



と唱え、足裏でおこした強烈な圧縮空気の爆発にのって空へと跳び上がる。


この魔法はイッヒー大賢者の独自魔法(オリジナル)だったが、彼は使いこなせず封印した。


それもその筈。


姿勢を保つにはかなりの体幹と運動神経が必要で、それなしに発動するとただ爆風に吹き飛ばされるのと変わらない。


ずっと魔力で飛行するよりこの方が消費魔力が少ないという判断で使ってみたが、幸いターロには使いこなせそうだった。


強烈な加速に耐えながら、天使とその周りを観察。


天使より少し上の高さまで浮き上がると地面と水平になり、精霊樹の木(”地獄丸”)刀を天使に向け銃剣道の基本構えのようにして、再び、



ブースト(噴射)



天使へ一直線に突っ込んでいく。


かなりの速度ではあるが、派手な音を伴ってもいるし簡単に避けられてしまう様に見えた、が、



テレポート(瞬間移動)



天使が横に避けようと動き出した刹那、その動き出した背中へ移動したターロは、死角から天使へと精霊樹の木(”地獄丸”)刀を振り下ろす。


「む!」


翼を無理に動かし辛うじて避けた天使。


霊樹の木(”地獄丸”)刀は虚しく空を切り、ターロはそのまま落下していくが、これで彼の役目は果たせていた。


ターロの攻撃で天使が大きく体勢を崩す事がメトドから送られてくる未来視の像により見えていたペガサスライダー達。


彼等の矢が容赦なく天使を襲う。


天使は、前方から飛んできた一本は硬化させた手で弾き、もう一本は辛うじて躰を捻って躱したが、横と後方からのものは避けきれなかった。


「ぐうっ」


左脇腹と右肩後ろに深々と矢が突き刺さる。


「おのれ!」


天使が光輪をペガサスライダー達へ向け、四枚同時に放つが、射出された瞬間に回避行動が取られていた。


《この頭に流れてくる情報は便利なんてもんじゃない!》


オステオンが上機嫌だ。


「つけあがるな!」


天使が激昂した。


「《不味い!撤退、撤退!》」


ターロがテレパシーだけではなく大声も出す。


天使が両手に魔力を込め始めた。


以前、海の国の天使が商館裏でやった小さい衝撃波の連発を、この天使もやるとメトドの未来視から伝わってくる。


しかし、来ると分かっていても避けられないものもある。


四人のペガサスライダーとターロは慌てて一番被害の少なそうなところへ回避。


ズバババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババッ!!!


何百という魔力衝撃波が全方向に放たれた。


「うわっ、確かに前のやつとは格が違う」


離れて、更に障壁を展開し事なきを得たターロが思わずもらした。


ペガサスライダー達は、致命傷こそ避けたものの、戦闘継続は難しそうだ。


その時、何かが真上から猛烈な速さで天使を急襲した。


カルテリコスだ。


愛馬プテリュクスが到着し、攻撃の機会を上空から狙っていたらしい。


急降下の勢いが乗った矢は、大量の衝撃波を放った直後の天使の隙きをついて右肩と首の付け根の間に四(つか)ほど深々と突き刺さった。


肺まで達したのだろう。


天使は血を吹いている。


「上手いぞ! カルテリコス!」


ターロは喝采を送り、自分も未来視を受信して駄目押しの攻撃を加えようとすると、


《、、バッズッ、、、、》


なにか雑音(ノイズ)のようなものを感じた。


地上を見ると、メトドは片膝を付いて今にも倒れそうにしている。


その横でテュシアーらが狼狽しながら、ターロの方をに何か合図を送っている。


天使が魔法陣を出した。


恐らく深手を追ったので、逃げるのだろう。


今、瞬間移動で追撃すれば討取れるかも知れないが、ターロは全く逡巡することなくメトドの方への転移を選んだ。


「メトドさん!」

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