4-17 天使 対 アウロ×水の精霊
『で、どうすればいい?アウロ』
時間は少し遡りターロがメトドを拘束する輪の解析を始めた時。
顕現した水の精霊が、そうアウロに尋ねると、
「あいつ、上から見下ろして偉そうだから、こうしちゃおうよ!」
『アハッ! いいわね!』
像を共有している二人はこれから天使に起こる事を想像して笑い合う。
水の精霊は大きな水玉になり、天使の足に取り付いた。
「む?」
鬱陶しげに払おうとする天使だが、相手は水。
手応えはなく、引き裂かれようと何されようとまたくっついて、水はどんどん上に上がってくる。
ここで水の精霊が何をしようとしているのか理解した天使に焦りの色が見え始めた。
ついに水の玉は頭部に辿り着き、すっぽりと天使の肩より上を覆う。
「ごぼごぼぼおおぉぉ。。。」
天使とて生き物、無呼吸で長くは保たない。
顔の周りの水を払いのけようと藻掻くが一瞬散っても、直ぐ元に戻ってしまう。
そこへターロが戻ってきた。
「アウロ! なんだか凄いことになってるね」
「はい! 空中でだって溺れることもあるんです!」
と無邪気に言うが、
(これは結構、悪辣な攻撃だぞ、、、)
とターロはちょっと引く。
「先生。メトド様は?」
「ん? ああ。テュシアーが愛の力で何とかした」
「え? なんですかそれ?」
「俺にも分からん」
空中で溺れるという奇妙なめにあわされている天使を見ながら二人がちょっと気を抜いていると、
「む!」
天使の頭上に光輪が現れたので警戒するが、攻撃ではなく、転移だった。
水の玉を残して消える天使。
「あ〜、逃げちゃった!」
アウロが残念がるが、
「違う! この天幕の真上にいる! すぐに障壁を張るんだ!」
ターロがアウロに叫んだ。
それを聞いてアウロは精霊に障壁の像を送りつつ頼む。
「守って!」
天幕の内側に沿って水が広がって行くのを見たターロは、更にその下に円錐状の魔法障壁を張る。
壁が展開し終わると同時に天幕が裂け、衝撃波が落ちてきた。
水の膜は破れ、ここでアウロから得た魔力を使い果たした精霊は自分の世界に還っていく。
ターロの張った障壁も貫かれるが、落ちてきた衝撃波はかなり弱くなっていて重力が増したくらいの感じで済んだ。
尤もそんな軽い衝撃でもパヌルを気絶させるには十分だったようで、失禁した股を広げ口からは泡を吐いて伸びている。
(汚ったねえな、燃やしちまいたいな)
パヌルを見ないようにして、ターロは上を見上げる。
上空では翼を広げた天使が厳しい顔でこちらを見下ろしていた。
「ありゃ、アウロ君。大分怒らせちゃったみたいよ」
「そんな〜。でも、もう限界です、先生、、後は、、、お願いしま、、、」
魔力切れを起こしたらしい。
その場にへたりこんでグーグー寝始めた。
「ええ〜っ、ここで寝るか?」
アウロの大物ぶりに困惑するターロの横に、
「ぬししゃま!」
ドーラが来た。
見ると四体もいたメタルゴーレムは全て停止している。
中には拉げたり、腕が切り落とされたりした物もあった。
(何をどうすればああなるんだ、、、?)