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8-9 まちのおんながきた……

 盲目の娘と、のんきなシスターを守りながらのゆっくりとした真夜中の旅です。

 大地の傷痕への帰還は空気の冷え込んだ夜明け頃になりました。


「ぁ……この先に、何かあります。ここがエレクトラムさんの……」

「あら不思議、長年神に仕えてきましたけど、こんなの初めて見ます。神秘的で、綺麗ですね……」


 チカチカと光る白黒の世界にクークルスが驚いていました。

 盲目ゆえにリセリの方は落ち着いていました。それでもこの向こう側に何かがあることがわかるらしい。


「さあどうぞ中へ」


 2人の手を引き、結界の内部へと客人を導いた。

 するとモノクロだった世界が色づく。それにまたクークルスが驚いて、リセリもまた不思議そうに見えない目で周囲を確認していました。


「不思議です、こんな感覚初めて……それになんだか、安心するような、気持ちいいところに感じます」

「うふふ……ミステリアスなネコさんだと思っておりましたが、まさかここまでとは思いませんでした、素晴らしいです」


 さあ帰りましょう、この2人を早く紹介したい。

 どちらもやさしくて、人の心のわかる模範的な女性なのでパティアの情操教育にもぴったりです。


「この先に古城と、湖があります。そこがわたしたちの住処です、お城のおかげでモンスターも怖くありません。あの結界がある限り、外部から悪いやつが入ってくることもないのです、ほら理想の移民先でしょう?」


 ここなら聖堂の過激派もやってこれない。後ろを振り返るとリセリの顔に希望が見えました。

 けれどクークルスの手前、あの殺戮者たちについては口にするのをひかえているようにもうかがえました。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



「ねこたんっねこたんっねこたんっ、ねこたーんっ、おかえりぃぃーっっ!! パティア、いいこでまってたぞーっ、ねこたんの、さいあいの、むすめがーっ、まってたんだぞー!!」


 城門前広場あらため畑に戻ってくると、わたしはようやく娘と再会できた。

 鋭いタックルに体重の軽いわたしはしがみつき、寂しがりのパティアのシルクのような髪を撫でてあげます。


「ええ、ただいま戻りました。毎度毎度こう大歓迎して下さると、あなたの反抗期が恐ろしくなりますよ」

「その子がエレクトラムさんの娘……? 何だか、人間みたいな匂い……」


 やり取りにパティアが顔を上げて、声のする方角を不思議そうに見つめました。

 すると見つけてしまったようです、わたしたちがずっと待っていた人を。


「ほぇ……? パティアは、にんげん――あああああーっっ、びょうきのひとだぁー! あおいびょうきのひと、きたよねこたんっ、やっときた!! ん……? クンクン……ん、んんー??」


「は、初めまして……、リセリって言います。肌、蒼いけど、別にうつらないから、いじめないでね……」


 ところがリセリの不安げな言葉がこれに届いている感じがしない。

 わたしの匂いばかりを、人前だというのに娘は嗅ぎまくっておられました。


「どうしましたパティア?」

「この、におい……クンクン……おぼえてる……。まさか、このにおいはー……っ!」


 ブロンドの少女が匂いをたどり、わたしの毛皮を離れていきました。

 それがどこに向かうかといえば、クークルスの胸にたどり着いていたようで顔を埋めておられました。


「あ、初めましてパティアさん、私は元シスターの……」

「おまえ、まちのおんなかー!! ねこたんは、ぜったい、わたさないぞー!! またねこたんにぃーっ、ねこたんに、いいにおいつけてーっ、ねこたんはー、パティアのパパなんだからなー!! これちゃんと、だいじだから、おぼえといて!!」


 何をやってるんでしょうかこの子は……。

 娘はローブとウェディングドレス姿の女性に、強烈な対抗心をぶつけていました。


「でも、そーかびょうのおねえちゃん、いらっしゃい! パティアねー、りょうりとかー、たたかいの、べんきょうして、みんなまってたぞー! ほかのこも、はやくつれてくるといい! えんりょするな? まってるからなー!」

「フフ……だそうですよ、リセリさん」


 子供の歪みなき気まぐれに過ぎません。

 それでもパティアの言葉は、今日まで迫害され続けてきたリセリを救っていた。

 怖がられる、気持ち悪がられると思っていたのに、不意打ちにも無垢な歓迎を受けていたのだから。


「ぁ、ぁぁ……私、嬉しい……」

「え、えええっ、な、なんでなくー!? うれしいのにー、なくなー!? おねえちゃんなのにー、ないちゃだめだぞー!?」


 パティアは不思議な子です。この子がいれば、蒼化病の子供たちはこちらに来ても無事にやっていけるでしょう。


「あの、ネコさん……私、パティアちゃんに何かしましたでしょうか……」

「いえ照れ隠しでしょう。うちの娘に限って、年上の女性に嫉妬するなんてありえません」

「こらーっ、ネコたんと、なかよくするのは、きんしだぞー!! パティアのねこたんなのー!」


 まあこっちもそのうち打ち解けるでしょう。

 困ったことに眠気のかけらもないので、わたしはリックとバーニィを起こしてくると言い訳してその場から避難したのでした。


定時より少し遅れてしまい申し訳ありません。

誤字報告、感想ありがとうございます。近日中にお返しいたします。

感想もっともっと欲しいです、一言でもいいので下さい下さい。

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