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10-8 お尋ね者と追撃者 - 敵軍転嫁 -

「えっと、何がどういうことですか?」

「おめぇ、なにしたべよ……? 人間なのにエレクトラムと一緒にいるとか、よく考えたらやたら怪しいべよ」


 質問にバーニィがへらへらと半笑いを浮かべる。こんな状況になったら笑うしかないと。

 それから難しい顔をして、また笑いました。


「金盗んだんだよ」

「盗んだって、いくら盗んだんだべ?」


「それが、2000万……」

「はぁー? 寝言は寝て言うべ。マジで2000万盗んだんなら、絶対逃がしちゃくれねぇべよ、顔見た途端即全力で捕獲だべ」


 うっすらとまたバーニィが青ざめました。

 繰り返しますが自業自得です。あの最低の王子様を見た以上、少し動機に感情移入してしまいますがね。


「そういうことです。バーニィ、シスター・クークルスと子供たち、もちろんリセリも連れて、正面のヤドリギウーズの群れを強硬突破して下さい。あなたを含めて、見られるとまずいものが我々には多すぎます」

「違いねぇ……。悪いが、そうさせてもらうわ……」


 バーニィがナイトソードを腰に戻してわたしの後ろに下がりました。

 いいから迷ってないでさっさと行って下さい。


「あなたが正直者で助かりました。では作戦の続きです。つまり、残りのヤドリギウーズを我々の盾にします。突破に成功したらリックをこちらに回して下さい。キシキシさんにはわたしたちが魔軍の討伐部隊だと言ってありますので」


 見られたらまずい物を先行させ、あのお人好しの軍勢に敵をなすり付けます。

 逆手に取れば悪くない流れになります。こうなったらやるしかありません。騙して逃げましょう。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



「なんか憑かれてるんべかなぁ、おいらたち……」

「まあ不幸が重なり過ぎていますね。人生そういうこともままあります」


 強行突破作戦はすぐに実行されました。


「エレクトラムさんは落ち着きすぎだべ……」

「ええ、こういうの慣れておりますので」


「よくわかんねぇけどおいらぁ、それ慣れちゃいけねぇことだと思うべよ」


 結果だけ申しましょう。子供たちを護衛しながらの強行突破は成功したようです。

 後には孤立したわたしとジョグだけが残されました。


 じきにパティアら子供たちへの追撃を諦め、残りのヤドリギウーズの軍勢がわたしとジョグを挟み撃ちにするでしょう。


「リックが迎えに来る頃には、あちらは安全な距離を稼いでいるはずです。もう少しだけがんばりましょう、あなたのリセリのために」

「ぶひぃっ?! え、エレクトラムさっ、ふ、不意打ちはよくねぇべよぉっ!?」


 しばらくすると流れに変化が起きました。

 予想通り追撃を諦めた操り人形どもが、わたしたちの背中を突こうとしたのです。

 ですが問題ありません、その前にこちらもキシキシら人間の討伐隊と合流してやりました。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



「君たちでこれだけの数を倒したのか?!」

「いえもう一騎います、飛び切りに猛々しい方です」

「確かに、ありゃ敵にはしたくねぇべ……噂はやっぱ、ホントだったべよぉ……」


 彼らと共闘してヤドリギウーズを討伐していきました。まあ制限時間付きのポーズというやつです。

 やがてリックがわたしたちの元にやってくると、晴れて敵前逃亡の準備が整いました。


「ま、まさかっ、その一騎って、死神ホーリックスゥッ?!」

「ギャァァァーッ、こ、殺されるぅぅーっ!!」

「ああ、そう呼ぶ者を何百人も貫き殺した悪鬼、それがオレだ……」


 それはもうリックに驚いていました。

 どうやら彼女が追放されたという話は、パナギウムには届いていないらしい。

 人間からすれば魔軍のゴタゴタなど人ごとですからね。


「ではすみませんが、わたしたちは急ぎの別任務がありますので、遊撃しつつここを離脱します。残りの後始末をよろしくお願いいたします」

「えっ……な、なんだとっ?!」

「すまんが理解してくれ、理解できないというなら武をもって話し合おう。まとめてかかってきていい……」


 そうそうそれでいいのです。有無を言わせぬ態度で逃げましょう。

 わたしたちは十分に貢献しました。


「た、隊長っ、死神に勝てるわけがないですよっ!!」

「手伝わないとは言っていません、ではそういうことで」

「あ、あとよろしくお願いするべよ! おいらぁもう、戦い疲れて無理だべー……」


 わたしたちは強硬突破していった仲間を追って、ヤドリギウーズの前衛左翼だけ蹴散らし、その場を一気に離脱しました。

 思い付きでしたが、あっさりと上手くいったものです。


「しかし隊長、なんかあいつら怪しくないです……?」

「それ俺も思いました。魔軍がなんで、こんなギガスライン側に近いところまで入り込んでるんですかね?」

「それはそうだが……だが敵の大群に蹴散らしてくれた事実は変わらない。俺たちは俺たちに与えられた任務を片付けよう。ネコヒトの中にも、ああいう達人がいるものなのだな……」


 ネコヒトの耳に遠い言葉たちが届き、やがてそれも聞こえなくなりました。


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