#1 第四世界・第一世界線
レン=カシワギくんの幼少期になります。
──神童
そう言って、周囲の者達は褒めそやす。
自身が如何に矮小であるか、そして、僕がどれほどの存在であるかを、なぜか皆が皆喜々として語る。
外の世界から来た大人達が、僕を持ち上げるのはまだ理解できます。
あの人達は、自身や己の家族を守るため僕──の背後にいる御祖父様──に媚を売るのだと。
しかし、同じ栢樹一門である彼等彼女等。
家格の低い者は、下の者として上の者を立てて、その指示に従う……それは自然で当然のこと。けれども、同格──僕以外の、柏樹家の次期当主候補……即ち、栢樹の次期宗主と目される者達──でさえ、素直に傅き一歩引いた態度で接してくる。
血の繋がった家族──分家・柏木家の人間──はそこまでではない。が、妹は幼いなりに、周りの大人を見て、同じく僕を信仰するかのようになっている。血の繋がった可愛い妹ではあっても、この子も候補者の一人。……一族の人間らしく、素質も実力も、充分に持っているのに。
自身が特別な立場にいることは……まあ、自覚しています。
旧家、名家。そう言われる家の分家に生まれ、仕来たりから候補者の一人に挙げられました。
『栢樹』に生まれたと言うだけで、これ。
他者が羨むほどの、恵まれた環境でしょう。
これだけで済んでいれば、まだ数いる候補の内の一人として埋もれていたはず。
しかし、そうはならなかった。
身に秘める霊力は膨大。
魔術に対し深く理解があり。
魔術を扱う才も飛び抜けていて。
多くの精霊に愛され。
──代々伝わる霊刀を継ぐことになった。
候補筆頭、最有力とされるのに、充分……いや、充分に過ぎた。
この状況が続いたら。
何事もなく、
なにも変わらないまま、
僕は、『栢樹』を継ぐことになるだろう。