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10-5 ネバーランドの守護者たち - 返討 -

「バーニィ、あなたは広場に残って子供らの護衛を。おや、ジョグも起きてきましたね、ちょうどいい、彼との連携をお願いします」

「へへへ、俺ぁお尋ね者だ、悪ぃがその配置は大歓迎だな」


「任せましたよ。では行きましょうリック、あなたの成長をわたしに見せて下さい」

「ああ、もちろんだ。槍を持っているやつがいるといいな……」


 リックと共に敵の気配のある東門に向かう。

 他の方角には展開していない。包囲は必要ないと相手は考えているようです。


「冒険者どもはあまり長い武器を好みませんで、それはどうでしょうね。さすがにパナギウムの正規軍を使って虐殺するはずがありませんしね」

「残念だ。だがあの冒険者(クズ)どもが相手だというなら、なおさら生かしてやる理由は無くなった」


「では、門の防衛はお任せしますよ」

「聞くまでもないが一応聞く。教官は?」


 東門の向こう側に松明の炎が見える。

 リックは学生の頃から防戦が得意です。正確には単騎で道を阻む壁となり、敵を寄せ付けない戦い方に長じておりました。


「後ろを突きます」

「……フ、今の教官だけは敵に回したくないよ」


 東北の木壁を飛び越えて、ネコヒトの身軽さを使いただちに敵の後ろに回り込みました。

 すぐに門をぶち破る破壊音が響き、リックと襲撃者の激闘が始まったらしい。

 わたしも始めましょう。幸い敵に見つかることなく後ろに回り込めました。


「ぇ……な、カハ……ッ」


 あとは卑怯と言われようとも、闇夜と共に殺戮者の背中をレイピアで突いては屠り、姿を消してやりました。


「おっおいどうしたっ、げっ死んでっ――ゲハッ?!」

「て、敵だ、後ろに敵がいるぞー!」

「な、なんだこいつっ、報告にない魔族が、ァッ……?!」


 ネコヒトはよく弱いと言われます。しかしその瞳は闇夜に真価を発揮する。

 汚い戦い方で結構、わたしはわたしの武器を使っているだけです。


「話が違うぞ! ワイルドオークが1体だけのボロい仕事じゃなかったのかよぉっ!?」

「わめいてないで戦えっ、おいっ、里に突っ込ませた連中を呼び戻せ!」


 リーダー格とおぼしき一団を見つけた。

 数は親玉含めて11名、ナコトの書が手元にない以上、狙えば集団戦は避けられない。

 しかし長引けばパティアを戦わせることになる。覚悟の上でそれに襲いかかった。


「で、出たぁぁっっ?!!」


 敵はこの前の襲撃を悪い方向に反省していた。

 リーダーの護衛だけでも10名いるということは、全体の兵数が100近くあるかもしれない。

 奇襲というイニシアチブを使って、10名の護衛のうち3名を片付けた。


「ネコヒトがなんでこんな場所に……卑怯なっ、早く殺せっ!」

「フフ、卑怯なのはそちらでしょう」


 また懲りもせず冒険者を雇ったようです。

 しかし今回は聖職者が同伴していませんでした。

 先遣の返り討ちという不都合な事実を隠して、この冒険者どもを騙したのでしょうか。


「囲め囲め、しょせんはネコヒトごときだ! おい、てめぇ俺らが、傭兵冒険者シリウスだと知って喧嘩ふっかけてるのかよぉー!?」

「存じ上げませんね。それよりすみませんが、最近昔の調子が戻っているようで」


 敵が動いた。わたしは冒険者(ゴロツキ)の刃を回避しては、最低限の動作で急所を突く。

 彼らは迷宮を下る性質から軽装を好みまして、それもあってレイピアのカモでした。

 一斉にかかれば倒せると勘違いしたらしく、そのせいで決着が早まることになりました。


「ご大層な名前ですが、もう後がないようですよ。こんな実力で傭兵だなんて、よく名乗れたものですね」

「う、嘘だろ……なんだよテメェッ、ネコヒトごときがなんで……」


 リーダーの男を残して1体1体確実に貫いていった結果、後にはレイピアを突きつけられた彼だけが残った。

 時間が惜しい、首を取ってただちに潰走させたい感情を堪える。


「依頼主の名前を教えて下さったら生かしてあげましょう。すぐに答えねば殺します、他の連中に子供らを殺させるわけにはいきませんから。では3秒――」

「宰相だ! パナギウム王の宰相が依頼人だ! 仲介人を何重にも介してたから確実じゃねぇけど、間違いない……! さあ答えたぞ命だけは許せッ、ヒッ、ギャァッ?!」


 両足と利き腕を刃で貫いてわたしは里の方角に走り出しました。

 殺してはいません、生きてギガスラインにたどり着けるとは思いませんがね。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



 自慢の身軽さを使って木柵を飛び越えると、リックの目前に死体の山が築かれておりました。

 奪い取ったロングソードを物足りなそうに軽々と二刀流にして、残る敵を討ち取っている。


「お見事ですリック。すみませんが追撃に付き合って下さい、生かして返したくありません」

「承知した。どうせ生きて戻ってもこの手合いはろくなことをしない」


 里の安全を確認しに来ましたが、わざわざ戻ってくる必要などなかったようです。

 既に決着はつき、バーニィとジョグが不測の事態を警戒して、周囲をうかがっている。


「ふぁぁ……むにゅぅ、さわがしいなー……、ねれないぞねこたん……。あぇ? リセリー、なんでひっぱるー? め、かくさなくてもー、パティア、ちゃんと、ねれるぞー……」


 いい仕事してますねリセリ。では守りをバーニィとジョグに任せて追撃といたしましょう。

 仮に少数を撃ち漏らしたところで、その少数で魔界からギガスライン要塞に帰還するのは困難です。

 こういった悪党は絶対に生かして帰してやりません。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



「みずくさい! おもらししたあさより、みずくさーい! みずくさいぞねこたんっ、パティアは、ねこたんみそこなったぞー!」

「へっへっへっ、そう怒るなってパティ公。それだけネコヒトに愛されてるってこった」


 こうしてパティアはこの襲撃騒動を明日になってから知り、プリプリと蚊帳の外にしたことを怒る程度で事件が片付きました。

 残念ですが宰相さん、蒼化病患者はわたしたちが根こそぎいただいていきますよ。

 これから成長してゆく大地の傷痕の村人として。


いつも励ましの感想、誤字報告ありがとうございます。

この章は分割の都合上、1話1話の厚みが他より少な目になっております。どうかご容赦下さい。


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