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「悲劇の幕開け」
――コライユ暦803年2月。
白雪の舞い降るある晩、サンクテュエールの搭中に元気な産声が響き渡る。泣き声は二つ、双子であった。
長時間にも及ぶ難産の末に母体は息絶え、その場に居合わせた産婆や聖職者は49代目であるディユの死に涙する。
女児をリュンヌ、男児をソレイユと名付けた。
双子の誕生に誰もが眉を顰め忌んだ。特に元老院はこの双子の誕生を不吉とし、片方の処分を強く主張する。
ディユの継承、女子のみ。
次代である新たなディユは苦渋の決断を余儀なくされた。
女児、生まれながらにディユの継承権を授かり。
男児、一生の幽閉を言い渡される。
生まれながらにして相容れぬ存在になってしまった双子。
――すべての悲劇は、この双子によって始まった。