1-9 初めての授業(集団)
「よし、みんなもおいで!」
大田は、遠巻きに見ていた子どもたちに声をかけた。
「みんな、今の聞いてた?」
うなずく子どもたち。
「みんながこれからどんな道に進もうと、簡単な計算はできた方がいい」
皆の目を見ながら大田は言う。
「それも速く正確に」
子供達がふむふむと頷く。
「でも自分で問題を、作ったり答え合わせをしたりするのは大変だ」
大田は、なんだか通販番組みたいだなと思いながらも、
「そこでみんなに便利な練習法を伝授しよう! 名付けて、”加法16段”! はい拍手〜!」
わ〜!! パチパチパチパチ!!
皆、なんだか分からないが、乗せられて楽しくなっている。
「はい、先ず16段横線を引きます」
と言って枝で地面に線を引いてく。
何が始まるんだ? と興味津々の子供達。
「じゃあ誰か好きな数字を一つ言って」
と、子供の顔を見回す。
「3!」
誰かが答える。
「はいよ」
と大田は、引いた線の一番上の段に3を書き込んで、
「じゃあもう一つ誰かお願い」
直ぐに、
「5!」
という声が上がる。
「はいアリガト」
二段目に5を書き込む。
「じゃあ、これからやり方の説明するから、よ〜く聞いててよ」
みんなが大田の立てた指に注目している。
「先ず、今みたいに好きな数字を2つ決めて、1段目と2段目に書き込みます。 で、その数字を足しまーす。はい、じゃあ3足す5は?」
「「「 8〜! 」」」
「せいかーい。それを3段目に書き込みまーす」
「で、3段目に書いた数と、一つ上の数を足しまーす、だからこの場合は何足す何?」
「「「 5足す8〜! 」」」
「そうね、じゃあ答えは?」
「「「 13〜! 」」」
「はい、せいかーい! でね、ここで気をつけて欲しいんだけれどね、次の段には、答えの”1の位”だけを書き込みますよー。 今の答えは13だったから、3だけを次の段に書き込みまーす」
と、4段目に3を記入。
「じゃあ、次の足し算は何足す何?」
という質問に、
「8足す3?」
という声。
「おー、そうだ。じゃあその答えは?」
「「「 11〜! 」」」
「だから書き込むのは?」
「「「 1〜! 」」」
「そうだね、次は?」
「「「 3たす1で4! 」」」
「そう! その調子!」
と、どんどん続けてくと、以下の様に16段目がまで埋まった。
3
5
8
3
1
4
5
9
4
3
7
0
7
7
4
1
「おし、16段目まで埋まったね。じゃあね1段目の数字、3に7を掛けてみて。何になる?」
「「「 21〜! 」」」
「そうだね、それでは皆さん、ごちゅーもーく! なんと不思議な事に、1段目の数かける7、の答えの”1の位”と、16段目が同じ数字になりまーす!」
「「「 おお〜ほんとだ〜!! 」」」
「計算が合っていれば必ずそうなるからね」
「なんでそうなるんですか?」
という質問が挙がる。
「それは自分で考えてごらん。割と簡単に証明できるからさ。あと最初の2つの数字はね、0・0とか、5・5とかは駄目よ」
「なんで〜?」
「やってごらん」
「あーナルホド」
試してみて皆、納得する。
「はーい、みんなこれを特訓してねー。誰がこの里で一番早く正確に埋められるかな〜?」
大田が煽ると子供達は少し顔を見合わせた後、口々に何か叫びながら散っていった。
思い思いの場所で練習するのだろう。
「あの、僕も、、、」
一人残ったアウロは、そわそわとしている。
「おう、アウロも好きなところへ行って特訓しな」
「はい!!」
元気な返事を残して走り去っていくアウロだった。
加法16段の証明は、ご要望があれば掲載します。
感想欄等からリクエストしてください。