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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第四章 草原の国 ”スケロス”
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4-8 ポーロス

「一刻も早くポーロスに(のぼ)ってレマルギアを討つ!」


ぐいっと涙を拭うやカルテリコスは息巻いて天馬に跨がり飛び立とうとする。


「ちょちょちょちょ、待って待って。気が短い」


慌ててターロが止めた。


「今一人で乗り込んでも反逆者の息子だの何だのって、いくらでも理由を付けて処分されちゃいますよ。こっちには証拠もあるんだし一緒に行きましょう」


と何とか説得して同行する事となった。


ただ、ペガサスは流石に目立つ。


どうしようか、とターロたちが困っていると、


「大丈夫です。プテリュクスを呼ぶ方法はあります」


とカルテリコスが自慢げに言う。


ペガサスはその(たてがみ)を主人に燃やされると、どこにいてもその場所が分かるらしい。


「ほぉ〜、そんな能力が、、、」


興味深そうに聞くメトド。


(メトドさんは学者向きだな)


その様子を見てターロは王都に着いたらメトドに研究職につくよう勧めてみようかと考えた。


ペガサスの件は解決したので、一緒に歩いてポーロスへ向かう。


途中、念の為村に寄り天馬と(はか)と小屋の事とを頼み、変装用に麻の裾長衣(ローブ)を貰う。


「ついに、ついにお立ちになられますか、カルテリコス様!」


最初はターロ達に見つかってしまったのか、と焦っていたが、首都に上ってレマルギアを討つ、と聞くや、我々もお供します、と武器になりそうな農作業道具等を手に手に集まり始める村人たち。


「だめです、ダメ、駄目! これじゃ、一揆になっちゃうでしょ! 何のためにカルテリコスさんが変装すると思っているのですか!」


ターロに止められ何とかその場はおさまった。


「済まぬ、ターロ殿、、、」


カルテリコスは詫びるが、


「いや、皆に慕われているのですね」


とターロは笑って返した。


一行は徒歩でポーロスを目指す。


川沿いなので、水には困らない。


「首都で頼れる人は?」


道すがら、今後の話をする。


「そうですね、、、。父の従弟で、オケイオン。ペガサスライダーの一人です。他のペガサスライダーも頼れます。要はレマルギアの血族とそれらに取り入る商人だけを警戒すればよいかと」


「じゃあ、その従叔父さんに頼んでレマルギアを衆人環視のもと、断罪出来るような場を設けてもらいましょう」


ということになった。


日が落ちてから野宿。


夕食にターロはオステオンで仕入れて隠し持っていた香辛料を使った肉料理を振る舞い、カルテリコスを驚かせる。


(うん。カルテリコスは将来この国のお偉いさんだ。この味を覚えさせておけば、香辛料を輸入するようになるだろう。そして此方からは肉や野菜を輸出する。連邦内の食文化は豊かになるぞ)


ターロの中の、”どこへ行っても美味しいものが食べられるぞ計画”は着々と進んでいた。


次の日も朝から歩く。


笛を吹くと今度は川の精霊が顕現する。


水面を魚に乗って飛び跳ねる精霊の姿はカルテリコスを大いに驚かせた。


そうやってお茶をしたり魔法の話をしたりしながら楽しく歩いて、カルテリコスとは大分打ち解けた。


そして野宿。


翌朝は夜明け前に出立して、昼過ぎまで歩いくと、ポーロスに着いた。


何故か検問所が物々しい。


確かな身元を証す物がないと通れないという。


まだカルテリコスの身分を明かす訳にもいかないので 、王家発行の手形を出すと現場は騒然となった。


「どうしたのですか?」


ターロが尋ねるも衛兵は、ともかくお待ちください、というばかりで何も教えてくれない。


カルテリコスの事がバレたのか? とも一瞬思ったが、バレるなら村人からで彼らにはそんなことをする理由もない。


万が一村の裏切り者が小金欲しさに密告するにしても、ターロたちより早く首都に入る方法は川舟しかないが、村の舟は共用、それを勝手に使って密告ともなれば村にはいられなくなるのでそんな事をする者もいないだろう。


そもそも王家発行の手形を見て態度が変わったのだからカルテリコスの事は関係ないと思っていいだろう。


そうなると思い当たる事がない。


しかし、どうしたものかと考える隙もなく詰め所の奥の、上官室の様なちょっといい作りの部屋へ通される。


「お願いします、あなた方に逃げ、、、いえ、どこかに行かれてしまうと、我々の首が飛ぶのです。お願いですからここにいてください」


と、衛兵達がが懇願してきた。


(今、逃げられたら、って言いかけたよね?)

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